DJ NORI
リキッドルームによるレーベル=リキッド・レコーディングスの新たなるシリーズが始動する。そのシリーズとは、リキッドルームの2階にオープンした新たな るラウンジスペース「リキッド・ロフト」をモチーフにしたミックスCDシリーズ「リキッド・ロフト・ミックス」のことである。記念すべき第一弾となる今作 でDJを務めるのは、20年以上に及ぶキャリアを持ち、現在に至るまで常にシーンのトップで活躍しているDJ NORI氏 。これまでにコンピレーションCDの選曲をおこなっている彼だが、実は長いキャリアの中でミックスCDを発表するには初のことである。DJ ハーヴィーによるバンド、マップ・オブ・アフリカの未発表曲から始まり、テクノ〜ハウスへと流れ、アーメ、チャールズ・ウェブスターのヒット作から多幸感 溢れるヴォーカル・チューン、更にはクラシックスへと流れて行く。独自の“空気感”を生み出す術(すべ)、それは長いキャリアによって裏付けされたもので あり、本作は彼ならではのミックスを堪能できる1枚に仕上がっている。今作について、そして今作が作られた経緯などを、担当ディレクターであるサウンドス ケープの本田氏も同席のもと、DJ NORI氏に話を訊くことにした。
── NORIさんによるコンピは今までに2枚ありましたけど、ミックスCDは初めてですよね。それって特別なことだと思うんですよ。
「そうですね。」
── これまでにもミックスCDのオファーはあっただろうし、それを敢えて今回のタイミングで出したのは?
「こういう話がきて純粋にやってみたいと思ったし、ちょうどミックスCDをやりたいなと思ってたんですよ。タイミングが合ったというのはありますね。」
── 関わっているスタッフとの関係もあるのかな?って。全然知らない人が急に“ノリさん、ミックスCDやりませんか?”と言ってきてもやらないと思うんで。
「それはやんないと思うなー。俺、友達にテープ頼まれてもあんまり渡さないからね。」
── で、リキッドルームのレーベル、リキッド・レコーディングスの新たなシリーズであり、リキッドルーム2階にオープンした新しいスペース「リキッド・ロフト」をモチーフにしたミックスCDの第1弾ということだったこともやった理由だと思ったんですよ。
「そうそう、それはすごくある。」
── その具体的な理由は?
「それはこれまでの付き合いがあって。リキッドのスタッフとの個人的な付き合いや、サウンドスケープのスタッフとの付き合いもある。信用してる部分がすごくあるんで。だから、“やりましょう!”とOKして。(ミックスCDが出来るまで)すごく時間がかかったんだけど、やっと出来上がったという感じですね。ただ光栄ですよ、こういうCDやらせていただいて。ラウンジだから本当はもっとね、ユルい感じのほうがよかったかもしれないけど、ちょっとダンスな感じになっちゃって。でも、聴いててスムーズになってるからイイかなって。」
── なるほど。話を聞いてると、スタッフの心意気とのシンクロしてこのCDが生まれた感じなんですね。
「そうそう、ほんとそうですよね。実際(今回のミックスCDに収録されている)このセットをリキッド・ロフトでかけたりして試してみたし。それで手応えを感じたりもしたんで。」
── 具体的なコンセプトやイメージ、方向性をあらかじめ決めて動きだしたわけではないんですね。
サウンドスケープ/本田:「そうですね、そうだったかな。(笑)とにかく、リキッド・ロフトで何回も(選曲や曲順を)試してもらいましたね、フィーリングを掴むために。そこが一番強かったかな。そこでやってる時に、予期せぬお客さんが入ってる時があったり、ダニエル(・ワン)さんが来たり。その周りの友達とかも来て、最後の曲で滅茶苦茶盛り上がってて。(笑)だからラウンジというよりは、その場で出来るその場の空気感というか。」
── その“空気感”というのが今回のキーワードになってるかな?と思いますしね。う〜ん、空気感と言っても色々あると思うけど、その中でもグッド・ヴァイブレーションというか、多幸感というかをすごく感じて。踊って感じるというよりは、座って聴いててイイね、みたいな感じで。音楽好きの人が作ったものというのが伝わればイイかなと思ってるのかな?とも。で、作る過程は大変だったかもだけど、目的というか着地点は見えてたからそういう意味ではやりやすかったんだろうな、とも。
「ほんと、そうですよ。」
サウンドスケープ/本田:「ほんとやらせてもらえて、良かったですよ。(DJとしての技術が)激しくスクラッチするとかじゃないから、一般の人にはこういう技術は伝わりづらい部分があるのかもしれないけど…。でも、このミックスCDの持つ空気感が伝わってもらえたらいいと思うし。やっぱりこの空気感は誰でも出せるものじゃないし、やっぱり(ミックスでこの空気感が出せるのは、DJとして)スゴい技術だと思うから。」
「そうそう、音もマスタリングしてバッチリなんでね。」
サウンドスケープ/本田:「(マスタリングの)スタジオでミックスしたんだけど、普通そこまではやらないから。ものすごい高価な機材とかも使ったし、普通のミックスCDよりも凝ってる。見えないところかもしれないけど、ものすごく気を使ったんですよ。」
── じゃあ、このCDとリキッド・ロフトとの関係は?
サウンドスケープ/本田:「シリーズ化していくから、この次に出ていただくDJのかたとも紆余曲折しながら作っていくと思う。(ミックスの)ベイシックを作ってあそこで(=リキッド・ロフト)DJして、感触を掴むという作業。そうやっていくうちに、リキッド・ロフトの雰囲気が作られていくと思うから、今どうこうしたいというのではないんじゃないかな。」
「そうだよね。(場の雰囲気は)DJだけじゃなくて、お客さんにも作られるものだとも思うしね。」