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カフカ @ 渋谷O-NEST

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 いっぱいにうまった会場、ふらりとステージに登場した3人に気負った様子は見受けられない。黄色い声は飛ばさず拍手で迎え、じっと見守るオーディエンス…カフカの、セカンド・アルバム『cinema』リリース・ツアーのファイナルである。

 ドラムのフジイダイシの「ワン、ツー!」という掛け声を合図に、高まった緊張感を突き破るような疾走感あるイントロが鳴り響く。そう、この日のライブはアルバムの1曲目でもある“Annie”でスタートした。
 バンドのテンションを盛り上げるヨシミナオヤの雰囲気のあるベースと、冷静だが気持ちの入ったフジイダイシのドラム。そしてカネココウタの、圧倒的な存在感と吸引力のあるギターとボーカル。クリアな音像ではあるが、物足りなさはまったく感じられない。それは作り込まれた曲の良さに加え、カネココウタのボーカルと彼の紡ぐ文学的で叙情的なリリックがバンドの芯となりしっかりと立っているからだ。それを指針として、個々のエネルギーがそれぞれ個別に発散されるのではなく・唄・を奏でようと、真っ直ぐ同じ方向を向いている。

 『cinema』の曲を中心としながらも、随所に新旧曲を織り交ぜたセットリストでオーディエンスを魅了しつつ、あっという間にライヴが進んでしまう。途中で何度も3人が円を作るような格好になって、目と目を合わせて一音一音を丁寧に鳴らしていたのが印象的だった。
 「とても大切な曲です」という紹介を受けて、ラストは“In the clock works”。キャッチーなメロディーと高めのテンション。眩い光を感じるこの曲には、それまで食い入るようにステージを見つめていたオーディエンスも、リズムに合わせてゆらゆらと揺れているようだった。

 鳴り止まない拍手に応えて再びステージに現れた3人。アンコールは、カネココウタの静かなMCで始まった。「この曲をやっている間は、純粋な気持ちでできるから。なかなかそんな曲は作ろうと思っても作れないし。だから今日はぜひやりたいと思います」
 そこで披露されたのは、3人が一緒にバンドをはじめて最初に作った曲だという“バスケットボール”。「できそこないの天使は笑って できそこないの歌をうたっていた」と、優しいメロディーに、そんなリリックが乗せられる。
 
 私は幸運にも、彼等の活動をその草創期から観ることができた。なんというか、はじめから彼らはなにか魔法の掛かったバンドだったように思える。ある特別なバンドだけが鳴らせる特別な音、というものがあるとすれば、彼らは荒削りながらもその“特別な音”をはじめから高らかに鳴らしていたと思う。それが大袈裟な言い方に聞こえるかもしれない。しかし、イノセンス、ノスタルジー、誰の心にも潜む淋しさ、そして優しさ。弱さと力強さ。それらが絶妙なバランスで形成され昇華された彼等の世界観は唯一のものだ。
 この日のライヴは、それがここ数年の様々な活動を通してより確固たるものになっていることを証明するようなアクトだった。

 カフカの音楽は、内面へとどうしようもなく染み入る。なぜ彼等の音楽にこんなにも共鳴してしまうのか。もしかしたら、少年少女時代にいくつも抱えてきた出口の無い「なんで?」のひとつの答えが、彼等の音楽には宿っているかもしれない。そしてきっとそれは、あなたを救ってくれるはずだ。
 
 初のワンマン・ライヴも9月に控え、これからの活動に注目の彼等。まずは、彼等のライヴに足を運んで、その目で耳で、感じてみて欲しい。(text & photo by 山田佳緒里)

 
セットリスト
1. Annie
2. Spectrum
3. countdown
4. snow white is dead(新曲)
5. christmas song
6. edelweiss
7. 理科室のカエルとハツカネズミに祈りを捧げる
8. いわないでよ
9. 虹の下
10. broken flowers
11. In the clock works
En. バスケットボール

<インフォメーション>
カフカ 1st. ONE-MAN
2010年09月10日(Fri.)下北沢shelter
open / start 18:30 / 19:00
adv / door ¥2,500 / ¥3,000

7/10(土)一般発売
ワンマン詳細ほか、今後の活動情報はこちら http://www.ka-fu-ka.net/

カフカのインタヴューページはコチラから

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