たった1枚のアルバムが持つ伝説の正体
すでに地元マンチェスターで行われた再結成ライヴの評判も高く、今月末には待望の再結成ライヴをフジロックにて行うザ・ストーン・ローゼズ。本著は彼らの代表作であり、80年代末のマンチェスター・シーン、いや80年代末のUKのロック・シーンから生まれた最高傑作とも言われる1989年リリースのファースト・アルバム『ザ・ストーン・ローゼズ』を丁寧に解説し、そのバンドの本質をむき出しにした著作だ。著書は本コーナーでもおなじみの久保憲司、そして『クッキーシーン』主宰の伊藤英嗣。
メインとなる『ザ・ストーン・ローゼズ』の各楽曲の解説では、音楽性はもちろんのこと、背景、歌詞の意味やその引用元などが実に見事に語られている。いわばライナーノーツの拡大版。恥ずかしながら、はじめて接する事実も多い。すぐにアルバムを聴き直したくなってしまう。それは『ザ・ストーン・ローゼズ』というアルバムを歴史的名盤へと押し上げたエネルギーの解明である。そのエネルギーとは、時代背景やさまざまな価値観、平たく言うとそれを生み出すに至った背後に潜むカルチャーの部分だ。本著を読み、この1枚のアルバムを取り巻くカルチャーを理解することで、『ザ・ストーン・ローゼズ』は新たな輝きを放ちはじめる。
『ザ・ストーン・ローゼズ』の各楽曲解説以外では、セカンド・アルバムや主要シングル曲の解説、そしてアルバム以前のシングルでプロデュースを手がけたピーター・フック(元ニュー・オーダー、ジョイ・ディヴィジョン)、小山田圭吾、石野卓球などのインタヴュー、ヒダカトオルとカジヒデキの対談なども収録。
フジロックにて彼らを観るという方はぜひとも読んでいただきたい!