DJ NOBU
なぜ出会ってしまったのだろう? ヤツらとの出会いによって人生狂い咲き!?
そんな“ニクイ”やつらをご紹介。
今回は、昨年末にリリースした最新ミックスCD『ON』のリリース・パーティをリキッドルームで4月2日行うDJ NOBUが登場。
DJ NOBUを音楽の場へと引きずり出した強力な磁場を発した10枚とは? そんな“ニクイ”やつらをご紹介。
(取材は3月1日収録しました)
- BLACK SUNDAY(1993年)
- CYPRESS HILL
NOBUこれは、日常生活のなかではじめてはまったヒップホップというか、ずっと身近に流れてた音楽というか。他にもヒップホップ自体は聴いてていろいろかっこいいのはあったと思うけど、やっぱり素直にかっこいいじゃん。サンプリングのネタ使いにしてもスペイン語のラップとかにしても、B-リアルのあの感じにしても際立った存在感だった。
── ヒップホップを聴きはじめたのもサイプレス・ヒルという感じですか?
NOBUそうそう。
── 80年代末ぐらいっすか?
NOBUう~ん、あ、パブリック・エネミーかな。最初に好きになったの。パブリック・エネミーもすげー好きだったかも。パブリック・エネミーとアンスラックスがやった”Bring The Noise”がパーティで良くかかっててさ(笑)。その当時サイプレス・ヒルは際立ってたというか。ずっと家でも聴いてたし。あとは千葉に根付いてるんです。前にマルセル・デットマンが初来日して千葉でやった同じ日、裏でDJマグスがやってたんだよ。
── あ、そうなんですか?
NOBUそういう意味でも身近な存在というかさ、ちゃんと千葉で呼んでるっていう。さっき出した狂人病もそうだけど、サイプレス・ヒルの千葉ならではの存在感みたいなのはある気がする。みんな聴いてたしさ。このアルバムはネタ使いも斬新だったし。名盤、本当に好きっすね。
- MORE SPECIALS(1980)
- THE SPECIALS
NOBU次はスペシャルズ。2枚とも好きと言えば好きなんだけど、どっちだろうな……でも、ファーストも好きだけど、やっぱり『More Specials』かな、いまの気分だと。
── どっちも好きだと。
NOBUそうそう。ファッションも含めてキッズの見本というか、ジェリー・ダマーズの真似をしてそういうサングラスをかけたりとか、ズート・スーツを作りに行ったりとか。そういう音以外の全体的なものも含めて、かっこいいと思った。
── 前に、どこかのパーティで明け方に誰かがかけた“Enjoy Yourself”でノブさんが楽しそうに踊ってるのを見たことありますよ。
NOBUダハハ。でも実際にかっこいいからね。
── 間違いないっす。
NOBUひさびさに昨日聴き直したんだけど、いまの時代にあってるというか、歌詞の内容にしても、いますごいしっくりくるなと思ってて。いまの時代背景に対しても強烈ななにかがあるよね。
── 後にも出てくると思いますが、レゲエとかダブも好きでよく聴いてたというのは前にインタヴューで聞きましたけど、ちなみに他の2トーンのバンドとかは?
NOBU他ももちろん聴いたことあるけど、結局はやっぱりスペシャルズが一番好きだもんな。いまでもやっぱり残ってるものとしたらスペシャルズかな。
── パンク、例えばクラッシュみたいなのとかは?
NOBUクラッシュ、俺は全然ダメ。なんかダメだったんだよね。そっちだとダムドがすごい好きだったけど。スペシャルズは俺がキッズだったときにパーティでかかってた音楽という感じなんだけど、いまでもイイっていう。最高ですよ。
- WHAT’S GOING ON(1971)
- MARVIN GAYE
NOBUはじめて好きになった……あ、はじめて好きになったブラック・ミュージックはヒップホップがあるか。
── ソウルとかファンクでというところですかね。
NOBUそうそう。はじめて聴いたのはこれ。「こんなに素敵な歌があるんだ」って思ったね。俺のなかで、はじめて接した大人の音楽という感じでさ。コレを知ってからはとにかくすごい聴いてたかも。いろいろアレサ・フランクリンとか好きなシンガーはいるけど、人生を変えたというほどのインパク トというと、この存在かな。
── どのくらいの時期ですか?
