Bo Ningen
出さない手紙が必要
Bo Ningenというバンドはロンドン在住の日本人4人組のバンドである。
アートスクールを通じて出会った彼らは即興性の高いパフォーマンスからスタートし徐々にその異形のサイケデリックの渦を形成していった。線の細さと長髪のビジュアルから放たれる轟音の音塊はダモ鈴木やfaustなど先人達も魅了し同時にヨーロッパやここ日本の若いリスナーも虜にしている。
今までに幾度かの日本ツアーも行っており、今年ついに日本盤もリリースされたばかりのアルバム「LIneThe Wall」を引っさげてツアーを行った後の彼らにインタビューを試みた。
当日急遽vocal/bassのtaigenが体調不良により不参加との事なのでyuki/koheiによるギタリスト2人によるセッションを敢行、普段ではなかなか聞き出せなそうな2人の深い思いをお届けしよう。
── 日本盤アルバムリリースおめでとうございます。
昨年シングルカットもされた曲「henkan」のPVを日本で撮影されたようですがそこからUK盤のリリース、今回の日本ツアーに至るまでの経緯を伺いたいのですが。
yukiアルバムレコーディング自体は終了していて、日本でのPV撮影後にUK盤が10月に出て1ヶ月くらいUKツアーをしていたんですけど、11月に1人で日本に帰って来た時に打ち合わせ等もしていて、その少し後にソニーからリリースする事が決まって。
── イギリス国内でのアルバムの反応はどうでしたか?
kohhei/yuki良かったよね、ちょっと…。
── 今までとは違いましたか?
kohhei今までだと、いわゆるサイケとかメタルの括られ方をされていたんだけどそこからは一段別のフェイズで受け止めてもらえたなっていうのはありましたね。
yukiそういう感じはあったよね。
── 日本でいうサイケデリックミュージックの場合、土臭かったりどっしゃりとした音のイメージになるけどline the wallには多層感があって音響的にも気を配られてますよね。後フィジカルの部分が凄い強調されていてダイレクトに入ってくる音の印象がありますが?
yuki言ったらもう爽やかさすらあると思っています。
kohheiそうですね。いわゆる日本のサイケではなくて、それ自体が悪いとかではないんですけど…。
yuki俺らがやる必要はなくて…。2013年だしね(笑)
kohhei日本だとどうしても初期のゆらゆら帝国とかのイメージで今も捉えられる事が多いんですけどそれは違うかなって….。違うんですよ(笑)
── せっかくギタリスト2人へのインタビューなので今回のアルバムやパフォーマンスとしての役割
などが気になるのですが。
yuki元々僕ら2人のギターの絡みっていうのがいわゆるリードとサイドギター的な所からスタートしていなくて。
kohhei始めたばかりの頃、ベースレスだった事もあってベースアンプからギターを出して下のラインを弾いていたんですけどtaigen(vocal/bass)がベースも弾くようになったので、押し上げられる感じでギターの音も高くなっていったんです。
yukiそこまでは決めきってないよね?
kohheiうん。もう少し決めてもいいかなと思うけど、今の時点ではかなりいいバランスで。
yuki自然体だよね。
── 以前のライブ等とも比べると音との距離感が変わったと思うんですけど、やはり意識されてますか?
kohheiかなりこだわりましたね。
yukiうん、前まではどちらかと言えばブツけてるというか。
kohhei音がギリギリまでデカい事がいいと思っていたんですよね、以前まででやりたかったのはking klimsonのEarthboundやそれこそ初期のゆらゆら帝国のようなぶつけ方を意識していたので。
yuki個人的には隙間の感じというか、どうギターを弾いて関わっていこうかというのがあってすごく細かい部分で言えばkohheiのギターの音やアタックの少し後から来る、ディレイのイメージなんです。埋めるだけではなく、音色以外でも前作では被っていた部分っていうのを今回はより切り離した感じで表現しましたね。
── Bo Ningenというバンドがも音の出方より状態に近づいているのでしょうか?
kohheitaigen自体、最初の頃は昔やっていたブラスバンド等からのファンクやジャズの影響があったんだけど今ベースが凄い冷たくなってきていて。
── 音数も減っていますよね。それは本人も口にするようにベースミュージックからの影響??
kohhei間違いなくそれは大きいと思います。一番大きかったのはdj scotch eggとの…….
yuki邂逅(笑)
kohhei最初彼(scotch egg)のライブを見た時、死ぬかと思うくらいベースがデカくて冷たく抑制されていたんですけどその中で鋭くなれる部分があると思うんです。televisionやvelvet under groundにもその美しさがありますよね。モノクロで固いイメージだったり。
── Line The Wallに関しても固い部分と柔らかい部分が存在していますが意識して作られているんでしょうか?
kohheinatsu no nioiで言えばあれは特殊な曲で。
yukiあの曲はtaigenのパーソナルな感情の比重が大きいです。文脈的にはそんなに意識はしていないけど、曲の雰囲気としてはある程度はありますね。
kohhei余りやり過ぎる事なくね。
── taigenの歌詞を取っても同じ言葉のループが多く曲を飛び越えて表れていたりもしますがアルバム全体としても1つの波形のような構造ですよね?
kohheiそういう統一感はありますね。それは海外からの影響かもしれません。日本でライブをすると感じるんですが、多少なりとも縛られている感じはします。技術は凄いあるけどスタイルを意識しすぎて音が大人しくなってしまっているのかなと思います。只、地方にツアーで行くと演奏は上手くなくともヤバいバンドがたくさんいましたね。(笑)
yuki南に行けば行くほどなんですよ、伝達のズレももちろんあると思うんですが。
kohhei沖縄がヤバかったですね。「おそるべき」っていうバンドなんですが形容が全くできない。演奏も下手なんだけどこれっぽいが全くなくて。
kohhei訳が分からな過ぎてめちゃくちゃ面白いっていう。
yuki影響が垣間見えない。。突然変異ですね(笑)
── Bo Ningenのライブを見た人達も同じ事を感じると思いますよ(笑)
yukiだったら嬉しいですよね。
kohhei全く知らない人にでもダイレクトに伝われば嬉しいですね。
yuki例えば、多少知識がある人だったらビジュアル含めて予想は出来ると思うんだけど
一方でフィルターがあるせいで構えてしまう部分もあるので。何もない状態でアピール出来るものが自分達にあればいいなと思います。
── サイケデリックという文脈でいえばここ何年かはUSの方が主流だったりしましたよね?特にanimal collective等がヒットしてからなんかは。
yuki幽玄な、ふわっとした感じですよね。
kohheiあの空気感はイギリスでは出せないと思います。UKの場合もっと突き詰める音が多い気がしますし。気候とか空気っていうのは必ず関係すると思うので、僕は元々画家志望だったんですがイギリスの空って夕焼けでもボヤっとしているんですよ。晴れた空の色って完全にターナー(イギリスロマン主義の画家)の情景で天気が悪いとニックドレイクの質感で。
それはやっぱりカリフォルニアに住んでいる人には出せないし逆もまた然りなんですが、僕らは日本人で生まれもバラバラな所から出てきてイギリスの湿っぽい所に突っ込んでいるので結果訳が分からなくなっている状態です。
yukiやっぱり突然変異なんじゃない??
一同(笑)