ザ・ヒューマン・リーグから分裂したシンセ・ポップ・バンド
当時、ザ・ヒューマン・リーグが分裂して、生まれたのがヘヴン17。バンド名は映画『時計仕掛けのオレンジ』に出て来たバンド名、かっこいいよね。
ヘブン17がかっこいいのはそれだけじゃなく、ブリテッシュ・エレクトリック・ファウンディション、略してBEFというプロダクション・チームを作るところ。
BEFはティナ・ターナーやゲイリー・グリッターなどの大物シンガーでむちゃくちゃポップでダンサブルなアルバムを作るんですよ。やることなすことすべてかっこよかったです。
そして、ヘヴン17のアルバムはむちゃくちゃエレクトロでビートがきいていてヤバかった。1曲目“(We Don’t Need This) Fascist Groove Thang”、こんなハードなダンス・ミュージックが1981年に作られていたなんて衝撃でしかありません。人種差別とファシズムを攻撃する歌詞とか、ヤバいでしょう。
これでヘヴン17がポップで、ザ・ヒューマン・リーグがニュー・ウェイヴなダークな面をやっていくのかと思ったんですが、ザ・ヒューマン・リーグはヘヴン17を越えるポップなバンドとなっていくというのも凄かったです。
ヘブン17はビッグ・ヒットした“Temptation”“Let Me Go”が入っているセカンド『The Luxury Gap』かもしれませんが、衝撃のデビュー・アルバム『Penthouse and Pavement』ですね。むちゃくちゃ上手いベースとギターを入れて、あのチープなザ・ヒューマン・リーグ・サウンドをここまで昇華させたヘヴン17のプロダクション力には脱帽です。
でも、もっと脱帽するのは残ったザ・ヒューマン・リーグのほうなのかもしれませんが、ライヴァルがそういうことをするなら「俺たちはチープにこだわるぜ」と、ウエイトレスをやっていた素人のオネーチャンをコーラスに迎え、ヘヴン17を越える大ヒット・ナンバー”Don’t You Want Me”を作ったんですから、この時期のイギリスの音楽は本当に面白かったです。