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Set you Free

『Set you Free』

電気グルーヴ

[label: macht/2020]

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前途を照らす、はじまりの歌

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text by 河村祐介 (OTOTOY)

まさに「待望」の新曲「Set you Free」。ある種の企画盤的な部分も多かった『30』をはさんで純然な新曲のシングルとしては、2018年の『MAN HUMAN』から2年半。2年半という年月、実は『J-POP』での復活以降、その緩急ある活動を考えると決して長いわけではないが、ここまでの状況を考えるとやはり「待望」と言わざるを得ないことは明白だ。一連の騒動、さらには華々しい復活劇が予定されていたフジロックのコロナ禍での延期と、実はある意味で彼らの音楽とは関係ないところで起きたさまざまな状況に対して、当たり前のように彼らはその音楽でケリをつけてくれたとも言えるだろう。

 

これまでほとんどタイトルや歌詞に、そうした自身たちの状況を当てはめてこなかった彼らだが、今回は珍しく、楽曲の後半でリフレインする「ラプソティー(狂想曲)」という言葉やそのタイトルが象徴的だが、そこになにかしらの意味合いを感じてしまうのは自分だけではあるまい(もちろん、そうした深読みを無視することもできる)。とにかく、そうした状況をひとつ度外視しても、彼らのディスコグラフィーのなかでもまた、新たな大きな節目になるにふさわしい名曲になったことはたしかだ。

 

サウンド的には前述の「MAN HUMAN」や、『TROPICAL LOVE』において実質シングル的な扱いだった「人間大統領」といったゴリっとエネルギッシュなエレクトロ・ディスコ・タイプの楽曲ではなく、おおまかにいえば、「TROPICAL LOVE」(単曲)に近い。ソフトなトランシーさを帯同したバレアリックな空気感のハウス~テクノ・トラックと言えるだろう。トラックはイントロから、強力なサブ・ベースを含んだベースラインが引っ張っていく。キックレスのまま、ヴォーカルやシンセ・サウンド、パーカッションなどが徐々に加わって高揚していく、しかし焦らすようにキックは、その楽曲の半ばを過ぎないと出てこない。焦らし、焦らし、からの楽曲後半でキックが入る、その展開はライヴでの爆発が容易に目に浮かぶようだ。高揚感と開放感に包まれた楽曲は歌詞の変化とともに壮大なクライマックスに突入、吉田サトシのギターもトランシーに鳴り響く。ここでもベースラインがダイナミックな展開に、コントラストを付けて演出していく。というか本作で耳がいくのは、そのサブ・ベースも含めたベースラインの効能、焦らす展開、そこから生み出される後半の高揚感だ。もちろん、それは当たり前だが彼らの立脚点たるダンス・ミュージックのそれである。

 

すでに『30』のリリース時にはほぼニュー・アルバムを完成させていたという話もある。が、ともかく、ここまでの楽曲を生み出す彼らの新たな作品に出会える日はそう遠くないのではないか、というかその日が待ち遠しくなるそんな楽曲だ。

 

 

 

▶︎OTOTYでの試聴・ダウンロードはこちらから
・ハイレゾ版    https://ototoy.jp/_/default/p/594763
・ロスレス(CDと同等音質)版     https://ototoy.jp/_/default/p/594769

 

 

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