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髭(HiGE)

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「Acoustic」をモチーフにロング・リメイクした新曲『Electric』はCD一枚一曲40分!つきましては一夜限りの再現ライブ=リリース・パーティを開催!
このニュースを聞いた時、それはもう驚いた。髭ちゃんといえば奔放なパフォーマンスが魅力的なバンドである、が、にしても一曲40分、しかも、あの曲を。
というのも、ARABAKI ROCK FEST.08で髭(HiGE)を見た時にいきなりの「Acoustic」のロングセットに驚いた記憶がすぐさま思い出されたからだ。前年の ARABAKIでは拡声器片手に騒ぎながら舞台袖ではなくステージの横から登場した記憶があったので今年はどんなかな、と思いきや至って普通にステージに登場。勝手な期待を持っていたので何となく拍子抜けしつつ、一曲目は、と次の期待でもってステージを見つめていると聞き覚えのあるあのフレーズ。「このメッセージ聞こえるかい」おぉ『Acoustic』か、と聴いていると、コレがどうやらあの『Acoustic』では無い。SEのようなスタンスで演奏されているのか、はたまた過剰にライブアレンジが加えられているだけなのか。思いながら聴いているとそんな予想もどこ吹く風。いつものハイテンションを感じさせないぐらいにじんわりと低く強く、『Acoustic』はいつもとは違う音色を纏っていつまでもいつまでも広がっていった。その間およそ15分ぐらいだったか。この間に「自分の知っている髭(HiGE)」にお目見えできなかった、と判断してしまった人はステージを見守る大勢の間を縫って別のステージへと向かったようだった。中には髭のバンドTを着ている人も見かけた気がする。
生粋の髭リスナーをも戸惑わせたあの曲。リリースの知らせで『Electric』という別の、新しい形の曲であると知った時には一曲40分という提示の仕方に期待すると共に「でも、正直どうなんだろう」とも思ってしまった。ARABAKIで『Electric』の片鱗を一足先に覗けたことを喜びつつも、どんなCDになるのだろう、しかも再現だなんて。いつものようなライブを期待しているファンにぶつけられるでもなく、押し付けるでもなく、ただひらりと言葉少なに披露された「あの曲」を新譜として、皆はどのように受け止めるのだろう。結果、『Electric』の再現は、めちゃくちゃ良かった。
ライブの内容が再現、と知らされている上での期待を寄せたファンがひしめくフロアが暗くなる、とステージ上にはスーツ姿のウサギことDJのMr.シラフが登場、彼がパソコンを弄ると囁くような「このメッセージ聞こえるかい」とのフレーズが何度も何度も繰り返される。『Acoustic』の肝にして「このメッセージ」が指すであろうこのフレーズ。に、重なるキックの静かな音。何の仰々しさも無く「122bars」が始まった。薄暗く青く照らされたステージにメンバーが登場。今回は再現に当たってそれぞれに担当楽器だけでなくキーボード、シンセのような機械を弄ったり前へ出てボンゴを演奏してみたり、後ろへ下がって鈴を鳴らしたり、と様々なパートを支えながら『Electric』を紡いでいった。
須藤がマイクを手に持ち、いつものように腰を揺らしあちこちを指し踊りながら歌いだす「204bars」。コーラスが重なり、更に重なり声を幾層にも重ねられた上に、ポツリポツリとしゃべるような「このメッセージ聞こえるかい」、そして歌詞が一層言葉を引き立たせる「94bars」。ボンゴの素っ頓狂な音が繰り返され、キラキラとした奥行きがすっきりと取り払われた後に、メロディでもなく、フレーズともつかない『音』が添えられる「98bars」。先程までのスペーシーな空気は消え去って、いっそプリミティブな景色が見えるような。緑色の照明の中で、打ち込みのドラムに合わせるように、須藤が踊るようにドラムパッドを叩けば歌詞のあれこれが飛び出たり掻き消されたり、「174bars」。全編に渡り繰り返しの要素が多く、更に落とし気味な照明が意識を音へ音へと集中させてはサイケデリックな空間の中でフロアの観客は思い思いに『Electric』に浸っているようだった。フロアは完全に一つの演奏に支配された空間として、しかし各人がそれぞれに楽しみながらステージと対峙できるような。しかし、それらがより強く一つに結びついたのを「280bars」の始まりに感じた。
斉藤のギターが、何度とも無く登場してはいるが「Acoustic」を支えるあのフレーズを奏でれば舞台上のミラーボールが回転。ステージ、そしてフロアの奥までも照らし出し、ステージ上の須藤はペットボトルの水を光にかざす様に振ったり、水を手に出しては飛沫を反射させるように高く高く水を放った。後ろでは「このメッセージ聞こえるかい」との囁き、いつまでも繰り返されるギターフレーズ、不器用なメロディの口笛、シャンシャンと軽やかなシンバルにキーボードがちいさい旋律を重ねる。パフォーマンスでも演奏でもなく、ただあたたかく柔らかい音がどこまでも広がってフロアを純粋な音色で満たしては、自分の体にじんわりとキラキラとした音が沁みていくのを感じながら没頭した。一定して曲を彩り続けたギターが消えれば『Electric』はライブ冒頭へと戻るように、最後の最後まで囁かれた「このメッセージ」という須藤の言葉を耳に残しつつ、再現ライブは終了した。再現への好奇心などどこへやら、単純に与えられる音に没頭し、体を揺らしたフロアの惜しみない拍手に包まれつつ、終了。
再現、とはいえちょっと物足りない、と言いたげなフロアに「10分間の休憩を挟みます」とのアナウンス。安心して仕切り直しをしたところで第二部のスタート!金太郎姿の須藤が「みんなの大好きな曲をやるよ」と言って演奏された必殺アップテンポに続き「古い古い、本当に昔の曲」と紹介されたインディーズ時代の名曲をスローにアレンジした「サマータイムブルース」。本編終盤でもこれでもかとフロアを盛り上げ「今日は7月16日。僕らが初めて出会った日。たくさんの人が死んで、生まれた日。僕らが出会ったのはそんな一日でした」とのMCを挟む「ダーティーな世界」でライブは終了。
新曲「夢でサヨナラ」を披露したボリュームたっぷりのアンコールに覚めやらぬフロアの喝采に呼び戻されて、再度登場した面々。須藤は「今日が今までで一番!本当に、みんな本当にありがとう!」と何度も繰り返し、急遽のダブルアンコールならではのちょっとしたご愛嬌も見せつつ「ハートのキング」を歌い上げて髭(HiGE)はステージを去った。
「再現ライブ」ということで『Electric』に期待が集まるのも勿論だが、相変わらずの髭ちゃんの魅力満載第二部と共に実に素敵なリリースパーティの一夜となった。40分丸まる再現、は難しいだろうが今後も是非とも『Electric』の魅力に酔わせて欲しい、と願いつつ髭ちゃんの今後に期待!!

第1部
01 Electric
第2部
02 ロックンロールと五人の囚人
03 ハリキリ坊やのブリティッシュ・ジョーク
04 ギルティーは罪な奴
05 サマータイム・ブルース
06 ブラッディ・マリー、気をつけろ!
07 黒にそめろ
08 溺れる猿が藁をもつかむ
09 ダーティーな世界(Put your head)
en.1
10 寄生虫×ベイビー×ゴー!
11 夢でさよなら(新曲)
12 Mr.アメリカ
en.2
13 ハートのキング

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