等身大のロマンスとピュアネス
彼らと出会ったのは3年前、youtubeで”Let’s Get Into Your Car”という楽曲のライヴ映像を観たのがきっかけだった。
人懐っこいギターサウンドに独特の楽曲構成/メロディー、ヴォーカルの圧倒的存在感とメンバーの出で立ち。
思春期にロックンロールリバイバルを体感した世代の私にとって、こんなにも当時の衝動と青春の煌きを蘇らせてくれるバンドは稀有だった。その頃はLeatherというバンド名で活動していて、僕は足繫く彼らのライヴに通う事になる。
のちに、Leatherの前に元々活動していた頃のDYGLという名に戻り、活動拠点をアメリカにも持つ様になる。アメリカと日本を行き来しながら、確実に説得力が増し逞しくなっていく姿に惹かれ続けた。
1stフルアルバムとなる今作”Say Goodbye to Memory Den”は、The StrokesのGt.でもあるAlbert Hammond Jr.氏とThe Strokes作品でプロデューサーとして携わるGus Oberg氏が共同プロデュースを務め、NYのレッドブルスタジオで制作された事でも話題を集めている。
私がVo.秋山君と初対面した際に、影響を受けた音楽について話の中でThe Strokesの名が挙がった事を覚えていたので、今作のサウンドプロデューサーの名を聞いた時にハッとさせられた。彼らは常に志があり、想像を形にしていけるのだ。サウンド面に関して、DYGLのステージでの空気や精神を表現するに最高の環境だったかもしれない。
今回、ここで私が注目したいのは歌詞である。如何せん英語が苦手な私は、彼らの和訳の歌詞を読んで衝撃を受けた。
冒頭の”Come Together”では、歌い出しから
[時間は過去には進まない/他の日を生きることはできない/俺はもう 古き良き時代なんてものにはうんざりしてる/道理にかなうだなんて 自殺する夢みたいだ](和訳)
と、ストレートな歌詞が刻まれている。先程書いたVo.秋山君との初対面の際、DYGLの音楽ジャンルに対し”パンク”という言葉で表してくれた事を思い出した。
あれから数年、バンドとして広いキャパシティーを持ちながらも、DYGLの本質にはパンクマインドが存在するのを再認識し、ある種のストレートエッジも感じられるのであった。
結成当初からの楽曲“All I Want”(以前は”All The Time”という曲名)での、
[いつでも 呼吸は嘘のようで/いつでも 光は消えゆこうとする/いつでも 自由はここにない/だから言うんだ 俺はただ/この世界にちょっとしたノイズを生みたいだけ](和訳)
というサビからは、社会に対するフラストレーションに向けて否定も肯定も含めて心を曝け出している様に思えた。
そして、今作ラストを飾る”I’ve Got to Say It’s True”では、
[世界はあまりに冷たすぎる/でも僕は凍るような空から太陽を見つけ出した/それは決して否定できない事実/それは喜びの痛み/本当に必要なものの全て]
と、純度たっぷりな愛の様子を歌う。楽曲を聴きながら歌詞を追い、溜息と共に涙がこぼれそうだった。
こんなにもピュアネスな表現で溢れるDYGLは、現代における若き等身大のロマンスを語るロックンロールバンドであり、かつどの時代・どの世代にも響く普遍的なサウンドを奏でていると思う。
これから秋にかけて、約半年間続く長いツアーが始まる。
この1枚で彼らの音楽に恋した方は、是非そのステージを目の当たりにして頂きたい。