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NEVER END ROLL

『NEVER END ROLL』

GEZAN

[label: 十三月の甲虫/2016]

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もっと“いのち”を燃やすように

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text by 山田 佳緒里

 GEZANの待望の新作は、“現体制での最後のライヴ”として迎えた夏休みの最終日、8月31日の代官山unitで急遽告知された(その日付けでドラムを担当していたシャーク安江はバンドから脱退)。そこから一ヶ月足らずでの発売となった3枚目のフル・アルバム。“天国で活動しているパンクバンドのGIGをラジオの電波が拾ってしまった”というあまりにもロマンチックで意味深いコンセプトの今作は、オリジナルメンバーでの最終録音盤として、ドラムの脱退が決まってから製作されたものだという。
 
 スピード感のあるリリースもあってか、バンドの空気感も含め真空パックされたこの音源には、ドキッとするくらい色も匂いも肌触りもある。
 一言で言えば『最高』以外の形容は思いつかない。
 
 GEZANはひたすらに嘘のないバンドだと思う。サウンドや感情の揺らぎがこんなにも美しく純度の高いままパッケージされているのは、メンバーの人間性や関係性が本当に色濃く反映されていて、その音楽が誰かの為にとか他の“誰か”を意識して作られたものでは決してないからだ。結束されたグルーヴとどこにも魂を売らないオルタナティヴな精神が、爆発の末にキラキラと光の粒のように輝き瞬き出して、激しく、時に優しく凛と響いている。完全燃焼で転がり続けるバンド・サウンドに、エモーショナルに抉られてしまう。
 そして相変わらずヴォーカル、マヒトゥ・ザ・ピーポーの泣いているのか笑っているのか、はたまた子供なのか大人なのか分からなくなるような“うた”は、もやもやとした名前の付けられないような感情や、動物的な直感や衝動、そういうものを呼び起こす。ループする毎日に慣れすぎて色々なことに鈍感になってしまっている私たちに警告を鳴らすように。

 誰の人生だって一度きりで、肉体や魂を隅々まで使い切って果たすことが命題としてあると思うのだけど、もっと“いのち”を燃やすように生きていきたい、そんなことを改めて思った。単純に言ったら、今日も頑張らなきゃ、みたいな前向きなマインドになれる、光の先を指し示すような作品だと思う。

 現在バンドは活動休止中だが、ラストに収められている『END ROLL』(名曲!)の《エンドロールに名前がなかった / だからぼくら / 旅をつづけなくちゃ》という言葉を信じて、『NEVER END ROLL』と名付けられた奇跡みたいなこのアルバムの続きに早く現場で立ち会いたい、と近い活動の再開と再会を期待している。

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◎バンドは現在ドラム募集中とのこと
http://gezan.net/2016/09/post-750/

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