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RHYE

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ミロシュのその振る舞いと発声はすこぶる軽やかで肌触りがよい。

2015年3月30日、ENOの『Dicreet music』が流れるLIQUIDROOMは温まっていた。
初体験したRHYEのLIVEは、彼らの静謐な印象とは裏腹で、みんなのエモーションが「へええ、そうなんだ !?」という感じでうれしい誤算。ステージにいる6人はいたって静かに、ときにオーディエンスの熱に呼応しながら丁寧な音を紡いだ。ドラムス、ベース、キーボードの男性陣、バイオリン、チェロとトロンボーン二刀流の2人の女性。そしてフロントにミロシュ。暗いステージ、細身の彼がマイクスタンドの前に立つ。「VERSE」の第一声を発したとき、僕の隣にいたカップルの女の子がビクッとして彼の腕を掴んだ。「ミロシュって男だったの !?」彼は「フフフフフ」とご満悦の様子。こんな素敵なやりとりに居合わせるなんて「甘酸っぱい ! 」と内心思いつつ、ミロシュの声に魅了され続ける僕たち。RHYEの現時点で唯一のアルバム『WOMAN』はジャケ買いだった。首の長い女を描いてきた自分が見過ごせないカオをしていた。自分で発見したという、いい出会い方。その音は非常に好みで、自分の音楽遍歴からすると既視感をムンムンに感じながらも新しい。という魅力があった。その新しさの一端を担っていたミステリアスさは何だ? その要因にはまだ気づいていなかった。ほどなくボーカリストが男性だと知ったとき、ソコか!? と合点がいった。直感がその心地よい違和感に惹かれたのでしょう。RHYE の音楽を説明する際に、初期のシャーデーの名が挙がる。シャーデーほどジャズ成分はないが、ミニマルで洗練されたスタイルには、たぐいまれなボーカルを引き立てる、音数少ない間の美意識という共通点がある。更に思い起こしてみると、同時代に聴いていたBASIA、MATHILDA SANTING、JULIA FORDHAMとか。90年代に入ってからだとSTINA NORDENSTAMとか。お気づきだろうが全て女性シンガーなんだけど。喋り方、立ち姿はいたって普通の美形のアンちゃんだが、歌い始めると場の空気を塗り替えてしまう。中性的な歌声ではヨンシー、アントニーらが浮かぶが、ミロシュのその振る舞いと発声は軽やかで肌触りがすこぶるよい。JAMES BLAKEも好きな歌い手だが、ミロシュの軽やかさは、聴くのに気合いを入れなくてよいという点で図抜けている。それは彼のソロアルバム『Jet Lag』にも貫かれている。あの夜の『FALL』軽やかだった。みんな雲の上をフワフワ飛んでいるような気持ちで聴いてたんじゃないかな。FALL、だけど。僕の好きな曲『LAST DANCE』はよりファンク度が増していて、そのままカーティス(メイフィールド)の『TRIPPING OUT』に突入してほしかった。みなさん一度繋いでみてください。ミロシュが時折叩くスネアとハイハット、全員でのハンドクラップといったオーガニックなリズムも効いていた。あの時代に好きだったエッセンスを思い起こして、少しばかりノスタルジックになった刹那、彼が歌う『CALLING YOU』をいつか聴いてみたいと思った。
※固有名詞にカタカナ、ローマ字が混在していますが、あくまで著者の気分です。

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