THA BLUE HERB
その静寂を破ったのはオープニングアクトとして登場したNORTH SMOKE ING a.k.a. NORTHC’Z。“SMOKE立ちこめる北の進行形”と名乗る新世代HIP-HOP集団だ。1DJ、3MCで構成される彼等の音楽は強い主張を持ちつつも、シリアスなだけでは無い、若さだけでは無い、彼等独自の音像でオーディエンスに迫る。札幌を拠点に全国全世界へ向けて発信/発進する彼等のステージに、魅了された人々も多かったであろう。
そして15分の転換を経てステージに立ったTHA BLUE HERB。彼等の登場と共に掲げられたオーディエンスの無数の拳が象徴するのは、彼等の音楽を心から望む人々の声そのものだ。
MCのILL-BOSSTINO が“ドン詰まりの17ラウンドリキッドルーム!”と叫び、フロアからも歓声が上がる。ぎりぎりまで上げられたDJ DYEによる音圧、そしてBOSSによって吐き出されるリリックと気迫。次々に繰り出される彼等の名曲に次ぐ名曲。1MC、1DJという最小限の人数で最大限の最高の音楽を鳴らす彼等は、更にオーディエンスを巻き込んで空間を染め上げていく。
所々でリリックを変えて、リアルタイムで言いたいことを音に乗せるBOSSのメッセージ性の強いライブスタイルは、多くの人々の心を揺さぶる強い力を持っている。それは魂を削りながら、血を流しながら紡がれる言葉たちだからこそだ。私たちは彼等の音像によって考え方や気持ちの在り方を何度も解体され、そのリリックによって何度でも自分自身の再構築を図ることが出来る。まだまだ自分にはやれることがある、と勇気づけてくれる。
ツアーで更に鍛え上げられたであろう圧倒的なパフォーマンスと練りに練られたセットリスト、そしてオーディエンスの開かれた心が一体となって、最高に胸が熱くなる素晴らしい、奇跡のような瞬間が何度も押し寄せる。
BOSSはライブの最後、“ありがとうございました”と何度も言った。そしてそれに応える鳴り止むことを知らない拍手と歓声。それは伝えることを諦めない彼等のひたむきな姿勢が、勝利を掴んだ瞬間だった。