FEATURE

世代的にはリアルタイムではないが、同じ女子としてその活動歴、存在に憧れずにはいられない嶺川貴子がこれまた現在ソロとしても躍進的に活動をするDustin Wongと運命的に出会い生み出されたのがこの”Tropical Circle”である。運命とは大げさに聞こえるかもしれないけれど、音を聴けばこの二人が出会うべくして出会ったと確信出来るはず。Ponytailとして活動している頃からDusin Wongのエクスペリメンタルで開放感のあるサウンドに魅了されてきたが、数台のギターペダルを駆使して作り上げるソロライブは目から鱗がこぼれ落ちるほどの驚きと喜びをもたらしてくれる面白さである。そして、嶺川貴子の女性ならではの大らかさと人肌の温度のような温かさがメカニカルなサウンドを血の通った人間らしいサウンドへと転換させている。跳ねる音と共に足取りが軽くなる”Bell Tree Dancers”に始まり、歌声のエコーと細かく刻まれるリズムが心臓の鼓動の様で、聴いているこちらの心拍数もあがりそうな”I Want Be With You”。時折嶺川貴子の声がオノヨーコと錯覚する箇所があり、現代にジョンとヨーコが曲を作ったのならばこんなサウンドになったのでは？と妄想をふくらませてくれる。このアルバムを象徴する曲となった”Party on a Floating Cake”の持つエネルギーは聴く者に沢山の驚きをもたらせてくれる素晴らしい楽曲である。目の前に広がる壮大なタペストリーの糸を一つ一つ手でたぐっていくような細やかさが神聖な気持ちにさせてくれる。嶺川貴子、Dustin Wong、二人の息がそっと重なっていく。それが音楽になっていく。私たちはそれを眺める事しか出来ないのだけれども、きっと飽く事無くCircle＝円、ループを追って愉しんでいくことだろう。そのループは熱を帯びてどんどんと大きくなっていき、二人、そして私たちをも包括していく。