GOSSIP
『ビースティ・ボーイズを世に送り出し、レッド・ホット・チリ・ペッパーズの出世作にも助力した敏腕プロデューサーのリック・ルービンの手によりメジャーデビューしたGOSSIPが移籍第一弾アルバム『Music For Men』を引っさげ来日公演を行った。それだけでも注目を浴びるに充分であるが”GOSSIP”、まさにその名の通り話題に事欠かない。レズビアンのカミングアウト、NME誌の表紙をヌードで飾るなどの反逆的な姿勢を纏った絶対的ロック・ディーヴァ、ベス・ディトーがフロントに鎮座している。音楽は別としても、興味を惹く要素であることは間違いない。
そんな鳴り物入りのプロモーションもモノともせず、ロック・ディーヴァがLIQUIDROOMに降臨!照明が落とされメンバーが登場するや拍手に歓声。ドラム、ベース、重なるギターの煽るような静かな音が続き会場の期待も上がっていく。いきなり響き渡る澄んだ力強い歌声はどこから?と思いきや、ベス・ディトーは姿は見せずにまず声だけでその姿を現した。会場を焦らすかのようなその美声に一層煽られてからハンドマイクを携えてステージへと登場するや大盛り上がりである。ベス・ディトーは胸元のざっくり開いたネズミのキャラクター柄の黄色いワンピースにボブヘアーがなんともチャーミング、そしてその存在感たるや諸々のゴシップなんてものともしない、なんともボリューミィにして圧倒的な存在感だった。美声の主はそのボリューム満点の体の全身を使って歌いまくってはクラップしてオーディエンスを乗せていく様はなんともパワフルで惹き込まれる。ベース、ドラム、ギター、シンセサイザーの作り出すサウンドは実にシンプルでタイト。ベスの歌声との絡み合いは相乗効果で互いを盛り上げては、更に会場をも盛り上げていく。
一曲目が終わった後に「ヨウコソー!ところでここはどこ?」の問いにフロアが「トーキョー」と応えると「No,Japan!」と言ってみたり、アラジンでお馴染み「Whole New World」をアカペラ披露したり、同じくLittle Mermaidのテーマソングを歌ってみたり。「ゲイって何ていうの?」と目の前のフロアに呼び掛け、マイクを向けたお客さんに教えてもらうや「オカマー!!」と叫んだり。曲間ごとにチャーミングな動きと共にフロアに言葉を掛けては笑いを誘うパフォーマンスが実に印象的だった。ステージ狭しと右へ左へ、全てのお客さんに届くように歌いかけていく様だけでも存在を身近に感じられて嬉しい。しかしベスはステージとフロアの距離すら超えて歌いかけてくる。終盤に披露された「FOUR LETTER WORD」ではコーラスでコール&レスポンスをしていたが、ベスはステージを降りるやフロア最前列の柵をも超えてオーディエンスの中へと分け入っていった。コーラスを歌い喜んで受け入れるオーディエンスと何度もコーラスの応酬をしてから満足そうにベスはステージに戻ってきた。本編ラストの前にはDaft Punkの”One More Time”を”One More Song”と変えてアカペラで披露。その歌声の魅力は勿論のこと、パフォーマンスから場の空気から、全てを見事に自分たちのカラーで埋め尽くしてステージを去った。
大充実のライブだったがもっと見たい!と沸き起こるアンコールに開演当初と同じようにベス以外のメンバーが戻ってきた。当のベスはというと、タオルを頭に巻いて風呂上りのようなスタイルでやはり少しだけ遅れて登場して「What’s Love Got To Do With It?」「Standing In The Way Of Control」の二曲を披露。「Standing In The Way Of Control」ではバンドの演奏はそのままにベスだけが「Hello,Hello,Helo,How Low?」と、Nirvana”Smells Like Tees Spirit”を歌い上げる。アンコールのラストでGOSSIPの代表曲といってもいい曲を崩して即興人力マッシュ・アップしてしまうなんて最後の最後まで魅せる、惹き込むライブだった。
パフォーマンスの端々にまで溢れるベスの、そしてGOSSIPのサウンドの魅力をここまで伝え、引き出し、楽しめるのはライブならではだろう。歌声や音楽のみならず、そのチャーミングな雰囲気にも酔い痴れた素敵なライブだった。
1.Dimestore Diamond
2.Pop Goes The World
3.2012
4.Yr Mangled Heart
5.Men In Love
6.FIRE/SIGN
7.Love Long Distance
8.8th Wonder
9.Listen Up
10.Four Letter Word
11.Yesterday’s News
12.Heavy Cross
En.
13.What’s Love Got To Do With It?
14.Standing In The Way Of Control