清 竜人
大人? 子供? 男? 女? そして美しい
清 竜人、男、22才、ステージ衣装、花柄トレンチコート。黒髪、オカッパ……。
清 竜人がステージにあらわれたときビックリした。彼は花柄のトレンチコートで登場した。しかも髪型もオカッパ。はっきり言って女の子かと思った。初めて彼のライヴを拝見したが、なんて美しい世界観を持ったアーティストなんだと思った。彼の歌詞は大人でもなく、子供でもなく。しかし子供のように子供の目線で、ときおりトゲトゲしく世界を批判する。”うつくしい”の歌詞でもあった様に「どこかで誰かが生まれたのなら 世界中がみんなして家族になるべきだろう どこかで誰かが死んだというなら 世界中がみんなして遺族になるべきだろう」 もっぱらの平和主義とでも言うべきか。この歌詞を聴いたとき、鳥肌が立ちました。こんな歌詞を唱えるアーティストはどれだけいるだろうか。僕には歌えないだろう。カラオケでさえ、意味をふまえていたならば歌うことなんてできやしない。清 竜人だから、清 竜人が歌うからいいのだろうと。大人でも子供でもない。男だけども女性のような格好をした、清 竜人。それはどこにも属さない、彼独自の世界なのか。だからこそこんな歌詞が歌えるのかと。人、人間、ホモサピエンス、そのものの感情を歌っている。なんて美しい世界観。
もう一度言わせてください。美しい。
しかし清 竜人は不安なのだろうとも思った。そのバランスも美しい。これがライヴを見て思った素直な感想。
ドラムのカウントから、1曲目”ぼくらはつながってるんだな”がはじまる。バンドサウンドも素晴らしく、やわらかく、丸みをおびていて聴きやすく体が自然と揺れ動く。暖かいライヴのはじまりだ。2曲目の入り方、とてもかわいかった。バンドメンバーみんなで「ワン、ツー」のかけ声から“パパ&ママ愛してるよ!”がはじまる。パパ&ママ愛してるよ~っと歌い出す歌詞。普段家族には言えない言葉。どストレートで胸に響く。子供が親を見る目線で。
ライヴのなかで一番引きつけられたのは、“ぼくが死んでしまっても” “がんばろう” “うつくしい” “痛いよ”の流れ。ギターを置きマイク1本で歌う。その姿、惹かれた。派手なパフォーマンスをするのではない。お客さんに訴えかけるのではない。彼は1人で、1人で歌っているのだ。下を向きながら。表情も見せず。その場面、その一瞬だけ見たら、泣いてるの? と訪ねたくなる歌い方で。彼はひたすらに歌う。きっと身を削る思いなのではないのかと思うほど切なく、美しく。さっきも言ったが彼独自な世界観。CDとは違う。PVとは違う。もう1つの清 竜人。ライヴでの彼には胸が突き刺される。変な言い方だが支えたくなる。その空気、環境、ライヴが清 竜人のライヴなのだろう。
終盤は”おとなとこどものチャララ•ララ” ”がきんちょのうた” と明るくみんなで歌える曲。幼稚園で先生と一緒に歌を歌う風景を思い出す。そんな空気。『PEOPLE』の曲が多かったセットリスト。やはり、大人のような、子供のような曲が多く、その間柄の中人だからこそ出来上がったアルバム。今だからこそ、今の清 竜人だからこそ出来上がった作品。美しい作品。是非聴いてないみなさん聴いて感じてみて下さい。(安藤洸希)