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変幻自在のプレジャー・グラウンド!
遊園地のジェットコースター、グループ・イノウを例えるならば、そんなイメージ。たくさんの楽しいアミューズメントに囲まれて、ギュンギュンつっぱしる。時にはゆっくりと上昇しながら素敵な風景を眺められ、時には猛スピードで乗客のテンションを一気に上げる。そんなイメージ。
今回はグループ・イノウの3月16日に発売したシングル『HEART』のリリースツアー・ファイナル、初のリキッドルーム・ワンマン公演。しかもめでたくソールドアウト! 会場ではミラーボールがきらきらと回り、ステージにはiseneehihineeのHEART BOMBによる鮮やかなVJの映像が投下され、ミッドナイト・クラブみたいな雰囲気を漂わせていた。このなかに満員の観客に囲まれて、「念願のプチ・ブレイクを果たした! 続けてみるもんですね」なんてうれしそうな語り口に、フロアからもあたたかな笑みがこぼれた。
4曲目にプレイされた“ZYANOSE”はまるで気流のように大きく荒く渦めき、私たちを丸ごと呑み込んだ。このままヒート・アップ! かと思いきや“MYSTERY”や“QUEST”ではミステリアスで緊張感のあるメロディに催眠術をかけられたような空虚感が襲い、不思議でドキドキした気分に陥る。“THERAPY”ではPV映像を制作したAC部がVJを担当! シュールでコミカルなアニメーションでメンバーとともにフロアを盛り上げた。後半”HEART”は、なかでもセンチメンタルな“聴かせる系”でなんだかこころじんわり。そしてこの曲のVJも先ほどに続きAC部が担当。合わせてミラーボールも回り出し、感動的な雰囲気を醸し出していた。
いわゆるヒップ・ホップのイメージ――ブラックでピリピリと張りつめたような雰囲気とはほど遠い、グループ・イノウのとことんルーズで軽いテンション。ブラック・ユーモアを交えることもあるものの、とっても純粋でおちゃらけな憎めないスタイルで、他愛ない痴話言のようなゆるーいMC(今回は「吉野家の広告塔になっている仲村トオルが、見るたびそのときの心情に合わせた表情を見せる万能顔だ」と言う話をしていた)からも身近さすら感じてしまう。そのキャラクターも、彼らの魅力のひとつなのだろう。そしてグループ・イノウというヒップ・ホップの中にある、テクノとポップとサイケとエモとハードコアと…… 次から次へと飛び出す奇抜で個性的な、何事にもとらわれない自由なサウンドと聴いているもののこころを掴み踊らせる。
定番の“SHIP”や“COMING OUT”、懐かしの“COIN”から新曲まで、新旧問わず持ち曲をたっぷりと堪能できる嬉しいセット・リスト。それから音に合わせて激しく、時には可愛らしく、多様な表情を見せるVJ映像。それに鮮やかに光を当てる照明まで、すべての雰囲気がいったいとなって、ワンマンらしくグループ・イノウを隅から隅まで存分に満喫できるお得な福袋的ハッピー・セットなステージだった。ラストのアンコール“RIP”までまさにジェットコースターのごとく楽しませてくれたグループ・イノウ、今後もまだまだ目が離せない! (知念正枝)