FEATURE

LIVE REPORT

たむらぱん

たむらぱん

twitter facebook

日常を強く生きるための、たむらぱんの魅せる非日常

「今日という日を、みなさんのこの1年のなかの大切な1日にできたらなと……まぁ1年と言わなくても、この3ヶ月くらいのひとつの大切な日になればいいなと思います。明日どうなるかわかんないし……。本当は1日1日を大切にしなきゃと思うんですけどね。どんなことがあるかわからない世界でも、楽しく生きる秘訣があると思うんです」

 ライヴ前半のMCで、たむらぱんこと田村歩美は、満面の笑みでこんな風に語った。“どんなことがあるかわからない世界でも、楽しく生きる秘訣”という言葉が耳に残った。なぜなら彼女は繰り返し、楽曲を通じてそれがなんなのかを提示していると思うからだ。

「その華奢で小柄な身体のどこから出てくるの?」というくらいの圧倒的な声量、芯のあるハイトーンな歌声でもって次々とライヴを進める田村。基本的にはキャッチーでノリが良い曲が多いのだが、それぞれ“たむらぱん節”とも言える一癖あるメロディーラインと凝った曲展開なのが印象的だ。またアンコールで披露した“とんだって”のような聴かせる曲もしっとりと唄い上げる。タイアップも多く、明るく楽しくハッピーな部分がフィーチャーされることの多い彼女だが、それだけではないのだと何度もライヴのなかでハッとした。そのギャップや、さまざまな触れ幅のなかで揺れるアンバランスな部分もまた、彼女の大きな魅力なのだ。それを裏打ちするのは楽曲、そしてエンターテイメントとしてのステージの完成度の高さであるということは言わずもがなであるけれど。

 これでもかというくらいストレートで、耳にすっと入ってくる飾らない言葉で綴られるたむらぱんの世界は、とっつきやすいが奥深い。なにせ“フレフレ”のような直球の応援歌から、“ノバディノウズ”のように不倫という毒っけのあるテーマまでさらりと伸びやかに唄ってしまうのだから。おもしろいなぁと思う。ダークな部分も、アッパーな部分もどっちも出し惜しまない、というか。女性独特の切り替えのよさというか、潔さみたいなものをライヴを通して強く感じた。「世界は変えられないけれど、世界観は変えられるんじゃないかって」という彼女のMCからも伺える、ある種の諦めと潔さ。無防備にステージで笑う彼女には、しなやかな強さがあった。

“どんなことがあるかわからない世界でも、楽しく生きる秘訣”――それはほんの少しのアイディアや小さな気付きのなかにあり、それは紛れもなく私たちの、それぞれの日常の中に潜んでいるのだ、と彼女は自身の日常を経て紡がれる様々なストーリーを孕んだ楽曲を通して、私たちに何度も呼びかける。

 すでに次回のリキッドルームのワンマンも7月1日に決定している。たむらぱんの創り出す力強く鮮やかなライヴという非日常的空間で、明日という日常を生きる為の元気を注入してもらうのも良いと思う。(山田佳緒里)

RECENT LIVE REPORT

LIVE REPORT TOP

RECENT LIVE REPORT

LIVE REPORT TOP