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THE NOVEMBERS

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土砂降りの、寒い雨の日だった。けれど、普段なら憂鬱なはずのそんなシチュエーションがとてもTHE NOVEMBERSらしいと好ましく感じたのは、筆者だけではないはず。大気の汚れをすべて洗い流すかのような、あるいは憤りも悲しみも叩きつける水滴の音にまぎらせてしまうような豪雨は、どこかTHE NOVEMBERSが奏でる音楽とシンクロする。

この日のワンマンライヴは、「November Spawned A Monster」という、モリッシーがソロ初期にリリースした楽曲名が冠された、彼らがほぼ毎年行っている企画シリーズの一貫。とはいえ今年は、この直前にリリースしたアルバム『GIFT』のリリースツアー的な意味合いと、デビューから丸5年という節目の意味合いも兼ねた、特別なタイミングのライヴでもあった。実際に繰り広げられたステージも、デビュー5年目にして最も音楽的に開かれた世界観を提示する『GIFT』を生み出し、新章突入の意志を明確に露にした彼らが、改めて自らの音楽性やアイデンティティを総括していくような、ひとつの到達点を感じさせる素晴らしいアクトだったと思う。

THE NOVEMBERSは、音圧の高い激しい轟音と浮遊感の強い幻想的な音響という対比的な二項をコントラスト強く響かせ、光と闇を色濃く映し出しながらひとつの桃源郷を描き出していくバンドだが、この日のライヴはその二面性がよりくっきりと、美しく際立つ流れになっていた。

前述の『GIFT』に収録された“Harem”という、陶酔性の高いサウンドの中で<踊りましょう>というフレーズが柔らかにリフレインする楽曲から始まった前半戦は、彼らの「光」の部分にフォーカスを当てた流れ。“Reunion with Marr”や“sea’s sweep”、“BROOKLYN”と、小林祐介(Vo&G)とケンゴマツモト(G)の2本のギターが美しく繊細なアンサンブルを響かせ、甘美でユーフォリックな世界を描き出していく。小林の歌声も、消えることのない悲しみを帯びながらも「赦し」のような優しいフィーリングに溢れていて、とても心地いい。耽美的でありながらも決して退廃的な感覚は抱かせず、ポジティヴな光に満ちた印象を与えるサウンドは、今のTHE NOVEMBERSならではだ。
前半のハイライトは、やはり『GIFT』収録の“Slogan”。明日という光へ向かうメッセージと豊かな奥行きのあるサウンドスケープが大きく会場を包み込み、圧倒的な恍惚感を生み出していた。

その後、“夢のあと”、“日々の剥製”と、徐々にディープ&ヘヴィな世界を強めながら突入した後半戦は、前半とは打って変わって猛々しい轟音の嵐。吉木諒祐(Dr)の激しくもソリッドなドラムと高松浩史(B)の重厚なベースラインが強いダイナミクスを生み出し、歪みまくった鋭いギターがフロアを切り裂いていく。ポスト・ハードコアと言うべき音塊に圧倒され、ヒリヒリした昂揚感が爆発的に高まっていく。特に“dysphoria”から“白痴”の流れは強烈で、激情の限りを露にする音塊に小林の絶叫が合わさり、すべてを焼き尽すかのような勢いで展開。ここ数年で演奏力も表現力も格段に上げてきた、ライヴバンドとしての地力の高さを感じさせられた。
すべてを出し切った後、ラストは“GIFT”。ホーリーで陶酔的なサウンドの上で<まだまだ僕らは まだまだこれから>というフレーズが穏やかに響くこの曲によってすべてが浄化され、たったひとつの光の中に溶けていくかのような実に感動的な幕切れで、本編は終わりを告げた。

筆者はデビュー前からTHE NOVEMBERSのライヴを観ているが、最初から自分達のフィーリングや美意識を純度高く音楽化することに意識的なバンドだった。ただ、それ故に彼らの音楽は、「中毒的なまでにどっぷりハマるか、あるいはまったくハマらないか」という極端な反応をリスナーの間に生んできたように思う。だが、その構造は今、少しずつ変化している。
当時も今も、彼らの核にあるモノは少しも変わらない。けれど、ミュージシャンとしても人間としても様々な経験を経てきた結果、この1〜2年でバンドは急激な成長を遂げ、価値観を共有している/していないにかかわらず、誰しもをその音だけで納得させることのできる表現力と説得力を獲得し始めている。そのひとつの集大成が、この日のライヴだったと思う。今後、彼らがどんな進化を辿るのか。あなたも是非、その耳で追ってみてください。

有泉智子(MUSICA)

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