killing Boy
“ライヴ”に出来ること、その可能性
「音楽に出来ることなんて本当に大したことなくて、それでも、こうやって音楽を聴くことで明日も頑張ろうって、もう少し生きてみようって、少しでも思ってもらえれば、それが僕らの全てです」――キリング・ボーイのフロントマンである木下は自分の言葉で力強く語った。
3月11日に起きた東北関東大震災の影響で各地のライヴハウスでは3月に開催を予定されていた公演の多くが延期、中止となった。いろいろな事情や考え方がある中で、木下は自粛を命ずる所属事務所に掛け合ってまでライヴ開催を望んだ。その詳細含め、この日にライヴを行うことの意義と覚悟を木下はバンドのMySpaceで発表している。(http://www.myspace.com/killingboyofficial)
それはそれとして、ライヴ自体は通常通り、むしろそれ以上の盛り上がりを見せた。オープニング・アクトのきのこ帝国は短い演奏時間ながら、このラインナップのオープニングに相応しい音楽性でオーディエンスを見事に惹き付け、終演後の物販ではCDが飛ぶように売れていた。アンディモリはタイトな演奏の上で矢継ぎ早に繰り出される言葉が、小山田のテンションと共に加速し、様々な感情を巻き上げるようだった。ライヴ活動休止を経て2年ぶりに精力的な活動を行い始めたオットーはビリつく弦のような、指先で触れただけで全身が衝撃に持っていかれるような演奏。TORAがフロアへダイヴしていたのを見ても、バンドのテンションの高さが伝わってくる。アクトの間のチルアウト・タイムを演出する田中宗一郎のDJも空間に見事に調和し、イベント全体の雰囲気を盛り上げていた。
ファースト・リリース後のファースト・ツアーとなるキリング・ボーイはアルバム全曲に加えてセッション、さらに新曲も披露。バンドに対するモチヴェーションの高さが伺え、今後の活動がますます楽しみになる。重く強く鮮烈なベースにギターのエキゾチックな旋律が絡むのが印象的だった。木下らしい、とでも言おうか、悲しみも希望も痛切な言葉で切り取った歌詞が、これでもかと熱い演奏を裏切る。力強く熱い演奏なのに手触りは冷たく冴えている、そんなアンバランスさがキリング・ボーイらしい魅力に感じられた。
アンディモリ、小山田は「前だったら今回のような事故を他人事のように感じていて、でも、こうやってライヴに多くのお客さんが来てくれるようになって、いろんなところに聴いてくれる人がいることがわかって、だからものすごく身近なできごとに感じた」と、音楽活動による意識の変化と共に震災を悼む言葉を掛けた。オットー、マエノソノは「大阪のバンドなので(被災地からの)距離は離れているけど、その分遠くから活気を送れるように元気に活動していきます」と激励。キリング・ボーイはこの日のライヴ、イヴェント自体を通して、なにより歌詞でも音でもない、まさに演奏する姿から伝わる鬼気迫る熱意で、想いを表現した。忘れられないぐらいに伝わるもの、感じるものの多い、素晴らしい演奏だった。
「今日開催することに協力してくれたアンディモリ、オットー、きのこ帝国、タナソウ(田中宗一郎)さん、スタッフ、そして何よりリスクを背負ってまで会場へ来てくれたお客さんに感謝しています」(木下)。日常が非日常になってしまった中で、ライヴというひとつの日常を見せてくれたキリング・ボーイに感謝すると共に、今後改めて、もっとシンプルにライヴが開催出来る日が来ることを祈りつつ。音楽の可能性に懸けて行われたライヴを通して、改めて自分に出来ることを考えたい。(渡邉祐子)
Killing Boy セットリスト
1.Frozen Music
2.1989
3.Perfect Lovers
4.cold blue swan
5. black pussies
6.xu
7.新曲
8.Sweet Sixteen
9.Confusion
en1.
session ~ Call 4 U