UKブラック、そしてUKのDJカルチャー
旧植民地からの移民(とその末裔)を中心としたUKブラックが、最も早い時期に、ジャマイカやアメリカの借り物ではなくオリジナリティを持って生み出した傑作の1枚であり、そしてUKの80年代後半のDJカルチャーを象徴する1枚でもある。ジャジー・Bを中心にしたSOUL II SOULは元々同名のパーティであり、サウンドシステム/DJクルーであった。作品リリース以前の80年代の中ごろから、レイヴ・カルチャーにも影響を及ぼしたロンドンのウェアハウス・パーティのシーンに彼らの姿はあった。彼らを形作るのは60年代からカリブ移民の文化として存在していたサウンドシステム・カルチャーとレゲエ、そして当時勃興してきた、DJという視点で古いジャズやファンクを新たなダンス・ミュージックとして捉え直したレア・グルーヴ・ムーヴメントだ。そして、すぐ近くにはアシッド・ハウスの喧噪もあったに違いない。このエネルギーに満ちた当時のロンドンのアンダーグラウンドから生み出されたサウンドはグラウンド・ビートと呼ばれた。唇にはスウィートなソウルを、腰には強烈なグルーヴを。ヒップホップとレア・グルーヴ(ファンクとジャズ)、レゲエ、そしてハウスなどがミックスされたオリジナリティ溢れるサウンドはイギリスのみならず、アメリカでもポップ・ヒットした。UKブラックを象徴する新たなサウンド、そしてその後に、ドラムンベースやそれこそ現在のダブステップを生み出すロンドンのDJカルチャーの最初期の熱い息吹を感じることの作品でもある。11月27日にリキッドルームにひさびさの来日を果たす(公演詳細はコチラ)。(河村祐介)