元祖負け犬か? いやこれが現実だ
ウルトラボックスやシンプル・マインズのアイデアというのは、ズレたとはいえ、最終的には大衆に受け入れられ、ヒットした。
最後まで受け入れられなかったのが、この人たち、バズコックスと袂を分けたハワード・ディヴォートのマガシンです。
なぜ袂を分かち合いたかったかというと、ハワード・ディヴォートは構造主義を押し進めたかったんでしょう。バズコックスのハワード・ディヴォートの最後の曲と、マガジンの最初のシングルは「Shot by Both Sides」、要するに世の中は2者択一じゃないぞ、この野郎ということだったんだと思います。
“Parede”の”Sometimes i forget that we’re supposed to be in love. Sometimes i forget my position”
ということです。
そして、このアルバムじゃないですが、サード・アルバム『ザ・コレクト・ユーズ・オブ・ソープ』(正しい石けんの使い方って、どんなアルバム・タイトルだ)の「ア・ソング・フロム・アンダー・ザ・フロアーボードズ」。ここまで敗者ということの素晴らしさを誇らしげに歌った歌があるでしょうか。
これこそが、ベック、ニルヴァーナ、レディオヘッドのルーツなのです。
“俺は怒っている。俺は病気、俺は罪深いほどブサイク。
俺のイライラは健全な証拠。
俺は人生の意味を知っている。でも、それがどうした。
美しいことも、いい事も分かっている、
この歌は床下からの歌。
この歌は壁穴からの歌。
俺は虫さ。
それを誇りに思っている。”
いや、この曲は何回聴いてもいいですね。パンクという理想に燃えてたとき、僕はこれらマガジンの曲を聴いて、冷静になることの重要さを味わっていた。それがバランスだったのだ。
このアルバム・タイトルも『リアル・ライフ』である。
こんな負け犬の歌が売れるわけないですよね。でも、それから10年経ったら、こういう歌が売れるようになったんです。みんな現実に気づいたということなんです。
音もいいんで、みなさん、マガジン聴いてください。ファンキーな曲もありますよ。ザ・ストーン・ローゼズもレディオヘッドも、プロデューサーにジョン・レッキーを頼んだのは、ジョン・レッキーがマガジンをプロデュースしてたからです。
負け犬なんて書いちゃったけど、ハワード・デヴォードは虚無をもて遊んでんじゃないですよ。現実をちゃんと見ろと言っているんです。そして、そこから行動しろと言っているんです。あのライヴでの見開いた目はまさにそうなんです。まさにパンクです。