NOBU18歳とかかな。
── 遊び場で憶えて知ったというか。
NOBUそうそう。もうちょっと年上のお兄さんたちが好んで聴いてたものだった。女の子を送っていくときにコレを聴きながら家に送っていった 思い出とか、そういうのが強い(笑)。ナット・キング・コールとかも好きなんだけど。
── このへんが好きな趣向性って、たとえばいまのDJプレイで言うとディープ・ハウスのなかにあるブラック・ミュージックの部分とかそういうところにつながってきてると思います?
NOBUそういうのは絶対にあると思う。それはひとつでかいよね。ムーディーマンとかも人生を変えた10枚に入るかもしれないけど、やっぱりこ の存在はすごすぎるかな。セクシーだよね。この前、ホセ・ジェームス観たんだけど、やっぱりセクシーで、あの色気はすごい。見習いたいもんですよ(笑)。改めて聴いても演奏もいいもんね。
── こういうのって、わりと中学生とか本当に若いときは聴けなくてある時期から聴けるようになったりしません?
NOBUあるよね。大人の世界に入った感じ。
- STARSHIP AFRICA(1980)
- CRATION REBEL
NOBUダブ・シンジケートとどっちが良いかな、クリエイション・レベルかな……はじめて聴いたダブがクリエイション・レベルだった。
── テクノとかにも通じる、音そのものが快楽的って感じすね。
NOBUそうそう。リー・ペリーとかを聴く前に、こっちを先に人に教わった。地元にいたイギリス人の家で聴かされて。「こんなすごい音楽があったんだ」と気づいてしまった1枚。そのイギリス人がイギリスに帰るたびにどっさりそういうレコードを買ってきて聴かせてくれて、ダブ道場って感じ。〈ON-U〉のゲイリー・クレイルとかダブ・シンジケート、アフリカン・ヘッドチャージとか。
── いわゆるルーツ・レゲエ全体よりもダブですか?
NOBUそう。歌もののルーツ・レゲエも好きだけど、やっぱり人生を変えたというところまでいくとダブだね。絶対にいまにつながってるじゃん。
── たしかに。スタイルは違っても目指してるところ、リズムやグルーヴが強くて、そして飛びもあるという点ではつながりますね。
NOBUそうそう。つながるよね。あとはサイエンティストとかもすごい好き。良く聴いてたもん、聴き漁ってたよ。
── ちなみに、ここまで出てきたのって時期的な順番って同じ様な感じですか?
NOBU基本的にはそうだね。でもサイプレス・ヒルとかも同時期に聴いてたよ。
- SUPER ROOTS(1993)
- BOREDOMS
NOBU次はボアダムズ。ボアダムズは、存在として本当に影響を受けた。『SUPER ROOTS』を最初に聴かされたとき「なんだろうこの変な音楽!」とか思ってた。そしたら、どんどん活躍していって進化を遂げるわけじゃないですか。
── ボアダムズの作品の時期で言うと、どちらかと言うと、いわゆるレイヴ的なところを結びつく前という感じですか?
