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TOKYO No.1 SOUL SET

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年末恒例ソウルセット! 音楽愛に溢れた大忘年会

 毎年12月29日にリキッドルームで開催される恒例のTOKYO No.1 SOUL SETライヴ。今年はソウルセット20周年ということもあって、本当に豪華なメンツでチケットはもちろんソールド・アウト! 年の瀬の恵比寿を大いに盛り上げてくれた。

 まず最初にステージに登場したのはAFRA。ヒューマン・ビートボックスとは思えない重たいビートを打ち鳴らし、ときに甘くときに面白おかしくラップを織り交ぜる。人力ビート、人力リヴァーヴ、人力フェードアウト……マイク1本でパフォーマンスする彼は、重低音からキーボードの音やラップという上音までたったひとりで奏で、まるまる1曲をひとりで構築してしまう。最初はなんだなんだと大人しく観ていたオーディエンスも、最後にはそのパフォーマンスと彼の親しみやすいキャラクターも相まって、ノリノリでコール・アンド・レスポンス! しょっぱなから会場を暖めてくれた。
 続いて登場となったのは七尾旅人。下駄に大きな麦わら帽子という風来坊のような装いでひょっこりとステージに現れた七尾は、最近できたという新曲からカヴァーまで幅広いセットリストで演奏。彼の発する音楽や言葉はどこまでも気持ち良く響き渡り、時折ぐっと心に突き刺さる。合間に挟まれたMCでは独特のギャグセンスでオーディエンスの笑いを何度も誘っていた。この人は本当に、喋るように唄い、唄うように喋る。その空気感もまた彼の大きな魅力のひとつだと思う。やけのはらをフィーチャリングしたスマッシュ・ヒット“Rollin Rollin”はなんとオーディエンスがラップ部分を担い、七尾が唄うという役割分担。最初はどうなることやら……とちょっと心配してしまったけれど、オーディエンスのラップ、ばっちりでした! 七尾も途中でやけのはらの声真似をしたりして会場大盛り上がり。ラストは電気グルーヴの“虹”のカヴァーを披露してステージを去っていった。
 三番手はneco眠る。お馴染みのド派手な衣装(この日は赤いジャージに首に大きな銀の鎖を付けてました)のベース、伊藤がオーディエンスを煽ると歓声が上がり、ライヴ・スタート。彼らが奏でるのは、ちょっと切ない、人肌の温度くらいの、じんわり温かいダンス・ミュージック。初めて彼らを観た人もすっと入っていけてしまう、多くのひとを歓迎する彼らの音楽によって、オーディエンスの身体も自然に揺れていた。そのサウンドによって醸し出される、郷愁を誘う、懐かしさと、エレクトロニックなリズムが気持ち良く調和する。すごく絶妙なバランス感と圧倒的なオリジナリティーを持ったバンドなのだ、neco眠るは。しかしこの日のライヴをもってドラムの岡本が脱退となり、惜しくも活動休止となってしまった。もっと観たい! と思った人は私以外にもかなりたくさん居るはずだから、なるべく早くシーンに復帰してくれることを願う。
 そして原田郁子。スティールパン、ドラム、ダンサーというサポート・メンバー3人を従えて、女性4人でステージに臨んだ。全員お揃いの衣装もさることながら、それぞれ頭にクリスマスカラーの被りものをしていてすごく目を引く。まるで森の精霊のような佇まいの4人に、オーディエンスも意表を付かれたという感じだった。そしてそんなことにはおかまいなしといった感じでにこにこ楽しげに微笑む彼女たちによって披露されたのは、持ち時間30分をフルに使った渾身の1曲。ボンゴや鈴、ピアノや小さなドラムセット、スティールパン、そして原田郁子のヴォーカルによってセッション的にはじまった、“青い闇をまっさかさまにおちてゆく流れ星を知っている”を軸としたその曲は、もろく簡単に壊れてしまいそうで、しかし温かく包容力を持った、恐らくこの日だけのスペシャルな1曲だったのだと思う。静と動がせめぎ合い、胸を締め付けられるような瞬間が何度も何度も訪れる、なんとも美しいステージだった。

 続いてバトンを受け取ったのは曽我部恵一BAND。ステージ中央にメンバー4人がぎゅっと集まってポジショニングし、目の覚めるような爆音で気合い入りまくりな演奏を見せてくれた。テンション高く畳み掛ける様に次々と繰り出されるロックン・ロールにはフロアも一気に沸騰! ソカバンに負けない勢いで盛り上がる。“テレフォン・ラヴ”でのお馴染みのコーラスも大合唱。手拍子も自然に起こり、メンバーもオーディエンスも満面の笑顔だったのが最高に素敵だった。恋する気持ちや、日常に潜む幸福、それらに対する熱い想いを恥ずかしがることなく真っ向勝負で伝えようとする彼ら。きらきらと輝くソウルフルでエモーショナルなライヴは、どうやったって人の心を打つものだ。最後の曲まで疾走しまくったメンバー4人によって気付けばまた一段と会場の空気が暖まっていた。

 と、ここまでザッと振り返って、なんという音楽愛に溢れた贅沢な1日だったかを考えてもらいたい……。開催前から発表されていた川辺ヒロシからのコメントにも「豪華すぎるこのメンツ! 異常!」なんてくだりがあったが、まさしくその通り。素晴らしかったです、ほんとに。異常に豪華。
 
 そしてまだかまだかと待ち構えるオーディエンスの前に現れた真打ち、ソウルセット! 彼らによって1曲目に鳴らされたのは“Please Tell me”だ。そして川辺ヒロシのDJを中心に構築される圧倒的なグルーヴとサウンドで、会場の空気を一瞬にして変えてしまった。男くさくてアダルトで、それでいてハッピーで、どこまでもエネルギッシュな彼らのライヴ。“Hey Hey Spider”、“Change My Mind”と次々と繰り出される曲に合わせて、会場の温度はどんどんと上昇していった。MCでは、「ソウルセット20周年ということで、今日はいろんなミュージシャンに集まってもらいいろんな方々に集まってもらいいろんなスタッフに集まってもらい……。今日は本当に記念日になりました! ありがとうございました!」と喜びを噛み締める様に語ってくれたBIKKEの言葉が印象的だった。往年の名曲がちりばめられたセットリストでライヴはどんどんと進行し、本編ラストで披露されたのは“Innocent Love”。渡辺俊美の深みのあるヴォーカルが会場に響き渡り、突き抜ける様なメロディーによって揺れる会場には、ある種の一体感が生まれていた。そこに身を任せて観ていたら、単純に音楽を楽しむことが、死ぬほど気持ち良かったです。
 アンコールでは壮大で美しいメロディーが印象的な“ヤード”、そしてアッパーな“too drink too live”を披露し、計4時間半以上に渡る大忘年会は幕を閉じた。

 彼らは2月に20周年企画アルバム『全て光』のリリース、さらにリリース・パーティーも決まっている。またアパレルブランドとのコラボグッズの発売などなど、やたらと話題の尽きないソウルセット。是非これからもチェックを怠らないで欲しい!(山田佳緒里)
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PHOTO by 埼玉泰史

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