SAKEROCK
ジョイ・オブ・ミュージック・フォー・ユア・ライフ!
やっぱりサケロックのやることって面白い! 待ってましたのサケロック企画、『げんざいのぐうぜん』。今回はoutside yoshino、group_inou、Sunshine Love Steel Orchestraというそれぞれジャンル、タイプのまったく違うゲストを招いての開催である。転換中のDJを務めたのはYOUR SONG IS GOODのサイトウ”JxJx”ジュン。
まず最初にこのイヴェントの口火を切ったのはoutside yoshino。これはイースタン・ユースの吉野寿のソロ名義であり、弾き語りである。弾き語りと言っても、エレキ・ギターによる轟音弾き語り。照明は豆電球ひとつだけと、まるで四畳半の古アパートの一室の様な雰囲気である。これでもかと歪んだギターに乗せて吐き出される剥き出しの言葉たちは、酷くシンプルで荒々しく、ストレートに響く。何度もぐっと胸につまされる。ラストにはサケロック星野源がアコースティックギターを携えて登場し、吉野と共に1曲披露した。星野の奏でるギターに合わせてふたりで唄う。この曲ばかりはがらりと雰囲気が変わり、じんわりと温かい、これまた素敵な演奏であった。
お次はトラック担当のimaiとMCのcpによるエレクトロ・ヒップホップ・ユニット、group_inouである。この日のgroup_inouは、ひとことで言うとキレてた。演奏ももちろんだけど、トークが、である。お客さんは割と静かに聴き入る感じの人が多かったのもあり、「本当に水を打ったように静かだねー」と困惑を露わに。特にimaiは「できたてほやほやの新曲やります。っつっても(group_inouを)知らない人多かったら意味ねーけど!! (知らない人からしたら)全部新曲だけど!!!!」と毒づいて、奇しくも会場中を爆笑で沸かせていた。しかし、そのトークに続く新曲がきちんと良い感じにしあがっていたのは流石で、6月に発売予定という新しいアルバムに期待するところである。
続いてバトンを受け取ったのはSunshine Love Steel Orchestra。いきなりの「みなさんどうもー。サケロックでーす!」というエイプリル・フールにちなんでの大嘘自己紹介(!) で会場を沸かせ、和やかな雰囲気で演奏が始まる。LITTLE TEMPOの土生“TICO”剛と田村玄一、Buffalo Daughterの大野由美子で構成されるスティールパン・バンドである彼等だが、今回は更にドラム、ベースを迎えての5人編成。「打楽器でここまでできるのか!」と、自在にスティールパンを操り奏でる三者。まったりと心地良く、どこまでも優しいアンサンブル。かと思えば、個性が色濃く表れた各自のソロ・パートは三者がせめぎ合うようなすごくスリリングなもので、観ているこちらはどきどきだ。なんていうか、音楽を髄まで楽しめる小粋なライヴであったと思う。
強者ばかりのゲスト3組を経ていよいよ登場となったサケロックは、4人で円を組むようなポジショニングで各々が定位置につく。マリンバ担当でもある星野源だが、この日はギターのみ。幸福感の漂う『老夫婦』でライヴ・スタート。4人によって創り出される美しくも儚く、どこか懐かしい、幻想的な音像で緩やかにライブは進む。それぞれ個々のバンドや活動で忙しかったらしく3ヶ月ぶりのライヴだという彼らだったが、そんなブランクは微塵も感じられない。元々高校時代からの仲間だという4人ならではの自然体なMCも健在。そしてもちろん、サケロックのライヴではお馴染みの、トロンボーンの浜野謙太、通称ハマケンのスキャットと伊藤大地のドラミングによる『対決』も、ハマケンの『寸劇』も、やっぱり健在。
すばらしい音楽を、空間を創っていこう! と創り込まなくても、気張らずとも、結果的にそうなってしまいました、という良い意味で肩の力が抜けた感じ。だから、オーディエンスはリラックスして、日常の延長線上で音楽を愉しむことが出来る。それは即興性と遊び心を忘れないサケロックならではのもので、多くのファンが彼らを信頼する所以でもあるだろう。
またそれによって生まれていた、この日のイベント全体を通して漂っていた居心地の良い空気感。これって、なかなかに特殊なものんだな。すごく素敵で、貴重なものだと思う。
この日は新曲も披露し、「今年はアルバム出します!」宣言をしてくれたサケロック。ゆるりと結成10 周年を迎えた今年の彼等の活躍に、期待大です!
(山田佳緒里)