The Birthday
SEが鳴り止むと「ワン、ツー、スリー・・・」とイマイ(Gt)の声が共に第一音を心待ちにしているフロアの期待を裏切るように、そして募らせるように何かを数え上げていく。「シックス!」まで数えたところでようやくバンドの音が響き渡り『6つ数えて火をつけろ』。一曲目から拳が突き上がり床が揺れる。新曲の登場への期待と喜びが痛いほどフロアから伝わってきた。『モンキーによろしく』『バブスチカ』『NIGHT LINE』と、ツアー名に相応しい、夜の底をじりじりと焦がすようなナンバーが幕開けを飾る。
冒頭の低く構えた姿勢から繰り出されるような曲と違い、明るく軽やかなメロディに載せられた、キュートな女の子を彷彿とさせる歌詞が印象的な『カレンダーガール』を筆頭に、お馴染みの曲に交えて次々と新曲が披露されていく。今回のライブでは音源にされていない曲が(ライブ会場、映画館限定シングル曲を含め)7曲披露されたが、曲の幅が多様でどの曲もライブの流れの中で新鮮なイメージと共に歌い上げられた。The Birthdayならではの太く低く渦を巻くような渋い曲もあれば、メロディラインが非常にキャッチーで瑞々しい軽やかな曲、閉塞感を封じ込めた、と同時に風景の広さをこれでもかと感じさせる曲など実に多様。ファンとしての曲の好みは色々あるとは思うが、そのような期待を別の次元で乗り越えてバンドがバンドとして今鳴らすべき、鳴らしている音を聴かせてくれる。楽曲に対するリスナーのイメージはそれぞれにあって然るべしだとは思うが、The Birthdayは懐の広さでもってリスナーのイメージをどんどん覆していく。特に今回披露されたポップな曲、シンプルでストレートな曲の軽やかさ瑞々しさといったら、メンバーの年齢とは結びつかないぐらいに初々しい可愛らしさや青さを湛えている。囚われずに新しい一面を次々と見せてくれるこの夜の新曲群にはこの先の活動への興味を煽られないではいられなかった。
終盤で演奏された『SHINE』では、間奏部分でチバ(Vo.&Gt)がマイクには入らない言葉をポツリポツリと、何かを吐露するように口にしていた。曲の物語性を、そして感情を大いに膨らませながらの、歌詞だけでは収まりきらないようなボーカルには感情をかき乱されるようだった。ライブ会場、そしてイメージソングとなっている映画”シューテム・アップ”の上映劇場限定で発売されるCD収録の『PARTY PEOPLE』は『SHINE』とは打って変わって、うねる様なバンドサウンドに乗った小気味良い言葉が感情を次々と撃ち付けていく。疾走感、爽快感をそのままに『MEXICO EAGLE MUSTARD』『アリシア』へと雪崩れ込んで本編は終了。鳴り止まぬ喝采に『ALRIGHT』『NUDE RIDER』、『STUPID』『45 CLUB』のダブルアンコールで応え、BLACK ROYAL 12 NIGHTSは幕を閉じた。
武道館での「LOOKING FOR THE LOST TEARDROPS TOUR final Live at Far East」以来となるツアーなだけにThe Birthdayの新しい第一歩としてBLACK ROYAL 12 NIGHTSへ期待を寄せている人もいるだろう。恐らくバンド自体には武道館以降だから、等という気負いも構えもないとは思うが今夜披露された新曲を聴くに、また新しい場所へと活動を、その有様を広げていっているように見える。7/9リリースとなる『MOTEL RADIO SiXTY SiX』、7/18のSHERBETとの対バンイベント『ROCK YOU LIVE』、夏フェスへの参加も発表されているThe Birthday。ライブ活動の他、今夜の新曲たちが更にどのような新しい音楽へと繋がっていくのか、非常に楽しみである。