“石を投げるより、フレンチ・キッスをするよ。それが俺が見つけた方法”
クッキー・シーンの伊藤英嗣さんとストーン・ローゼズの名盤『ストーン・ローゼズ』を解説した本、『ザ・ストーン・ローゼズ ロックを変えた一枚のアルバム』を7月6日に出します。ストーン・ローゼズのアルバムを初めて真剣に歌詞などもチェックしたんですが、セックス・ピストルズのデビュー・アルバムに匹敵するくらい凄い革命のアルバムなんでびっくりしました。
革命といっても、音が革命とかじゃなく、本当に革命を求めていたアルバムなんだというのに、びっくりしたのです。
みなさん、なんであのジャケットにレモンとフレンチの国旗の色が描かれているか知ってますか? あのレモンはフランスの5月革命の時、若者たちが催涙ガスの痛みをやわらげる為にレモンを絞って飲んでいたという話を、ヴォーカルのイアン・ブラウンがフランスでヒッチハイクをしていた時、乗せてくれたオッサンが5月革命に参加していたオッサンで、その人からその話を聞いて、それに触発されたギターのジョン・スクワイアが作った作品なんです。作品のタイトルは「バイ・バイ・バッドマン」と言うんですが、アルバムに入っている曲と同じタイトルです。
「バイ・バイ・バッドマン」は、そのオッサンの話をイアンが歌っているんです。
出だしの”Soak me to my skin “”Choke me smoke the air “という名フレーズは催涙ガスにむせる姿を歌っているのです。かっこいいですよね。そんな悲惨な状況の中、革命の為に石を投げる若者たちにリスペクトを込めながら、イアンは「石を投げることはいいことなのだろうか?」と自答するのです。そして彼が選んだ答えは
I’ve got bad intention
I intend to Knock you down
These stones I throw
Oh these french kisses
Are the only way I’ve found
「石を投げるより、フレンチ・キッスをするよ。それが俺が見つけた方法」
イアンは石を投げるよりも、音楽で世の中を変えるよと決意するんです。石よりも薔薇だと。
ストーン・ローゼズの誕生です。
凄いじゃないですか、彼は石を投げていたオッサンに愛情を込めて、「バイ、バイ、悪い奴」と別れをつげます。
ストーン・ローゼズの歌には、こうした革命、世の中を変えたいという思いの歌が満載です。それはボブ・ディランの“ミスター・タンブリマン”、セックス・ピストルズの“アナーキー・イン・ザ・UK”、クラッシュの“ホワイト・ライオット”と同じようなことを歌っています。
80年代の終わりに、こんなにもまだ世の中を変えたいと思っていた若者がいたという事にびっくりです。その凄さっていうのはマニック・ストリート・プリーチャーズにも引き継がれていたんだなと思います。ストーン・ローゼズのアルバムに影響されていたから、ギターと作詞をやっていたリッチーは自分たちの決意がどれだけ本当かというのを見せるために、腕にカミソリでリアルと刻み込んだ事件の意味も分かりました。
再結成で何万枚のチケットを売り切るのよく分かりますよ。
凄いアルバムだったんだなと、しっかりきいて初めて理解しました。
本にはこういうことを書いているので、よかったら読んでみてください。
音だけでもかっこいいすよ。