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東京360分 -ROSE RECORDS & LIQUIDROOM 5th Anniversary-

東京360分 -ROSE RECORDS & LIQUIDROOM 5th Anniversary-

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曽我部恵一の主催するROSE RECORDS の5周年アニバーサリー・イベント<東京360分>。開催場所として選ばれたのは、同じく5周年アニバーサリーである此処、恵比寿LIQUIDROOM!

その文字通り夕方3時から夜9時までの360分間のライブ。ステージは1階のメインステージ、バーステージ、2階のロフトステージと3箇所に振り分けられ、常に何処かで音が鳴らされている、という状態。ROSE RECORDSのアーティストやゲスト、総勢24組となるバンドとDJ達によってロックからパンク、エレクトロ、カントリー・・・、ありとあらゆるジャンルの交わる至福の空間は、まるで縁日のような雰囲気。カラフルな照明、風船が散りばめられたそれぞれのステージで鳴らされる音楽に加え、ライブペイントも同時進行、更に曽我部恵一BANDのメンバーによる鏡開きと振る舞い酒等々、盛りだくさん過ぎる程の濃ゆい内容となった。とにかくアーティストとの距離が近く、集まった満員のオーディエンスも大満足であっただろう。その音楽により近づけるような、より寄り添えるような、そんな距離感と肌で感じられる手作りの温もり。それは暖かさと優しさを内包し、曽我部恵一という人の誠実な人となり、また各々のアーティストの素顔や、音楽の本質なんてゆうのまで覗けてしまうイベントになっていたと思う。この日に起こった出来事のひとつひとつは、本当に奇跡のようだった。

お祝いムードに相応しくメインステージのトップバッターはサニーデイ・サービス。名曲『恋におちたら』から始まり、新曲を含む意欲的なセットリストでライブに臨んだ。噛み締めるように一音一音、一曲一曲を丁寧に鳴らし切り、最後は「もう一曲やりたくない?」という曽我部のMCに始まって、急遽手拍子をバックに『コーヒーと恋愛』を披露。会場を大いに沸かせるイベントの幕開けとなった。

続いてアコースティックギターを携えた中村ジョーが、サポートメンバーを迎えてのバンド編成で登場。少し低めの芯の通った唄声で、爽やかで心地良い、しかしそれだけではない味のあるポップスを響かせる。ワッツーシゾンビは豪快、痛快なサウンドでオーディエンスを躍らせ、ラストはフロアにメンバーが降りて演奏!というド派手な演出で5周年をお祝い。打って変わってのホテルニュートーキョーはエレガントに、心地よすぎる美しい極上のアンサンブルを奏で会場を彩った。また豊田道倫は昆虫キッズと共に登場し、息の合った演奏で沸かせる。彼が唄うと愛や皮肉的な歌詞までが本当に確信的に響くから不思議だ。静寂と柔らかな轟音で空間を支配したCheekbone。アンビエントで幻想的な世界へとオーディエンスを誘う。DJ YOGURTは夢心地な選曲とプレイでゆっくりとフロアの温度を上げた。

ちなみにざっとメインステージを振り返ってみたものの、これはこの日のほんの一部を切り取ったに過ぎず、他のステージでもアーティスト達による素晴らしい音空間が創り上げられていたのは言うまでも無いことである。

さて、メインステージの大トリを務めたのは曽我部恵一ランデヴーバンド。暗幕が開かれると、なんとその日の出演者のほとんどが揃ってステージに登場、総勢20名というサプライズ!お決まりの曽我部の語りのようなMCから始まったのは『浜辺』。ギターなんて5人くらい居て、その他にもそれぞれが思い思いの楽器やコーラスで参加し、本当にステージの上に居る全員での演奏となった。まだ幼い曽我部の実の娘もステージに上がり、無邪気な声で力いっぱいコーラスを取る。なんだか家族的な温かさでじんわり染みてくる幸福感。「今日はライブをやってくれたみんなが好きに集まってやってくれています。これが本当のランデヴーバンドです!!」という満面の笑顔での曽我部のMC。手拍子と大合唱に包まれ、感動的な演奏は20分にも及んだ。ラストの『テレフォン・ラブ』は、本当に、ハッピーエンドの映画のエンディングのよう。音楽の力、唄の力、愛を唄うんだという意思の強さを実感する。こんなにも届くんだ、って。心の奥底まで温かくなる。「もっと未来まで繋がるいい音楽を創っていきたいと思います!」という曽我部のMCはとても頼もしくこれからに期待をせずにはいられない。

どんなにキャリアを重ねても、好きなことをする、という曽我部恵一のブレない姿勢とそのやり方の正しさを象徴するような素敵なイベントだった。良いイベントには、良い雰囲気が必ず流れている。それは絶対に伝わるものだし、この日すれ違ったオーディエンスがみんな笑顔だったのは、つまりはそういうことなのだろうと思う。

この日の模様はDVDという形でドキュメンタリー作品となって追うことが出来る。この日会場に居たあなたも、居なかったあなたも、手に取ってみることをおすすめする。そして著者としては少しでも多くの人が音楽の起こす奇跡に触れてみて欲しい、と切に願うのである。

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