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秋本武士(The Heavymanners, Dry&Heavy, Rebel Familia)

秋本武士(The Heavymanners, Dry&Heavy, Rebel Familia)

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ベースライン・ウィズ・アティチュード
――ザ・ヘヴィーマナーズのセカンド・アルバム、そしてドライ&ヘビーの再生

 そのベース音は、その男のものだとすぐにわかる。それほどくっきりとその男の生き様を表している。レゲエのベースラインというものに対してのストイックな生き様。だからこそ強靭にそれは鳴り響く。秋本武士がフロアへと投下するベースは、それほどまでに彼の音である。ドライ&ヘビー脱退、そしてレベル・ファミリアを経て、若手を導く目的で結成されたザ・ヘヴィーマナーズ。ファーストから3年、セカンド・アルバム『サヴァイヴァル』をリリースした。当たり前だが、なによりもファーストに比べ、バンドから生まれるサウンドがひどくタイトになり、説得力が大きく増している。もうひとつ、その魅力を言えば、いくつかの曲にラッパーのRUMIを迎え、さらにメッセージの鋭さを増したことだろう。
 ルーツ・レゲエのレベル・スピリットを、サウンドの芯となるスピリットも含めて、ある意味でここまでこの国で体現したバンドはあまりないのではないだろうか。それほどまでに、あの70年代ジャマイカの、ルーツ・レゲエの持つ、ヒリヒリと刺々しいサウンドの攻撃性を自らのものとしてサウンドを作り出している感覚がある。
 そして、もうひとつ秋本武士をとりまく大きなトピックと言えば、やはりドライ&ヘビーの復活である。2001年の脱退を経て、七尾茂大と再びタッグを組んだのである。再びスタートしたばかりで、まだまだ未知数の部分があるが、国内最強のリズム・タッグをまたライヴで聴けるのはファンとしては単純にうれしい。
 そしてLIQUIDROOMでは、8月26日にヘヴィーマナーズのセカンド・アルバムのリリースを記念して、LIQUIDROOM 7th ANNIVERSARYの一貫としてライヴ・イヴェントが行われる。出演はザ・ヘヴィーマナーズとドライ&ヘビーという、秋本率いるふたつのルーツ・レゲエ/ダブ・バンドと、あらかじめ決められた恋人たちへである。
 さて、前置きが長くなったがここは本人に登場してもらい、語ってもらおう。







── まずはセカンドが出たばかりのヘヴィーマナーズに関してなんですが、3年経ったので当たり前と言えば当たり前ですが、とにかくタイトになりましたよね。

秋本毎週、必ず練習を重ねてきてるので。それにライヴもかなりやってきた部分もあるのでね。その成果というか。はじめるときから、レゲエとはなんだというか、音がどうこう、テクニックがどうこう以前にスピリットの部分から理解してもらって、そこからはじめてるから、気持ちはあるんだろうけど。





── この3年でヘヴィーマナーズに対して変化してきた思いみたいなものはあったりしますか? 新しい才能を育てるという側面があったと思うんですが、すでに結成からそれなりに経っていて。

秋本俺は、日本の村社会化したレゲエとかダブのシーンが大嫌いで関わりたくもないというのがあって。みんななれ合いで、20年前から同じメンツで。バンドがいくつあっても少ないカードをたらい回しに、組み替えてやってるだけだから、レゲエのイヴェントがあって5バンド出ていても、最初から最後まで入れ替わり立ち代わりで出ているメンツはだいたい同じだったり。そういうところで、若いミュージシャンが育ってないなんてそんな不健康なことはないな、と。それはやっぱり格好良くない、ジャンルに魅力がないというか、憧れの対象にならないからだと思う。格好悪いものは誰も追い掛けない。だから“レゲエっていうのはこういうスピリットからはじまっているんだ”というところから若いやつらを集めてやりたかった。だから、ヘヴィーマナーズのファースト・アルバムなんかは、それをぶっ壊す、という意味で、俺のなかに聴こえてる「どっからどう切ってもレゲエなんだけど、でもレゲエに少し角度を付けたもの、オリジナルなものを」とやってきたんだ。それが最初、やっぱり他の“レゲエ村のひと”たちと、それを聴いて育って、そういうものを求めているファン層からしたらかなりの違和感があったものだった。けれど、いまは独自にヘヴィ―マナーズのファンが育ってきている。だから、ファーストと今回を比べると、やってきた過程での自信であるとか、いい意味でひとつ力が抜けた、という感じがある。





── 余裕みたいなものがファーストに比べると出てきたのかもしれないと思うんですが……バンドとして一体感というか、力を感じることのできるアルバムだと聴いてて思います。

秋本セカンド・アルバムっぽいセカンド・アルバムになったかな。





── そのへんで今回、ホーンが入ったりと音数も増えていますが、基礎となるバンドの力がある一定に達したから足してみよう、というものだったんですか?

秋本そうだねぇ。もともとレゲエというのは音数が少ないもの、一個一個が研ぎ澄まされてないと成り立たないというのがあるから。レゲエとダブはそこの緊張感のバランスで成り立っている音楽というか。他は、逃げというか、人数、音数が多ければその分、下手でもよくなる、ごまかしがきくっていうのがあるんじゃないかと。





── 音数が多いと悪いところが隠れやすいと。

秋本数でね。そのなかで、ファーストは一番シンプルなレゲエの、ドラムとベースとキーボード、ギター、というだけの部分であって。まぁレゲエにおいてのキーボードやギターは、まぁパーカッションというかね。





── 『リズム楽器という役割で。

秋本そういうのはファーストでもやったし、セカンドでは、幅、レゲエの面白みとか、そういう部分を今回は足しても良いかな、と。





── 今回は、ほぼフィーチャリング・ヴォーカルという感じで、RUMIさんが4曲で参加してますが、彼女の魅力とは?

