yanokamiのラスト・アルバム
矢野顕子と今年の夏に急逝したレイ・ハラカミによるyanokamiのセカンド・アルバムであり、最終章。以前、yanokamiが誕生する前、2人の対談を取材したことがある。レイ・ハラカミが編曲とプロデュースを2曲手がけた矢野顕子『ホントのきもち』のリリース時(2004年)だ。あの矢野顕子がレイの才能に心底惚れ込んでいることが発言の端々から伝わってきて、それが印象深く残っている。荒井由美、オフコース、ストーンズ、坂本龍一&デヴィッド・シルヴィアンのカヴァーなどのカヴァーを収録。しかし、やはりこのアルバムで最も印象深いのは、前作も本作も含めて、これまでカヴァーの多かった同ユニットにはしては珍しい、矢野作による「Don’t Speculate」(レイと親交の深いU-zhaanと矢野のみによるヴァージョンも収録)からはじまることだろう。音楽は変わらず、ふたりにしか作り出せない光で輝いている。だけど、聴き終わったあとに、どうしてもその光が照らせない一筋の悲しい影が頭には写り込んでしまう、そう、もうこの次はないのだ。レイ・ハラカミによるバックトラックをzAkがインスト作品としてミックス・ダウンしたインスト・アルバム『遠くは近い -reprise-』も同時発売。