豚の一生から作り出されたハーバートの話題作
コンセプチャルなハーバートの3連作、通称”Oneシリーズ”の最終章『One Pig』。“豚の一生から生まれる音をサンプリグして音楽を作り出す”という。過去にも、ハーバートは同様のポリティカルなテーマを持った作品を、送り出し続けている。まずはその音の生成過程からして一貫している。伝説となっているレディオ・ボーイ名義のライヴ――アンチ・グローバリゼーションを象徴するものとしてマッ○の袋や商品をつぶした音を、その場でサンプリングし構築していく——や、食卓に並ぶ様々な食材のサンプリングによって作られた2005年『Plat Du Jour』あたりと同質のものと言えるだろう。消費がなによりも優先される資本主義のシステムのなかで繰り返される一見クリーンな偽善を、そのコンセプトと音楽によって露悪している。そのコンセプト、制作過程をまとめた豚日記などによれば、今回のプロジェクトで最も重要な音は”屠殺“、それはすなわちつまり死の瞬間の音だったという(これは実際には不可能になったが)。生産性のみが追求され、まるで工場で作られる工業製品のように死んで行く家畜たちの存在とは、虐待や不自然な社会構造ではないのか問うている。(河村祐介)