過去から届けられた、拡大する記憶
解散から半年以上の月日を経て、忘れ形見のように届けられた2005年~2009年のライヴ・アーカイヴ・ボックス。時期的に言えば『Sweet Spot』前後から、『空洞です』やセルフ・リミックス・アルバム前後。その膨大なライヴ音源からのセレクトで2枚組CD+DVDというヴォリューム。彼らのここ数年のライヴは大きなインパクトを持って心に刻まれている。それは、記憶のなかで壮大なスケール感を持って迫ってくる。むしろ持続する記憶のなかで、そのインパクトのあまりに、いまだにさらに拡大しているかのようだ。本作にも楽曲自体を会場いっぱいにスケール・アップしてしまうゆらゆら帝国のパフォーマンスの一端を体験することができる。それはある意味でレゲエにおけるダブ・ミックスがそうであるように、ヴァージョンの違いによって新たな生命を吹き込まれた、新たな作品とも言えるフレッシュな響きを持っている。ちょうどこの季節に、年末の空気感と共に楽しんだリキッドルームの恒例の年末のライヴも今年はない。その拡大されていった空洞の向こう側に見える景色を観てみたかったというのは、ファンとして正直なところだ。