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PUNK ROCK THROUGH THE NIGHT☆

PUNK ROCK THROUGH THE NIGHT☆

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顔を上げて、前を見つめて、未来へ。
歓喜のパンク・ロック・ミュージックが鳴り響いた夜!

 その手のファンには9月18日のハイ・スタンダード復活、そして〈AIR JAM〉復活が騒がれていた今年のゴールデン・ウィーク。その黄金週間の序盤に開催されたこのイヴェント。ソロ活動中であるハイ・スタンダードのヴォーカル&ベースの難波章浩がヘッドライナーとして出演し、彼の強力パンク・ロック・ナンバーから名付けられたであろうイヴェント・タイトルはその名も〈PUNK ROCK THROUGH THE NIGHT☆〉!
 若手からベテラン勢まで幅広い世代のバンドが集まり、転換無しの2ステージ、プラスDJタイムという、1日中音楽を満喫するためのお祭りだ。音楽とお酒と笑顔、そして熱気と興奮が飽和した会場には、なんというか〈AIR JAM〉前哨戦のような、祝祭的な雰囲気が漂っていた。

 真っ向勝負のストレートなパンク・ロックでフロアを一気にモッシュ・ピットへと変えてしまったRADIOTSがトップ・バッター。続いて真剣にふざけてるパンク・バンド、PSYCHO FOOD EATERSは卑猥な言葉でコール・アンド・レスポンスを求めつつも、サークル・ピットまで作り上げてしまうほどの盛り上がり! スクリーモとエモを縦横無尽に往来しつつ打ち込みを多用したエレクトロニカ的要素の目立つFear, and Loathing in Las Vegasは、その異彩を放つサウンドと平均年齢20歳とは思えぬ演奏力で、圧倒的な存在感のあるライヴを披露。そして国内のニュースクール・ハードコア・シーンを牽引してきたアーティストの1組であるNUMBは、期待通り重厚なサウンドを叩き付けてくれた。キャッチーで爽やかなメロディーでイベントに新風を吹き込んだdustboxは、情感をたっぷり含んだ天井知らずのメロディック・サウンドを武器にフロアを更に熱狂の渦に巻き込んでいく。そして難波にとってはハイスタ時代からの盟友であり、今年結成20周年を迎えたパンク・ハードコアを牽引するリヴィング・レジェンド、COCOBATはハードさとポップさ、そしてタフネスを激しく加味しての男気溢れるステージ! さらにスケールアップしてド迫力の爆音を轟かせた。

 と、ここまで来て〈AIR JAM〉の興奮が再熱しているかのような勢いのリキッドルームで、最終的にフロアを沸点へと導いたのはやはり難波章浩だった。
 ステージに現れ、ベースを手にしてフロアに語りかける。「オウケーイ! みんなおいでよ! 来いよ!」そう言って最初に鳴らされたのは“California Dreamin’”! なんとハイスタ・ナンバーでのスタートだ。そして“JUMP JUMP JUMP!!!”へと雪崩れ込む。もうこの時点でフロアは歓喜のモッシュとダイブでごった煮のように蒸せ返っていた。
 「サーフィンしよう! いこうぜ!」「君たちのスペシャルな日々が待っているぜ!」「自由のために一歩を踏み出せ!!」そんな、どこまでも前向きなメッセージを投げかけながら、往年の名曲であるハイスタ・ナンバーからソロ名義の楽曲まで新旧曲隔たりなく披露していく難波。そのセット・リストにまったく違和感無く、どの曲も同列にフロアに歓迎されるのは、難波が一徹してそのパンク精神を貫いてきたからだろう。日本のパンク・ロック・シーンのひとつの時代を築いた男は、いまもその最前線で戦っている。また己の衝動に爆発させることに終始せず、観客の反応を全身で受け止め、それに全力で応える包容力を併せ持っていたのはさすがだと思った。文句無しに、最高にカッコ良かった。
 ステージ袖で観ていた出演者も思わずマイクを奪いに飛び出し、そしてフロアも大合唱となった“STAY GOLD”の前に、難波はこんな風にフロアに呼びかけた。「よーし、いくぞ、日本! いくぞマジで! 負けんなよ! 忘れんなよ!!!」その力強い言葉は、フロアにいた人々の胸に響きまくったことだろう。

 アンコールのMCでは、〈AIR JAM〉について、そして東日本大震災と原発事故についてこんな風にも語っていた。「やっぱさ、いま届けたいなと思ってね。やっぱアクション起こさないとね……アンチテーゼって、アンチ=否定じゃなくて、わかってってことなんだよね。わかんない人もいるかもしんないから、わかってって。パンクってデカイ声出してるんじゃん。だからもっと主張していいと思うんだよね。まずは“想う”のだけはやめないでいこうぜ! 行こうぜ未来へ!」

 ベースを抱え、真っ直ぐ前だけを見て唄っていた難波。大きな声で彼が唄ってくれた歌は私たちの心に息づいて、そして私たちはいつのまにか口ずさんでる。
 その怒りを、悲しみを、ひとりで抱えて鬱屈としていたって何も始まりはしない。私たちはそれを笑顔というエネルギーに変えて行動しなくてはならない。パンク・ロックって、そのエネルギー変換装置みたいなものだ。そう思うと、世界を変えることが出来るのはいつだってパンク・ロック・ミュージックだけなのかもしれない。(山田佳緒里)

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photo by Terumi Fukano

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