DE DE MOUSE presents mousetrap
縦横無尽の〈mousetrap〉
デ・デ・マウス企画による2日間に渡るイヴェント〈mousetrap〉。
1日目の対バンとして抜擢されたのは、サポート・ベースを迎え、自身はエレキ・ギターに持ち替えたスペシャルなバンドセットで驚かせたトクマルシューゴ。壮大なスケールと狂騒の演奏でひときわ異才っぷりをはなつworld’s end girlfriend & BLACK HOLE CARNIVAL。そしてディスコ~ハウスを軸にとろけるような選曲と卓越したプレイで転換中も安心して踊らせてくれるDJ peechboy。
バンド・メインのこの日、なんと全バンドがツイン・ドラムで挑むというおもしろい組み合わせ。その圧倒的な音数の多さ、グルーヴィーなリズムの応酬で、CDなどの音源では感じることができない音の三次元体験を感じることができた。
2日目に選ばれたのは、自身の持ち曲のイントロをつなげたブレイクコア調の曲でセンセーショナルを飾る□□□。最新作の曲を引っさげ、持ち味である響きある声とwith Dorian&やけのはらで大合唱をさらった七尾旅人。抜けの良いハイの音が心地よいテッキーな選曲で聖地イビザを彷彿とさせたDJやけのはら。
初日とうって変わって電子音が際立った(そのなかでの七尾旅人のフォークの時間もまたすばらしかった)2日目は、客層もライヴ民……というより、クラブに慣れている様なひとが多く、沢山のひとが全身で音楽を楽しむスタイルをとっていた。それに呼応するように熱くなる各アーティストの化学変化も凄まじく、相乗効果でイヴェント全体がより良いモノになっていくのを感じた。
この2日間の素晴らしいイヴェントの首謀者デデマウスは今回もwithツイン・ドラム&キーボードで観衆を熱狂の渦に落とし込む。
ふたつのドラムが絶妙に絡み合い原曲よりより踊りやすく、複雑になったファーストからの“dancing horse on my notes”でいきなりフロアを沸かすと、サードからの“journey to freedom”やセカンドから“light night dance”などの新旧織り交ぜた代表曲を投下。思わず踊りだしてしまうリズムを刻むドラム、絶妙な間の音の入れ方で魅せるキーボード、さらに後半ではサックスも登場し更なる彩りを添える。そしてライヴ会場すべてを一体にしてしまう求心力を持つデデマウス……途中から“仕事を忘れてライヴ最前列に行ってしまいたい……”そんな欲求にかられてしまったのはいうまでもない。
ライヴがものすごくいい……というバンドは数あるが、デデマウスほどライヴで表情を変えるようなアーティストも珍しい。ドラムンベースのような圧倒的に音数の多いビートを生ドラムで再現するというエッジの効いた発想、オーディエンスを沸かせるパフォーマンス、MCの間でも楽しませてくれる彼の人柄は彼にしか持ち得ない、音源以外に持つもうひとつの牙であろう。
二日間に渡る〈mousetrap〉は弾き語り~バンド~DJ~ヒップホップ……とまさにジャンルを超えた音を楽しめる大演劇となった。素晴らしい演奏群についつい、偏食になってしまっていた自分に改めて気付いてしまった。こんなにも色々な毛質の違う、素晴らしいアーティストがいるのにひとつのジャンルばかり捉われているのはもったいない……もしかしたらデデマウスはそんなことを受け手側に伝えたかったのかもしれない。
いろいろな音楽を聴く、聴かないは人の自由、だが送る側はいつも真摯である。(市川雅史)