RIZE / HiGE
熱く、温かく。ピースフルにロックをライヴ!
RIZEとHiGE。ありそうでなかったこの2組がタッグを組んで、恵比寿リキッドルームの6周年を、盛大に祝ってくれた。
開演時間より10分少々おして、バック・トゥ・ザ・フューチャーのテーマ曲とともに、暗幕がぱっと開く。「この時を待っていた!」といわんばかりに勢いよく音を鳴らし、須藤が元気よくジャンプ! その背中にはぬいぐるみのような羽。その横ではサンタクロースのような白ヒゲをつけたフィリポが陽気に踊り回っている。お得意のファンシー・スタイルで、はじめにステージに現れたアクトは、HiGE。
アイゴン加入により、より深みを増したサイケデリックなギター・サウンドで、心地よいHiGEの世界にとりこまれる。ゆったりとメロウなナンバーや思わず跳ねたくなるファンキーな曲が次々と飛び出す。ポップな曲の中にひそむ皮肉や毒気も、そして須藤の独特のくねくねしたダンスも魅力的だ。
「今回はRIZEと共演ということで……先日出したアルバムで、一緒にレコーディングした人がいるんだよね。これって、今日この曲やんなきゃおれらドSなんじゃないかな、って。それで、急遽決まったんだけど」
客席からの歓声とともに、RIZEから金子ノブアキ! まさかこのコラボが観られるなんて。曲は“ペインキラー(for Pain)”。いつものHiGEの軽やかで跳ね気味のリズムも良いが、こちらもすごく良い! 金子のドラミングは吃驚してしまうくらいずしりと厚く重々しくて、気迫に溢れていた。須藤曰く「日本で最強のドラマーのひとり!」迫力のステージのあと、「予言しよう。彼……何分後かに現れるだろう」と須藤。ユーモアたっぷりの髭ちゃんワールドは揺るがない。「みんな最高! おれ、みんなの顔しっかり覚えたから! 街で会ったら声かけちゃうかも。そのときはしらんぷりしないでね」なんて言うから、曲からMCまで愛されバンドなわけだなあ。
夏の終わりに“サマータイムブルース”でムーディーに締めくくり、「ありがとう、今夜楽しんで」と手を振ってステージをあとにした。
続くRIZE。SEなしでいきなり幕が開いたと思ったら、誰もいないステージがぽつり。しばらくしてマイペースに、金子ノブアキ、kenken、ジェシーが袖から登場。登場はのんびりだったが音を鳴らすと序盤から完全にトップ・ギア! マシンガンやダイナマイトのような音を放ちつつも、いつでも余裕溢れる表情はさすが。先ほど衝撃を受けた金子ノブアキのドラムがここではあたりまえに感じてしまうくらい、3人とものプレイがすごい。しかもまったく個人プレイではなく息がぴったりの最強チーム・プレイだから脳や心臓に響かないわけがない。
RIZEはヘヴィ・ロック寄りのミクスチャーというイメージが、だんだんストレートでシンプルにハードなロックを刻むようになった印象だったが、シンプルと言っても落ち着いてしまった、というわけではもちろんなく、築きあげられたしかりとした技術と豊富なライヴ経験値が裏付けるヘヴィ・サウンドは変わらないどころかどんどん強みを増している。
サウンドもさることながらステージ・パフォーマンスも目玉といえるRIZEのライヴ。頭が吹き飛びそうなくらいのヘッド・バンキングに、空気を蹴り上げたり、「調子のれー! 死ぬ気でこいやオラー!」などと挑発的に煽ったり。ステージを縦横無尽に暴れまわる姿は威風堂々としていて貫禄ありまくりで、気づけばステージだけでなくフロアも暴れまくりのぐちゃぐちゃだ。
「死んだらなんもねえ! 生きてるから歌えるし、生きてるから音で骨揺れるし……生きてる間は無駄にしたくない」序盤にジェシーが即興で「垣間見せましょう おれらが人間ということを」と歌っていたように、エネルギッシュでパワフルなライヴのなかでみせる熱さや温かさ、情熱からRIZEの人間くささを感じた。かっこいいだけじゃないんだな。
嵐のようなライヴのあとに、笑顔で幼き愛娘を抱き連れるジェシー。激しいライヴはピースフルに幕を閉じた。(知念正枝)
PHOTO BY Wataru Umeda