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社会に向けてはなにか意見を言いたかった――SEEDA復活、新たなる一歩を踏み出す

 引退発言や自身の過去10年を総括するベスト盤の発表を経て発表されたSEEDA待望の新作『BREATHE』は、現行USヒップホップのトレンドに目配せしたハイエンドなトラックに彼なりの視点で描かれた日常描写や現代社会への提言を織り込んだ、まさに2010年を代表するアルバムに仕上がっている。そんな傑作を引っ提げて敢行される10月29日、リキッドルームでのリリース・パーティーは、彼の希少なステージを体感することのできるまたとない機会であることは先に言っておこう。新作『BREATHE』が生み出される過程、「10月29日以降は生身のライブはしたくない」とまで言い切る本リリース・パーティーへの意気込み、そしてリキッドルームとの浅からぬ因縁。稀代のラッパーによるロング・インタビューをお届けしよう。







── まず各所で触れられてるとは思いますが、前作『SEEDA』発売後の引退発言についてお聞かせください。引退発言までにはどのような経緯がありましたか?

SEEDAごめんなさい。あの件に関しては自分が子供だった思います。気持ちが爆発して安易にブログに書いてしまった。ただモチヴェーションがあのときガクッと落ちてしまったことは間違いなくて。音楽ビジネスはタブーもあるから、知りたいひとは自分で学びながら責任を持って知ってほしいと思う。音楽だけ精進していても越えられない壁はあるので。そのかわり、その壁が無いところから勝負もできる。そのひとつとして、好きなアーティストをフックアップしまくって、好きな音楽を増やすことも重要じゃないかと。発言当時はさきのことを考えると一旦裏方に回ったほうが自分も仲間も長く音楽でメシが食えると判断したんです。いい才能は埋もれることも多いから、ラッパーとしてリスペクトできて、同時に友だちだと思えるアーティストに対しては早めに協力をしたい。協力できる時期だって限られるとも思うし。それはI-DeAが僕に対してしてくれたことでもあるから。





── 周囲の反応は?

SEEDA「ラッパーとしてヘッズに求められなくなったらやめる」とはいつも言っていたので、とくに反応はなかったですね。経緯に関しても普段から仲間には話してきたし。ただ「もったいないんじゃない?」とはOKI(GEEK)君やDJ ISSO(SD JUNKSTA)君なんかに言われました。逆に自分の周辺以外からの賛否両論が激しかったッスね(笑)。ごめんなさい。





── 引退発言前と活動再開後ではどのような変化がありましたか。

SEEDAブログに本音を書くときはなるべくひとが傷つかないように書くようになりましたね。あとは活動再開前にストレス発散のために遊びではじめたトラック制作ぐらい。





── SMITH-CN氏と4WD氏のアルバムにラップ以外の面で携わることで得たものはなんだったと思いますか?

SEEDAまず各々のアーティストのモチヴェーションがそれぞれ違うということを知れた。それはそのアーティストの長所を知ることと一緒だから。アルバムが完成したとき、それまでの経過もふくめCN君の自由な個性を感じたんです。だからプロデューサーが型にはめて制作するのは避けたほうがいいということがわかった。4WD君の場合はすごいプロデューサーと仕事をするには、それに負けない個性を持つラッパーじゃないと成り立たないと感じましたね。その意味ではCN君も4WD君もうまくいったのではないかと思います。





── 今回の新作『BREATHE』、興味深く聴かせていただきました。今作は基本的にBL氏、OHLD氏との作業が多かったとのことですが、このふたりと作品を作る最大のメリットは? またアルバム制作前にはどのようなコンセプトを持っていましたか?

SEEDAふたりと制作する最大のメリットは音楽の価値観に対しての共通認識が多いこと。感情論をメインにことを進めないメンバーだから、よく話し合える。あとは僕より優れた知識とスキルがある点。コンセプトに関してはこのアルバムに限らず、4~5曲できた曲をピックしたらアルバムの構成を考えて、フレッシュな音楽性、そ れにそのときの空気感をリリックスやメロディーで表現できるように頑張るだけです。現時点での過去作品に関しては、その考えで一貫してる。あと契約の問題もふくめ、細かい部分でのサンプリングもなしにしました。





── リリック面ではどのような点にこだわりましたか? 個人的にはこれまでより社会や政治に言及したメッセージが多くなった印象がありますが、そういった歌詞に向かっていった明確な出来事や、意識が変わるきっかけなどはあったのでしょうか。また本作でメッセージとして自身がもっとも伝えたいことが書かれているラインを挙げるとするなら? 

SEEDA政治的なリリックスを増やそうという意識はないのですが、社会に向けてはなにか意見を言いたかった。ニートじゃないし、適当に生きてるだけじゃ周囲が困ったとき、結局誰かのせいにしたり、パニックを起こしますよね。そういった内容に触れたのは、このままでは資本主義×至上主義の崩壊に巻き込まれる危機感を感じたから。そういったリリックスがおカタいと思うひとがいても不思議じゃないけど、僕はこのまま世界が崩壊するのに付き合う気も、困ったときに馴れ合う気もないだけ。もっとも伝えたいメッセージは選べないけど、今の気分だと“MOMENTS”や“LIFE SONG”あたりがそうだと思います。







『crazy/イカレテル俺等crazy/自分の家を壊しているcrazy/水を買い出すcrazy/空気を買い出すfuture crazy』(“MOMENTS”よりリリック抜粋)
 
『この国に生まれて感謝/疑う事もあるけど感謝/戦争放棄誇りだよあんた/戦後もHIPHOPもアメリカに感謝/裸足の子供みない23区/学問習える国の算数/夜中に歩ける街のlights/明日を抱ける幼いLIFE』(“LIFE SONG”よりリリック抜粋)

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