力強く響く311以降のこの国のレゲエのかたち
もはや元ドライ&ヘビーという言葉も彼女を語る上では有効ではないだろう。それだけ、すでにひとりのレゲエ・シンガーとして、その精力的な活動で足場を固めている現在においては。前作『mairation』から2年半ぶりの新作アルバムが到着。この2年半の彼女は、活発なライヴ活動はもちろんのこと、311以降は、そこに、津波で壊滅的な被害を受けた、故郷、岩手県宮古市の漁港のために立ち上げた“Love Boat基金”などの被災地支援の活動、そして脱原発デモでもその姿を頻繁に見かけることができる。そのなかで編まれた、まさに地に足についた力強い音と言葉がこのアルバムには溢れている。偉大なるルーツ・レゲエのシンガーたちの魂を足場に、いまこの時代において、この国で生きるという立ち位置で奏でる”ルーツ・レゲエ“。それが自らの言葉と音で展開されている。とはいえ、強烈なワンドロップ・ダブの反原発ソング“Just ONE LOVE is all”のようなメッセージ・ソングもあれば、レゲエの楽しさを歌った“ダンスガスンダ”、郷愁を感じるラヴァーズ“One More Kiss“まで幅広い。プロテストも日々の楽しさも、その幅が生きることのリアルでもあると、このアルバムは教えてくれている。演奏のほとんどはLikkle Mai Bandを中心としたルーツ・バンド・サウンド、それを内田直之がミックス。“Open Your Eyes”ではキング・タビーの門下生、サイエンティストがミキシング。レゲエ好きならピンと来る、重さとグルーヴを兼ね備えた、あの音だ。大塚製薬ポカリスエットのCM曲として使われた先行配信シングル「The Life Is Simple And Beautiful」ももちろん収録。