秋本RUMIちゃんは10年近く前から、その存在自体は知っていて、アルバムを聴いたりライヴを見てきたり。なんか偉そうなこと言ってる感じでイヤだけど、そういうつもりはないんだけど。ここ2、3年、こっちが見ていてドキドキするような、本物のメッセンジャーになるのかどうなのかという感じがすごくあって。そして見ているなかで「そこに行った! 選んだな」といった瞬間があって。それがあったんで「いま、やるならRUMIちゃんとやりたいなぁ」と思っていたタイミングでRUMIちゃんからリミックスの依頼が来た。それがきっかけで一緒に練習して、2年近く一緒に練習して来て。魅力、そうだね、一緒に練習している間にも本当変わってきた。いまは一番託せる。言葉を作品の中で用いる、言葉を使うんであればRUMIちゃんに。ここに入ってるのは、この2年近く練習してきたなかで作ってきた曲だから、安っぽいフィーチャリングとかじゃなくて。もうメンバーみたいな感じというか、音の一部分みたいな。やっぱりね、ひとつのトラックに対する歌詞っていうのがあるんだよ。バックが本気だったら、どんな本気のメッセージ言ったって、それは青臭くは聴こえない。ボブ・マーリーに対するウェイラーズじゃないけど、そこの部分を絶対俺はやってやれる、やってやりたいと思ったし。





── 歌詞に関しては自由に書いて貰ったんですか?

秋本そう、俺はなにもしてない。もともとひとりのミュージシャン、アーティストとしてここまでやってきているわけだから、一緒にやろうといった時点で、俺はどうこう言おうというつもりはまったくないので。あとは化学反応と、気持ちの相乗効果でどこまでいけるか。ただ“Dareka No Anoko”っていう曲はふたりで相談して、アルバムのレコーディングがあの震災と原発の事故を挟んでいたので、この期間に制作して、これは素通りできないなということで、この曲だけあとから1曲足した。いまを音に焼き付けよう、と。それでリリックを彼女に。





── 震災の話が出ましたが、ちなみに自分の中で音を作るということに対して震災以降変わった部分はありますか?

秋本それはないよね。もうそんなことで変わるぐらいだったら、やらないよ。いつ、なんどきじゃないけど、その音に向かい合ったときにパワーとかエネルギーを聴いてくれた人間に宿せなければ、やってる意味もないと思っているので。そこはそんな変えるもんじゃないでしょう(笑)





── ただ、こういう時期に作ったアルバムという証として、あの曲があるという。

秋本やはり根底には、あれだけのことがあって、なにができるんだろうというのはみんなあることだと思うけど、当然俺らミュージシャンだから、音を通してって。





── ところでアルバム・タイトル『SURVIVAL』というのは?

秋本これは、震災と原発の事故より前、セカンドを考えているときからぼんやりあった。“サヴァイヴァル”、生き抜くとかっていうのは、誰に教わったでもなく、レゲエを聴きながら、自分でもやりながらレゲエで育ってきて、そのなかでレゲエがいつも音として表現している普遍的なテーマとして“サヴァイヴァル“はずっとあるものなんで。さらに今回、日本がこういう状況になって意味が出てくる言葉だと思ってて。なにがあったって結局、生きていくしかねぇだろう、という。まぁその為の、なんていうんすかね、生き抜く、頼りになる音であれればいいなぁ、という意味で、“サヴァイヴァル”。





── アルバム全体の音ということで気になったのが、ファーストはある種の勢いがあり、今回はそこに音の深み、“ドープ”という言い方になるかもしれませんが、そういう深みが出てきた気がします。

秋本まぁ毎回、ファーストはやっぱファーストのピリピリした感じとかは絶対に狙ってできるもんじゃないし、今のこの感じも狙ってできるものじゃないし。毎回、完全にドキュメントだからさ。毎回、作品は全部一発録りだし。いっさい俺はレコーディングに関してはオーバー・ダブ、ベースに関してパンチインとかやり直したりとかしたことない。





── ある種の現場のドキュメントっていう。

秋本自分への戒めだよね。間違えても使うっていうのはさ。聴く度に嫌な気持ちになる。「テメェがヘタなんだからもっと練習しろよ」っていう。





── 日頃から鍛えろっていうストイックさですか。

秋本ジャマイカとか本当そうだからね、1回しかやらないし。うちのメンバーもそういう意味では、やり直しもきかないし。





── 是非聞いておきたいのですが先日急逝したライターの二木崇さんについて。曲のタイトルにも入ってますけど、秋本さんのよき理解者として、いままでのお付き合いがあったと思いますが、コメントというか、一言頂ければと思いまして。

秋本時間が経てば経つほど喪失感というか、会いたいな、って。まぁ、本当に……あの、尊敬できるライターだったし、本当に言葉に命掛けてるっていうか。本当に、それこそ命を削って書き遺してきた文章とか、ああいうものが永久に残っていくと思うんだよね。あの人の残した文章を読むたびに、力が欲しくなるというか。永遠にというか、ね。





── ヘヴィーマナーズはこのあたりで、次に訊きたいのがドラヘビ再結成についてですが、何故また七尾さんとやることになったんでしょうか。ひさびさに会ってやることになったのは、いつぐらいなんですか?

秋本2年ぐらい前かな。七尾くんが「もう一度だけ、信じてくれ、信じてもう1回だけやってほしい」って言われて。

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