MANU CHAO LA VENTURA
ライヴ&ダイレクト、熱い音とメッセージが会場を包む
実に8年前ぶり、2002年のフジ ロック以来の来日となったマヌ・チャオの来日公演!今回はマヌ・チャオ・ラ・ヴェントゥーラという名義で、マヌ・チャオ・レディオ・ベンバ・サウンド・シ ステムよりギター/マシッド、ドラム/ガルバンシートを引き連れての登場である。
マヌ・チャオとマシッドのガットギター、ガルバンシートのドラムというアコースティックな編成で、比較的ゆったりと始まったこの日のステージ。 真っ赤なリボンを額に巻いたマヌは、レゲエや彼のルーツであるラテン・ミュージックの香り漂うピースフルなメロディーを、リラックスした演奏と ヴォーカルで紡いでいく。さざ波のように揺れるフロアからは時折ハンドクラップが弾けたりと、オーディエンスもそれぞれの方法で実に自由に楽しん でいた。
MCらしいMCもなく、どんどんと進められるライヴ。というのも、彼らは曲の終わりにさしかかると、そこに次曲の頭を自然に被せてきてそのまま すっと次曲の演奏に入ってしまう。だから彼らのライヴでは曲と曲の切れ目がほとんどない。よって聴き手は高まった興奮や熱気を冷ますことなく、む しろ徐々に拍車をかける形で、ストーリー性あるライヴ展開に存分に身を委ねることが出来るのである。
そのままアコースティックにライヴは続くのかと思いきや、マシッドがガットギターをエレキギターに持ち替えて後半戦がスタート。するとそれまで のゆったりとした空気をぶち抜いてしまうような高速ビートが繰り出され、スカとパンク、そしてレゲエを行き来するような“これぞ、マヌ・チャオ・ ワールド!”が展開される。ベースレスというバンド構成にも関わらず、信じられないほどの音圧で迫ってくる彼ら。ノンストップで続く熱いステージ に感化されたフロアでは、モッシュ、そしてダイブの嵐が巻き起こっていた。どこまでも情熱的で、タフで、エネルギッシュな演奏に胸を打たれた人も 多かった
だろう。
メンバーは何度も客席に手を伸ばして握手やハイタッチを交わし、ステージもフロアも笑顔が溢れていた。そして印象的だったのは、何度もマイクを 胸に打ち付けるマヌのパフォーマンス。その打ち響かせられた鼓動は、マヌの高まる歓喜を表現していたように思う。
“Clandestino”、“Tombola”など、お馴染みの曲ではフロアからも合唱が聴こえ、アンコールに披露されたボブ・マーリーの”Iron Lion Zion”では、温かい一体感が生み出されていた。ラストは何度もフロアとのコール・アンド・レスポンスが続き、曲が終わったかと思いきや再度サビを繰り 返し……、というのが繰り返され、なかなか終わらない。というか、終われない。
客電がついてもなお鳴り止まない、彼らを求めるコールに引っ張られるようにして再度登場したマヌ・チャオたちは、恐らく当初予定にはなかった であろうダブル・アンコールまで披露して、最後の最後まで沸点を振り切るようなエネルギーで突っ走ってくれた。「アリガトー、トー キョー!!!!」と叫ぶマヌの笑顔は、その8年のブランクを感嘆に埋めてしまった最高の夜に輝いていた。
最後に。マヌの言葉が通じなくても音楽で心が通じてしまう、パフォーマンスと音楽のすばらしさはもちろんだ。しかし忘れてはならないのは、彼の 本質にはその音楽のすばらしさを損なうことなく、さまざまな世界の問題について向き合い、真剣に語ろうとするメッセージ性の強さもあるということ だ。私と同じように語学力の問題で、ライヴ中ダイレクトにそのメッセージを受け取ることが難しい人は、ぜひともそのインタヴューや歌詞の対訳など を見つけて、そのメッセージにも注目して欲しい。そこに、彼の音楽の熱さ、強さの秘密が隠されているはずだから。(山田佳緒里)
【セットリスト】
-acustik-
Ya Llego Ya Llego
El Hoyo
Expresso Del Hielo
Senor
Matanza
Alas Rotas
Giramundo Re m
Desparecido
Rumba De Barcelona
La Despedida
-electrik-
Bobby Marley
A Cosa
Bienvenida A Tijuana
El
Viento
Clandestino
Tombola
KK5
Primavera
Eldorado
-encore-
Iron Lion Zion
Mi Vida
Politik Kills
Machine Gun