The Ordinary Boys
『オーヴァー・ザ・カウンター・カルチャー』のスペシャルズのカヴァー「リトル・ビッチ」を聞けば誰もがオーディナリー・ボーイズが本物のバンドだという ことに気づくだろう。スペシャルズのあの精神を今の子が再現出来るなんて誰が思っただろう。彼らが本物かどうかなんてモリッシー、ポール・ウェラーからの 熱いラブ・コールで分かることなんだけど。でもどうもセカンド『ブラスバウンド』は本国イギリスでは不調みたいだ。若者の右に行こうか左に行こうかという さ細な悩みまで見事に歌にした『ブラスバウンド』は本当に名作なのに残念だーー!、ムカつく。ぼくがムカついても仕方がないか、ヴォーカル・ ギターのプレストンは冷静でした。
── ポール・ウェラーとのツアーはどうですか?
「いつものぼくたちのライブだと、ダイブやモッシュがあったりするから、静かなオーディエンスの前で演奏するのは変な感じだけど、いつもポール・ウェラーがステージ袖で見てくれていて、うれしいんだ」
── けっこういいオヤジですね。でもポール先生今のイギリスの若手ロック・バンドが本当に好きみたいですね。あなた達からいいアイデアをパクろうとしているんじゃないですか?
「ハッハッハッ、そんなことは絶対にないと思うよ」
── もう一人のあなたのスター元スペシャルズのテリー・ホールとも共演しましたね。彼は変わってませんか?
「えらく、昔の話だな、1年以上も前の話だよ。そりゃもちろん感動したよ。変わってる? そんなことなかったよ、とても礼儀正しいいい人だったよ」
── レイ・ディヴィスには会いました?
「会いたいと思ってるんだけどまだ会ったことないんだ。コンサートには何回か行っているんだけど、恐れ多くってね」
── モリッシーは?
「もう7、8回会ってるかな」
── そうでした、あなたたちがモリッシーと今のシーンの一番最初の橋渡しでしたよね。バズコックスのピート・シェリーには会いました?
「会ったんだけど、周りにたくさん人がいてあまり話せなかったのが残念だね」
── なぜ今のイギリスの若手のバンドはオリジナル・パンクにひかれるのでしょう?
「パンクが生まれたサッチャー時代と今のトニー・ブレア時代が似ているからじゃないかな、こういう時はストレートにものを表現する方がリアルなんだよ、そうする必要があるんだ」
── でもあなたたちは元々もっと過激なブラック・フラッグなどのアメリカのハードコア・パンク・バンドに傾倒していたのに、どうして英国的なサウンドに変わっていったのでしょう?
「ぼくにとって、パンクもハードコアもスカも全て同じ音楽なんだ、それらはぼくにとって全て同じソウル・ミュージックなんだ。だからぼくらは違った音楽をやっているつもりはないんだ」
── デビュー作『オーヴァー・ザ・カウンター・カルチャー』がストレートな表現方法だったとしたら、セカンド・アルバム『ブラスバウンド』はより複雑な表現方法へと変化してますね。
「バンドも成長しているけど、それ以上にぼくのボキャブラリーが増えたからだと思うよ。それによって色々な表現が出来るようになったんだ」
── 『ブラスバウンド』は近年まれにみる名アルバムなのにイギリスでは酷評されていて残念ですね。
「う ん、でもあんなに酷く書いたのはNMEぐらいかな。しかし、ほとんどのレビューが『ブラスバウンド』という作品自体をどうなのかと評価してくれず、オー ディナリー・ボーイズがどうのこうのというレビューだったのには腹が立ったね。もうイギリスのプレスは信用していないんだ。だから『ブラスバウンド』に関 するインタビューはイギリスでは1本しかしていない。自分たちのホームページでファンやサポートしてくれる人たちと直接話せる、自分たちがどう思っている かも知らせることが出来るんなら、メディアというフィルターみたいな存在は別にいらないかなと思っているんだ」
── まさにブラッグ・フラッグなストレート・エッジな考えかたですね。
「うん。でもメディアも始めは『ブラスバウンド』を酷評していたけど、あれはいいアルバムだという声も聞こえ出してきてるんだ、おかしいよね。次のアルバムでは確実に何かが変わりそうな予感がしているんだ」
── 安心しました。セカンドが出来たばかりなのに15曲も新曲が出来たという噂を聞いて『ブラスバウンド』の酷評ぶりに腹を立てた怒りで次のアルバムに取りかかるんじゃないかと思ってたんです。
「ハッハッ、そんなことするわけないだろ。あの15曲は絞って6曲になったよ」
── でも6曲もあれば次のアルバムの方向性が見えているんじゃないですか?
「カイザー・チーフスみたいにするんだ」
── エッ?
「嘘だよ。次のアルバムがどうなるかなんて、考えてないよ。自分たちの日常を歌にして いくだけだから。次のアルバムをどうするとか考えるなんて、そんなこと考えるなら、ぼくは銀行で働いているよ。そういうことを考えるのがビジネスマンだ ろ。ぼくはビジネスマンになりたくって、バンドをやっているんじゃないから」
── カイザー・チーフスはオーディナリー・ボーイズがいなければ今の自分たちはなかった、だから早くオーディナリー・ボーイズがぼくたちを蹴飛ばしてくれと言ってましたよ。
「そんなこと言ってくれてるのか(ちょっと感動しているよう)」
── 同じ事務所なのに全然喋ってないんですか?
「両バンドともいつもツアーに出ているからな、会ったりできないんだ。2回一緒にイギリス・ツアーをしたんだけど」
── そうですか、日本でのライブを楽しみにしてます。
「日本は始めからぼくたちのことをずっとサポートしてきてくれたし、サマーソニックでは大きなベースボール・スタジアムでやらしてもらって、ロビー・ウィリアムスの気分を味会わしてもらったりと、日本ではいつも何かが起こるから楽しみなんだ」