FEATURE

REVIEW

WIRE TRAX 1999-2012

『WIRE TRAX 1999-2012』

石野卓球

[label: KI/OON MUSIC/2012]

Amazon

WIREの14年、石野卓球の14年

twitter facebook

文:河村祐介

今年も8月25日(土)に開催が決定している〈WIRE12〉。毎年恒例の〈WIRE〉コンピの前に、主宰石野卓球が、そのコンピにこれまで提供してきた楽曲+αで〈WIRE〉関連の楽曲をまとめた編集盤がリリースされた。2枚組のヴォリュームで、ディスク1は昨年までのコンピ収録曲、そしてディスク2はテレビ・スポットなどで使われたAd音源集(ジングル的なやつですね)+関連した未発表曲楽曲を収録。日々栄枯盛衰を繰り返し、サウンドの色というものが絶えず変化するテクノ・シーン。そのなかでDJとしても活動する石野卓球のサウンドは、勿論その度に絶妙なグラデーションを描きながら変化し続けている。それが14年ともなればまったく違うのだろう……と、思って聴いてみたのだが、意外や意外、もちろんBPMの上下の違いなどはあれど、その音に対する趣向というか土台となっている部分は驚くほど一貫している。それをグルーヴや雰囲気と言ってしまえば簡単だが、やはり音を取り巻く独自の感覚は石野卓球の音だ(当たり前か)。逆に言えば、その基礎の部分を変えずに時代ごとに展開していく音の定点観測の面白さというのも本作の聴き所でもある。また未発表音源とともにディスク2のAd集も面白い。こちらは楽曲というよりも効果音に近いのだが、〈WIRE〉の会場の雰囲気を想像して作られたというサウンドは、作家性というよりも、彼の“音の趣向”やギミック的なアイディアのみで作られていて、ある意味で作品となる前の草稿集を読んでいるようで面白い。

RECENT REVIEW

REVIEW TOP

RECENT REVIEW

REVIEW TOP