元ニュー・オーダーのベーシストが描くマッド・チェスターの発火点――〈ハシエンダ〉
今年は伝説のバンド、ザ・ストーン・ローゼズが復活! 海外では、その地元マンチェスターで行われる再結成ライヴの22万枚のチケットを一瞬にして売り切り、フジロックにも来る。これはセックス・ピストルズの再結成よりヤバいんです。
ロック・ファンなら誰もがこの伝説に参加しないとならない。でも、切符を持たずに伝説に参加しても、乗り遅れるだけじゃなかった、ノレないですよ。すいません死語を使っちゃって、もう25年も前のはなしなんですから。
ストーン・ローゼズがなぜ伝説だったのか、それが本当に目の前で起こったかのようにわかるのがこの本、『ハシエンダ』なのだ。著者は元ニュー・オーダーのベーシスト、ピーター・フック。なぜミュージシャンがこんな本を書いたかというと、マンチェスターで起こったフラワー・ムーヴメントやパンク革命より偉大な“マッドチェスター”の発火点だったクラブ〈ハシエンダ〉のオーナーのひとりがこの人だったのだ。
なぜミュージシャンがクラブのオーナーなのか、その疑問はこの本を読んでもらえばわかりますが、ひとことで言うとバンドで儲かったお金で、自分たちの地元の人たちが楽しめる場所を作ろうということだったのです。そう、NHKのドラマになりそうな凄くいい話なんですよ。でも、それが理想と現実とドラッグにまみれて、大変なことになっていくという悲劇。それをピーター・フックが笑い話として書いていきます。笑い所満載です。
でも、最後はそんな自分たちの秘密基地がなくなるという悲しさ、夢を持ったことのあるひとだったら、絶対泣きます。
いまのご時世で絶対読んでおくべき本です。なくなってからでは遅いのです。そうならない為にも、この本を読んで、理想と現実の間で戦うすべを学んでおきましょう。
すべての音楽ファンに捧げる生きて行く為のハンド・ブックです。