eastern youth/ハナレグミ
当初シークレットとして未発表でありながらもイベント名にて既に明らかになっていたハナレグミを迎えての極東最前線。 ハナレグミのアクトはブルースハープソロに次いで『people get ready』『そして僕は途方に暮れる』の二曲で幕開け。オーソドックスなカバーナンバーでここまで魅せられるのはeastern吉野が「ズルい」と評し た永積の声ならではだろう。ハナレグミの個性に包まれた原曲は新しい魅力でもって歌いあげられた。
「あの曲やるの、あの曲」と吉野に問われたという『家族の風景』。絵本の背景を彩るようなギターとハープの音色に優しく重ねられていくボーカル。語るように柔らかく紡がれる言葉が耳から心にストンと落ち着いていく。
日常に埋もれた色々な感情を拾い上げ、磨き或いは砕くようなハナレグミの演奏はカバー曲も含め、演奏された全ての曲・音が時折悲しみの射す優しさに 溢れている。悲しみの影を拭いきれないからこそ愛着の湧き上がるような。そんな日常への忘れがちな愛情を思い出すような優しい時間だった。
対するeastern youthは日常に堕する自己、現状に立ちはだかる壁としての世界を、自分の居場所であるぬかるみとしての日常を描き出す。自問という独り善がりの行為が 世界を暴き出すエネルギー。掻き鳴らされているのは幾重に歪む音、しかし轟音は純度を上げて真っ直ぐに進むべき先、世界を斬り拓いていく。
本編終盤の『自由』では右手を握り締めて歌われる言葉が、歌詞の域を超えて叫びとして生々しく吐き出されていた。『ドアを開ける俺』『街はふるさと』を披露したアンコールで更なる盛り上がりを見せて『極東最前線』は終了した。
どちらのバンドも景色のみでも感情のみでもない、まさに日常に潜む「情景」を、それぞれの視点で生々しく、細やかに切り取っては見事に描き出したア クトだった。主催のeastern youthは6/18、toeをゲストに迎えた極東最前線をもって上半期のライブを終了とのこと。こちらもお見逃し無く。