勝手にしやがれ/The Birthday
勝手にしやがれ結成十周年を受けて企画されたマンスリー対バンライブ「LET’S GET LOST」 Vol.3のゲストは『ロミオ』でゲストボーカルとして共演したチバユウスケ含むThe Birthday。
先攻The Birthdayでは『stupid』でのボーカルの重力の強さが印象的。逸り気味に吐き出される言葉が演奏を引っ張り音を纏めあげ、まさに「The Birthday」という音像を描き出す。デビュー曲として 馴染みのあるこの曲の魅力を今更ながら思い知らされる。後半に続いたハードなナンバーをカームダウンさせる『ハレルヤ』。この曲を聴く度にバンド、特にチ バの充実感を喜ばずにはいられない。歩を止めるように静かに終わる筈のラストに、ライブでは再度駆け出すような軽快で瑞々しい音が加えられる。立ち止まっ たまま静かに終われない様が生まれたてのバンドを反映しているかのようで微笑ましい。
楽器を携えて登場した瞬間からその背中に独自の世界観を滲ませる後攻、勝手にしやがれ。序盤で印象的だったのは『チュニジアの夜』を彩るネオンの様 なKey.ソロ。景色・心情どちらかではなく両者を「情景」として描き出す雄弁さ。楽器の音色に聞き惚れているところにまざまざと突きつけられる Ds.&Vo.武藤のボーカル。音に重ねられた言葉が一層生々しく人間、特に男の背負う泥臭さを剥き出しにしていく。そんなボーカルの哀愁が際 立ったのが『ロミオ』『フィラメント』という終盤の流れ。現実の俗っぽさ、下らなさを引きずってこそ輝く刹那の美しさを艶やかに嗄れた声が十二分に歌い上 げていく。しかし哀愁という感情の重みだけでは終わらない。それまでの物語を一笑してしまう男の余裕・軽やかさを覗かせる『Z28』を最後に残して今宵の ステージは幕を閉じた。
浅井健一をゲストに迎えたvol.4@CLUB QUATTROの後にはLIQUIDROOMでのvol.5が決定している。色は違えど叙情的な世界観が売りの椿屋四重奏の演舞との競演、こちらも非常に楽しみである。