布袋寅泰
マンスリー・ライヴ最終夜、終わらぬ熱狂
「全五回のマンスリーライヴ、自分にとっても貴重な、毎回が意義のあるライヴでした」とのMCからも解るように今宵で最後となった本公演。ドラムに中村達也、ベースにTOKIE、キーボードに小島良喜を迎えての四人編成での最終夜となった。
相変わらず開演前から地鳴りのように鳴り響く「布袋!布袋!」コールと手拍子が四人を迎える。音が鳴ったかと思うや、叩きつけられるかのように気合の入りまくったソリッドなギター、そしてエグい程に唸るベース、エネルギッシュなドラム、彩りや遊び心を添える華やかな鍵盤。今までのライヴの毎回が高いテンションで魅惑の演奏、ステージだったのは間違いないのだが、しかし様々な編成、ゲスト、趣向で楽しんだ後だからこその、シンプルな演奏、音楽の魅力を強く感じられるステージだった。
一年を振り返るMCの中でFUJI ROCK FESTIVAL’10でのROXY MUSICとの共演を挙げ、「今日のネクタイはその時のものです」と語り、そして今年の夏、ROXY MUSICと共演した“LET’S STICK TOGETHER”を演奏。布袋が高校生の時、群馬から電車を乗り継ぎ東京までライヴを見に行った時の一曲目だったという。語られたエピソードから想像してしまうように、少年のロックンロールへの憧れがつめられ、また今度は自身が見るものを夢中にさせるような、心の踊るような、シンプルな格好よさに溢れていた。
「五回もやっていると曲がかぶってしまうんですよね。でも、やっぱり聴きたい人もいるでしょうから」と“バンビーナ” 。長年のファンでなくとも耳馴染みのある曲の登場に、何度も聴いたことある人もそうでない人も、会場中が飛び上がって楽しんでいた。「次はスペーシーな曲を」と紹介された “PARADISE”は、3ピースにキーボードという編成とは思えない深みで音色を会場中に響かせた。その言葉の通り、形を超えた広がりを感じさせる、深い深い楽曲に、さっきまでも大盛り上がりだった会場が水を打ったように静まり、全身を耳にしてその演奏に聞き入っているようだった。
このように自身の言葉、エピソードと音楽との両方があってこそ、彼の曲の世界をより強く堪能できる毎回のマンスリー公演だった。振り返ると30年、ようやくギターのコツが掴めてきたという布袋は来年武道館公演を控えている。そこでの演奏曲も色々考え、懐かしい曲は今再び体に染み込ませている途中とのこと。ライヴの合間には布袋の過去キャリアでもある「MARIONETTE」のイントロリフを披露して会場を沸かせた。このように、布袋の活動の多岐にわたる楽曲が武道館では披露されるとあっては、期待も一層募るというものである。
アンコールは「会場に来て下さったテリー・ボジオへ」と“BATTLE WITH OUT HONOR OR HUMANITY”。映画のイメージを彷彿とさせるインストとは思えない叙景的なナンバー。ダブルアンコールではこの季節にこの曲を弾くのもかなりの久しぶり、とシーズンにぴったりな曲を筆頭にクリスマスナンバーを布袋のギタリズムで彩りお客さんへとプレゼント。今までのライヴとはひと味違い、クリスマスらしさも楽しみつつの心温まる演奏に楽器をおいたメンバーへの拍手は鳴り止まなかった。会場からの惜しみない拍手に応えるように、布袋は再度ギターを手にとり、拍手へのお返しと言わんばかりに恐らく想定外であろう、プレゼントのように“C’MON EVERYBODY”。実はマンスリーライヴで毎回演奏されていたこの曲を聴きながら、今までのマンスリーを思い出していた方も少なくないのではないだろうか。
次は武道館、との規模を考えるとリキッドルームという会場で五ヶ月もライヴを見ることが出来たのも非常に嬉しい。30年ギター一本で音楽を作り続けた凄みを体感できた素晴らしいマンスリーライヴだった。初登場の初回からゲストを迎え、編成を変え、最後を迎えた今夜。それぞれのライヴの魅力は様々だが、しかし今までで一番強く、ストレートに布袋のギターの「かっこよさ」を強く感じることができた一夜だった。(渡邉祐子)
セットリスト
1.DOBERMAN
2.WANDERERS
3.BORN TO BE WILD
4.ALL DAY AND ALL OF THE NIGHT
5.LET’S STICK TOGETHER
6.ハートブレイクホテル
7.CRYING IN THE CHAPEL
8.BAD FEELING
9.NO TURNING BACK
10.バンビーナ
11.PARADISE
12.LOVE THEME from BLADE RUNNER
13.アストロノーツ
14.OUTSIDER
15.SIREN
EN1
16.BATTLE WITH OUT HONOR OR HUMANITY
17.GUITARHYTHM
EN2
18.MERRY X’MAS LONELY HEART
19.月光ピエロ
20.HAPPY XMAS ( WAR IS OVER )
21.C’MON EVERYBODY
PHOTO BY 山本 倫子