Base Ball Bear
晩秋の甲子園
三者三様……そんな言葉が似合うイヴェントだ。面白い。ルーツ・ミュージック、気質が似ているバンドが集まるイヴェントは楽だし、なにより足を運びやすい。対して、この日のように違った土壌をもつアーティストが作り上げる1日……音楽の楽しさ、自由さ、しいては価値観の拡張――いままで聴きもしなかったジャンルのアーティストに触れ、1曲ごとにワクワクした体験は一度ならずあるだろう――は、大小様々な共振をもって我々に働きかけてくれる。それは視聴機の再生ボタンを押すことでは決して得られない振動である。
メディアにもじょじょに浸透してきたOKAMOTO’S。彼らの快進撃はとどまることを知らない。
このOKAMOTO’S、ストレートなロックンロールを響かせる。何かと初期衝動に寄りがちな若年層のバンド・シーンに風穴を開ける演奏力と、会場をひとつにまとめ上げる求心力、ファンク~ロックをしっかりと踏襲し再構築するオリジナリティのすべてを持って、会場を完全にオカモト色に染め上げた。ライヴではすでにお馴染み、めんたいロッキンチューン“恋をしようよ”の高速プレイはオリジナルであるルースターズのそれにもせまる代物だ。20分という短い時間ではあったがフロアをロックし続けた。
先ほどの熱も冷めやらぬまま、舞台袖に特設されたふたつのスクリーンに映し出される煌びやかな映像と宇宙服を着たDJが登場。音と映像の融合を実現させたセットで驚かせてくれた元気ロケッツ。安心して踊れる4つのキックと、思わずワクワクしてしまうようなポップな楽曲群に応えるように、フロアからは何度もハンドクラップがまきおこる。
元気ロケッツの魅力は楽しく踊れる楽曲だけではない。独創性溢れるミュージックビデオも最大の魅力のひとつで、この日は新曲「make.believe」のミュージックビデオも披露された。世界初の3Dミュージックビデオであるこの作品は2Dで見ても、宇宙空間を浮遊するLumiに手を伸ばせばまるで届きそうな感覚が得られた。――音×映像×光が織り成す幻想的な空間は心地よい宇宙遊泳のようであった。
幻想空間から、盛大なハンド・クラップのなかさっそうと現れた本日のトリBase Ball Bear(以下BBB)伸びのあるヴォーカル、うなるようなギター、切れのいいハイハットに、男顔負けのどっしりとしたベース……どうやら序盤から、ギアをトップに持ってきたようだ。“至極のギターポップ”によってフロアのあちこちから笑顔がこぼれる。
BBBの持ち味は爽やかでシンガロングできる歌詞が気持ち良いギターポップ……といった印象であったが、ライヴ中盤を聴く限りそれだけではないということに気付く。
『本編とはまったく関係ない』そう言ってプレイされたインタールードは内から湧き出るようなロックンロールであったし、リフレインするフレーズと突如つんざく様なギターノイズは混沌した空気を作り、転調し複雑に絡み合うベースとドラムはマスロックを彷彿する……。単に“ギターポップ”というジャンルでくくり得ない、多重人格のようにいろいろな性格のサウンドを響かせてくれる素晴らしいバンドであった……とは言うものの、やはり彼らの一番の武器は“爽やかな疾走感”である。最後に代表曲“changes”を含むキラーチューンを次々と連投し、会場全体をしっかりとダンスフロアに変えてしまったBBB。秋のツアーも終わり、年の瀬には球宴…ではなく音宴、カウントダウンジャパンの出演が決まっている。次は幕張メッセで会いましょう。(市川雅史)