DEVENDRA BANHART
心地よいアンサンブル、甘い歌声、極上のひととき
ディヴェンドラ・バンハート2年ぶりの来日、ゲストアクトなしの、単独公演。この日リキッドルームに来れた人、安直すぎる言い方だけれど、本当に幸せな時間を過ごしたと思う。
北欧神話に出てきそうな、モジャモジャのヒゲと髪の毛(それでも以前の彼と比べると大分さっぱり!)と美形の優しい笑顔で、もう見た目だけでも癒し系のバンハートから発せられる歌声は、子守唄よりも優しく甘く、ゆるりと、しっとりと、私たちの心を癒す。音源と比べると、大分、というかもうまったくといっていいほどクセがなくなって、さっぱりとキレイで聴きやすいサウンドに。それに大人の渋みというか、そんなダンディな味も出てなんとも心地よい、温もり溢れる、そんな印象。Grogsと共に演奏するバンド編成と、間に弾き語りソロも織り込んで、時に切なげに、時にポップに、時にアグレッシヴに、フォークもサイケもリズミカルなものまでまるで絵本の世界のように様々な音を繰り広げる。壮大で解放的な世界。
”FOOLIN”でタム&ギターの発するアンビエント・サウンドっぽさもある、ささやくような優しいアンサンブルや、ソロで歌った”SHIGHT TO BEHOLD”や”THE BODY BREAKS”の思い出に浸るような儚い黄昏感。”LITTLE YELLOW SPDER”では子どもに童話を話して聞かせているみたいな、ちょっとわくわくした気分にもなったり。演奏中に舌を何度も出したり、オーディエンスに無邪気に手を振ったりする立ち振る舞いもなんだかかわいい。「ディベンドラ ハ オイシイデス(ノア:Grogs)」「彼女二 ナッテクダサイ(バンハート)」とか、わけのわからないMCも繰り広げたり。中盤では、バンド編成で細野晴臣の”スポーツマン”のカヴァーも披露。
ライヴ後半にさしかかると、さっきまでの繊細な歌い口はどこへやら、激しくシャウトを繰り返し、ダークネスで妖しい雰囲気を醸し出す。そんな”SEAHORSE”、”RATS”、”LITTLE BOYS”のダーク・ゾーンを超えて、アンコールでは指笛を「ピュウウ!」と吹き鳴らし、ハンドクラップにマラカスのアッパーなタテノリのたのしいリズムの”I FEEL JUST LIKE A CHILD”でノリノリのラストを飾った。
器用で色々な引き出しを持って魅せてくれるバンハートの演奏、「大人のための子守唄」みたいなライヴだと思いました。(知念正枝)