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ペトロールズ × メレンゲ

ペトロールズ × メレンゲ

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同じロックバンドながら、ある種対極的なサウンドスケープの競演。

8月28日、暦の上ではもう晩夏だ。まだまだ厳しい残暑が見舞う毎日と同じように、恵比寿LIQUIDROOMでは、 9周年を祝するライブイベントシリーズの開催が続いていた。8月28日のラインナップは、ペトロールズとメレンゲによる同じロックバンドながら、ある種、異色とも言える競演が実現した。

イベントの先陣を飾ったのはペトロールズ。徐々にエンジンを温めて加速していくかと思いきや、現時点の彼らの持ち曲で最もポップかつキャッチーな「止まれ見よ」からスタート。長岡亮介(ヴォーカル・ギター)が奏でる煌びやかなギターと、ジャンボ(三浦淳悟、ベース)とボブ(河村俊秀、ドラム)による鉄壁のリズムの上を、長岡のファルセットが心地よく伸びてゆく。最新作『Problems』で打ち出した、これまでのペトロールズに無かったタイプの楽曲だ。お次は、骨太のグルーヴと美しいコーラスワークが特徴的な「誰」と「ASB」が続く。「ASB」の「遊ぼう」の歌詞は「LIQUIDROOMで遊ぼう」「メレンゲと遊ぼう」と、9周年とはじめての競演に合わせて、気の利いたアレンジが施され、オーディエンスから歓声が上がる。長めのMCの中で長岡は9周年にちなみ、彼が9歳の頃は「担任の教師と折り合いが付かなかった」というエピソードで笑いを誘う(笑)。

後半は「ホロウェイ」から再開。セッション性の高いイントロとムーディーな本編とのコントラストが実に美しく、続けて披露されたバンドの新境地を予感させる新曲とともに、メランコリックな雰囲気がフロアを包み込む。そして、思わずため息が漏れる恍惚の時間のピークは、やはり代表曲の「雨」だった。メロウな音の雨粒をいつまでも浴びていたい。三人の後ろから照らす水色と黄色の照明とサウンドが相まって、幻想的な音世界が紡がれてゆく。最後はライブの定番曲の一つ「インサイダー」で締め、常に平熱感を保ち、涼しげな表情のまま多彩なメロディとリズムを繰り出す三人の佇まいは、大人の男の色気で溢れていた。

7月にツアーファイナル公演としてリキッドルーム 2 daysを敢行したばかりのメレンゲは、クボケンジ、タケシタツヨシ、ヤマザキタケシのオリジナルメンバーに、大村達身と皆川真人の強力サポートメンバーを迎えた5人編成。この日のメレンゲは、MCでクボが明かしたように、ペトロールズとの初めての対バンに合わせたセットリストにチャレンジした。ライブ序盤から「スターライト」「hole」「ムーンライト」とドラマティックなナンバーが続くいつもと異なる趣向のセットリストは、満天の星空と月明かりを連想させ、オーディエンスは一曲一曲を噛み締めるように聴き入る。その後は「Ladybird」「underworld」「アルカディア」とメレンゲ十八番のセンチメンタルなナンバーを畳み掛け、「ミュージックシーン」では夜空の遥か上の宇宙まで音世界を押し上げる。

MCを挟み、バンドとしての再出発と挑戦の意を込めた「クレーター」からは疾走感溢れるナンバーが続く後半戦に突入。「バンドワゴン」「ビスケット」とアッパーな曲を続けざまに演奏し終えると、タケシタがパントマイムやムーンウォ―クのコミカルなパフォーマンスでフロアを煽る。本編最後は「火の鳥」。「他人事みたいに 世界中を見に行こう ツンドラのもっと向こう」と歌い上げるクボのヴォーカルが力強く響いていた。アンコールでは、「クラシック」と「旅人」を披露。再出発の時期に相応しく、バンドと音楽との旅がいつまでも続いてゆくことを予感させた。

偶然にもペトロールズとメレンゲは、ギターヴォーカル、ベース、ドラムによるロックバンドとして最小編成のスリーピース。アダルトでクールな色気が漂うペトロールズに対して、メレンゲはサポートメンバーとともに瑞々しくキラキラと輝くギターロックを武器に、LIQUIDROOMのフロアには、ある種対極的なサウンドスケープが展開されたのだった。

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