NOBUそうそう。いちばん好きなのは『Chocolate Synthesizer』ぐらいまでの時期かな。昔、ビースティ・ボーイズが92年くらいに来日したとき、その前座がボアだった。それを観て「うわ、この人たちすごすぎる」と思って。あのときのライヴがけっこうトラウマなんだよな。あとはジャケットとかのEYEさんのアートとかも含めて。なんか90年代のシーンみたいなものを象徴してた部分はあるよね。
── 海外でも人気がありましたからね。
NOBUねぇ。ソニック・ユースとかも聴き始めたのはこのへんかな。
── ソニック・ユース? 意外ですね。
NOBUソニック・ユース大好きだもん。なにげにいろいろ聴いてるよ(笑)。わりとまわりのハードコアのバンドをやっていた連中のなかで も、ちょっと一歩踏み込んで変なことやりはじめる人たちが出てくるのと同じぐらいの時期でもあって。でも、なによりもやっぱりライヴが強烈だったもん。さっき言ったビースティの前座やったときとかすごい憶えてるんだよね。
── まさかそんな人と10数年後に、いろんなところでDJを一緒にやるとは思ってもないですよね。
NOBUそうだよね。あこがれというか、90年代のああいうシーンのアイコン的なところもあって、メジャー・レーベルからも出してたし。本当に飛び抜けてた。なんだかんだで、EYEさんに影響受けてた。この間、〈SECO〉で一緒にEYEさんとか川辺さんとかと出たときに話したんだけど。千葉に〈サクラモンテ〉(〈フューチャー・テラー〉を開催していた千葉のクラブ。現在は閉店)ができる前、千葉の潰れるビルでやったパーティで俺がクラリネットを吹いてたのをEYEさんが観てたらしくて。「アレ、トラウマやんな」って言われて。あのとき、はじめてEYEさんに会ったんだよな。たしか「〈フューチャー・テラー〉がおもしろいって聞いたから」って来てくれて。その後もEYEさんが誕生日のときにDJで出てもらったりして。
- 落とす死(1993)
- DROPDEAD
NOBUファストコアのドロップデッド。すばらしいですよ。この手のファストコアで、最初に好きになったのがドロップデッド。それまでもハードコアとか聴いてきたなかで、これは究極的にかっこいいって再認識させられて。いまだに大好き。演奏もすごいし。
── 時期としては?
NOBU90年代中頃かな。92~93年にはすでにテクノとかにもはまってたんだけど、これは自分のなかにもともとあるものの延長線上っていう感じで。ドロップデッドは画期的だった。
── いわゆるDJミュージックと平行して、こういうものはずっとあると。
NOBUそうそう。これはもう最高っすね。
- THEMBI(1971)
- PHAROAH SANDERS
NOBUファラオ・サンダース。アルバムは……『KARMA』か、このジャケットのやつ(『THEMBI』)。
── これはどういういきさつですか?
NOBU単純に美しい音楽、すごく美しい音楽じゃないですか。いま、渋さ知らズでトロンボーンをやっている先輩にクラリネットを教わったのね。その人が俺にジャズをもたらしてくれた。それで最初に聴かされたのがこのアルバム。あとはマイルスの『Bitches Brew』も。それも人生を変えた10枚に入りそうだけど、はじめに聴いたのがコレだから。フリー・ジャズがかっこいいなと思って。
── いまでもいろいろこのへんのジャズは聴きますか?
NOBU聴く、聴く。スティーヴ・レイシーもすごい好きだった。あの、虚無感っていうか、むなしさだけが残るというか、すごい聴いてたよ。
── コルトレーンとかは?
NOBUもちろん好きだよ。ロニー・リストン・スミスとかも好きだし。いい音で音楽を聴くというのを憶えたのがこのへんかも。いいですね。
── 聴き入っちゃいますね。
NOBUねぇ。
- SEI ES DRUM(2007)
- RICARDO VILLALOBOS
NOBU次はヴィラロボス。「SEI ES DRUM」の3枚組。
── ついにきましたね。
NOBUやっぱりヴィラロボスの影響というか、ヴィラロボスには人生を変えられちゃってるというか。実際すごいじゃん。
── あの音があって、いまのシーンがあるっていうのはありますよね。
NOBU「こんなのやっちゃって良いの?」って感じで。当時、ちょうどカネコ(Shhhhh)がああいうことをやりはじめたというのに時期的にかぶっててさ。やっぱり変な音楽がとにかく好きなんだけど、テクノでこういう可能性を見出してしまったっていうかさ(笑)。“Andruic”とか、本当に大名曲だと思ってて。でも、この曲かけて1回どん引きされたことすごい憶えてるんだけど(笑)。
── わりと千葉とかだとアンセムじゃないですけど、無茶苦茶盛り上がる感じでしたよね。
NOBUそうそう、そうだったんだけど。そこではみんな立ち尽くしてた。ヴィラロボスはそういう意味ではアンセム的なの多いよね。このあとの“Enfants”もそうだし。すごいよね。
── 時間軸的には、これまで出たのに比べると最近のですね。
NOBUそうだね。
── ちなみにテクノとかハウスとの出会いは?
