UA
デビュー15周年! いままでも、そしてこれからも
「おっすー! おめでとーうリキッドルーム! 6周年ですって。新宿でも10年ってことは16歳?もう高校生かぁ。毛もボーボーだね(笑)」
そう言って、屈託のない笑顔をふりまくUA。会場からも笑いがこぼれ、空気が一気にゆるむ。この日のライヴはそんな風に、リラックスしたMCではじまった。リキッドルームのアニヴァーサリー・イヴェント第1弾としておこなわれた、UAのワンマン・ライヴである。
バンドにはギター内橋和久、ベース鈴木正人、ドラム芳垣安洋。そしてコーラスに太田美帆とメグ。ホーン隊として権藤和彦、塩谷博之、青木タイセイという何とも豪華なメンバーを迎え、ステージ中央にスタンバイしたUAを中心に、半円を作るようにそれぞれセッティング。
本編は、“そんな空には踊る馬”で軽やかにはじまった。UAの深いヴォーカルとバンドの極上のアンサンブルが交わり、深淵な世界を構築していく。続いて“KOSMOS”、“Melody lalala”へとつなぎ、その音世界はどんどん熱を帯び、深みと生命力を増していくのだった。
ところどころで挟まれる動物の鳴き声のような独特なシャウトや、メロディーを奏でるヴォーカルは、魂の原風景までさかのぼるようになんとも懐かしく響くから不思議だ。
選曲は新旧曲からまんべんなく、ライヴの定番曲を織り交ぜつつ、また自身のデビュー15周年を記念して作られたというカヴァー・アルバム『KABA』からの曲も散りばめられたもので、ファンにはうれしすぎるセットリストだったのではないだろうか。
この日のライヴで特筆すべき個人的なハイライトは、アンコールで披露した“Love Theme From Spartacus”である。この曲はさきごろリリースされたカヴァー・アルバム『KABA』に収録されているのだが、今回は収録されていない日本語歌詞ヴァージョンをライヴで初披露。これが本当にすばらしかった。原曲の良さはもちろんなのだが、UAのことばとヴォーカルを通すことで曲の表情がガラリと変わり、新しい命が吹き込まれる様には感嘆してしまう。オーディエンスも一語たりとも聴き逃すまいと、息を呑むようにじっくりと耳を傾けていた。曲が終わると満足そうに微笑んだUAは、「はじめてお客さんの前でやるっていうのは、たまりません……。ありがとう」と語っていた。
音楽だけでなくアートワークなどでも独自のスタイルを貫き通し、一種の神聖さすら漂うUA。だがライヴでは、ひとりの女性であり、ひとりの母親であり、ひとりの大阪人であり、というパーソナルな存在感がにじみ出ていて、それがすごく生々しく響くというか、良かったのだ。フレンドリーなMCも然り、実はオーディエンスとの距離がすごく近いアーティストなのだな、と。音楽に対して真摯に向き合うのと同時に、家族や、自然や、周りの世界ときちんと対峙する姿勢。すごく人間臭いひとなんだなぁと思った。そんなUAの魅力が存分に伝わるライヴだったと思う。
「私も70周年くらいまでがんばりたいと思います!よろしくー。またねー!」そう高らかに言い放ってステージを降りたUA。デビュー15周年を迎え、未だ孤高の存在としてシーンでマイペースに走り続けるUAの姿を、これからも追い続けていきたいと思う。(山田佳緒里)
【セットリスト】
1. そんな空には踊る馬
2. KOSMOS
3. Melody lalala
4. Day Dreaming
5. 踊る鳥と金の雨
6. Purple Rain
7. Hyperballad
8. 買い物ブギ
9. 波動
10. 雲がちぎれる時
11. プライベート サーファー
12. Moor
13. Panacea
アンコール
1. モンスター
2. Love Theme From Spartacus
3. わたしの赤ちゃん
4. TIDA