NOBUやっぱり90年代を通じて、遊びながらいろいろ憶えてきたっていう感じかな。やっぱりあのときドラムンベースとかもふくめていろんな音楽が出てきて、そのなかで遊んでで楽しみ方がわかって。
── その後、自分でDJをやりはじめて、自分の好きなスタイルに集中していったと。
NOBUそう、行き着いたと。
── そしていまのスタイルへの、その最後のダメ押しとしてヴィロボスがあると。
NOBU逆に、このひとがこういう作品出してなかったら、ここまでテクノが好きにならなかったかもしれない。そういう意味ではすごい出来事だよね、彼が登場したのは。
- MOSCOW DUB(2006)
- KILLER BONG
NOBU最後は『MOSCOW DUB』。いまの自分の生活って旅芸人みたいなもんじゃないですか。そのときのBGMとしていちばんしっくりきたんだよね。天気の良い日に東北道を〈フューチャー・テラー〉のハルカと車で走ってて、たまたまこれがかかって、すげーイイってなって。そういうツアー中のBGMとしてすごい良いんだよね。ヴィラロボスと同じとは言わないけど、K-BOMBが作った謎の四つ打ち感みたいなのあるじゃん。
── 絶妙なディープ・ハウス感ありますよね、とくにこのアルバムは。
NOBUでも、すごい聴きやすいというか、きれいというか。良いよね。
── 個人的な交流もあって、仲良いと思うんですけど、なにか一緒に作ったりしないんですか?
NOBUねぇ。やってみたいね。
── ちなみにちょっと話は変わりますが、日本のヒップホップとかは?
NOBUすごい聴くよ。今回10枚選ぶのに、MSCの漢の『導』とかも入れるかやっぱり迷ったもん。あれもすごい聴いた。D.Oとかもかっこいいし。それ「すごいわかる!」っことをラップしてくれるとジーンとしちゃう。
── 最後に4月2日のリリース・パーティですが。
NOBUもう、それはね、とにかく来てくださいって感じだよね。誰にも負ける気はないです。そんなに強気なことを言っちゃうくらいのすごいプレイをしたいです。
── 心の底から納得できる布陣を揃えるって、自分を追い込んでるって感じがひしひし伝わってきますね。
NOBU〈eleven〉のアニヴァーサリーから、東京でブック入れてない、そのぐらい4月2日に気合い入れてます。生き様をみせつけますよ、まじで。今回はやりますよ。
- 『ON』(MUSICMINE)
- DJ NOBU
昨年末にリリースされたDJ NOBUの最新ミックスCD。DJという表現手段を限界までに洗練させた意欲作にして、彼のそれまでの集大成と言えるだろう。そのプレイは、いま現在も行われているリリース・ツアーで、さらに進化し続けているはず。4月2日のパーティでどんな世界を見せるのか!
04.02.SAT
DJ NOBU MIX CD Release Party “ON”
Featuring
DJ NOBU (Special Exclusive “Open to Last” Set)
PA:ASADA (Air Lab)
LIGHTING:YAMACHANG (FLOWER OF LIFE/POW WOW/from OSAKA)
2F LIQUID LOFT
Featuring
Kurusu (FUTURE TERROR)
Haruka (FUTURE TERROR)
Shhhhh (SUNHOUSE/N.R.B.K.J/GRASSROOTSTRIBE)
IORI (GALAXY/Prologue/Phonica/from OKINAWA)
詳細はこちらへ
NOBUまずは狂人病。千葉で活躍していたハードコアバンド。当時、一緒に遊んでた先輩がこのバンドのヴォーカルで。音楽に人生を捧げてる人を初めて見て。その人は2002年に亡くなったんだけど。高校生のときは良く聴いていました。
── 音楽にどっぷりはまるきっかけだったと。
NOBUそうそう。
── 80年代末ぐらいっすか?
NOBU(時期的に)そうかな。ものすごく売れてはないと思うけど、シーンのなかではそれなりに人気のあるバンドだったと思う。自分が最初に出会ったハードコアだったから、その影響は計り知れないというか。いま聴いても聴けちゃうというか、この音源はきったない録音状態なんだけど、それも含めて。
── どこがガツンときました? 他の音楽にはない魅力というか。
NOBUやっぱりバンドの存在感そのものと、そんな人を今まで見たことなかったから。