JINTANA & EMERALDS
包み込まれるような気持ちいい、生の声をつかった最高のチルアウトを目指したい——〈PPP〉が送り出すドゥーワップの新たな輝き
LUVRAW & BTBのセカンド・アルバムも好調な、横浜のメロウ&グルーヴ集団〈PAN PACIFIC PLAYA(PPP)〉より新たな星が瞬きはじめた。昨年末、〈PPP〉よりフリーのクリスマス・プレゼントとして突如届けられた“Last Christmas”のカヴァー。キュートな女性ヴォーカル&コーラスに、中空を舞い、柔らかく弧を描くスティール・ギターの音色――そのコンセプチュアルな意匠といい、その音といい、かの集団の中に突然時空を超えてロネッツが転生したかのような新感覚のドゥーワップ・ポップスを提示する。彼らの名前はJINTANA & EMERALDS。このたび7インチ「Honey / Runaway」をリリースし、〈PPP〉のラインナップに本格的な仲間入りをする。
JINTANA & EMERALDSは、これまで〈PPP〉のコンピなどに参加して来たギタリスト、JINATANAを中心に、〈PPP〉のサウンド・メイキングには無くてはならない存在であり、現在幅広く各所にひっぱりだこなギタリスト、KASHIF a.k.a STRINGSBURN、さらにはヒトミトイ、MAMI、カミカオルによる麗しき女性ヴォーカル&コーラス隊、そしてミックスにはご存知TRAKS BOYS、〈CRUE-L〉からのソロ、(((さらうんど)))としても活躍中のCRYSTALによるグループだ。
ここに、7インチ・シングルのリリースを記念して彼らのインタヴューをお届けしよう。中心人物のJINTANAとToi Emeralds(ヒトミトイ)にご登場願った。
おっと、忘れてはいけない!リリース・パーティが今週3月10日〈PAN PACIFIC PLAYA presents A.D.U.L.T. 〉が〈LIQUIDROOM〉にて行われる。こちらは〈PPP〉メンバーにムードマンやPUNPEE、LOVE AND HATESなど豪華メンバーでお届けする最高の一夜になるはずなのでお見逃し無く(くわしくはページ下部へ)。
── ということでまずは、中心人物のジンタナに迫りつつ、後半はジンタナ&エメラルズの全体像へという感じでいこうと思ってます。で、これまで〈PPP〉のコンピで1枚目から参加されてたりと、古くから関わっていますが元々〈PPP〉に、ジンタナさんが関わったきっかけから教えていただきたいんですが。
ジンタナPPP結成当初のスタメンというか。10年くらい前に恵比寿の〈みるく〉でその周辺の人とたちとよく遊んでた感じがあって。あそこで16連打(空手サイコ、脳、KES、OMOMMAのグループ)がやってたり、あとはクリスタルくんとかもやってたし、そういうシーンに僕もいて。
それから、ちょっと経ってから「〈PPP〉っていうのをやるんだけど」って脳くんに誘われて。PPPに加入してからは、ソロ活動と、あと僕と空手くんと脳くんとでXX(チョメチョメ)っていうピロー・ディスコ・ユニットをやってたりしてて、はじめはそういう感じですかね。あとはLUVRAW&BTBの曲で僕がギター弾いたこともあったし……っていう感じの関わりかな。
── 音楽のバックグラウンド的なところってどこなんですか? 〈PPP〉って本当、いろんなバックグラウンド持ったひとたちが集まってるじゃないですか?
ジンタナ僕は、この名前の通り、サンタナです(笑)。
── そこはやはり(笑)。
ジンタナああいう濃いのが好きで、あとはボアダムスとか、キャプテン・ビーフハートが好きで。
── どちらかというとロックですよね。
ジンタナ全体で言うとロックですね。サンタナみたいなものも好きで、一方でボアダムスのメンバーがそれぞれやってたみたいなコンセプチュアルなバンドも好きだったり。細かくいろんなバンドやってたじゃないですか? ああいうアイデアがバーンと立ってるバンドみたいなのが好きだったりするんですよ。
── このバンドもコンセプトがかなりしっかりあるバンドだと思うんですけど、前からこういうドゥーワップというかオールディーズ的なものをやってみたいっていうのがあったんですか?
ジンタナそうですね。50‘Sはすごい好きなんですけど……このバンドのスタイルは思いついてわりとすぐにはじめた感じですね。昔からあっためてたというよりも。いろいろ、こういうバンドをやってみたい、とかアイデア自体は考えてたりしたんですけど、あるときに「これだったらおもしろそう」ってはっきり感じて。
── ちなみにオールディーズのポップスみたいなものって、まぁ、それこそある意味でみんな好きなものではあると思うんですが、意識して好きになったきっかけはあるんですか?
ジンタナなんだろうなぁ……僕は函館出身なんですけど、函館市民ならみんな知ってるラッキー・ピエロっていうハンバーガー屋があって、そこはBGMでずっとオールディーズがかかってて。
── 古き良きアメリカみたいな雰囲気のハンバーガー屋さんっていう感じなんですか?
ジンタナそうそう。函館のポピュラーな店で(笑)。
── そういうノスタルジーも含めてっていうか。
ジンタナ脳くんに〈PPP〉に誘われたときも、「俺、横浜じゃないけど?」って言ったら「横浜も函館も港町じゃん」みたいな。「ペリーも寄ったじゃん」って(笑)。
── ペリーつながりって(笑)。
ジンタナ港町で、洋館とかがあって、昔からのハンバーガー屋があってみたいな雰囲気のところで繋がってるかなっていう。
── 港町ならでは文化とか雰囲気って共通のものがありますよね。
ジンタナそうですね。
── そろそろバンドの話をと思うんですが。このバンドでヒトミトイさんとかを巻き込むきっかけになったのは?
ジンタナヒトミトイちゃんは前から知ってて。それこそ北海道繋がりで。
── ラッキー・ピエロはやはり?
ヒトミトイいえいえ、知ってますけど私は札幌なんで(笑)。あるとき「こういうバンドをやろうと思って」ってジンタナから「メンバーを探してほしい」って電話が来て……でも「ちょっとまって! すごくおもしろそうだから私がやりたい」って(笑)。
── 本人ではなくメンバー募集を手伝ってくれと(笑)。
ヒトミトイそう、「誰か探して」って私を無視したお誘いだったから。私が立候補して、OKをもらって。それにジンタナ・マターで「マミちゃんって子がいる」って話になって、あとは「3人女性ヴォーカルが欲しいからもうひとりいるんだよね」って話で。でも最初はふたりでスタートして、夏の江ノ島の〈オッパーラ〉のパーティはふたりとジンタナ、カシーフの4人でやって「やっぱりもうひとり欲しいよね」っていうのがあって。私のまわりの友だちにもシンガーがいろいろいるので、「オールディーズのネオ・ドゥーワップみたいなの」ってちょっと話したらみんなおもしろがってやりたがってくれて。その3人目の座は争奪戦で、結局は私の仲良しのカミカオルちゃんっていうプロデュースなんかもしている子が入ることになって。私の遊びのつながりで、スタジオに連れてきてすぐにライヴみたいな成り行きで。
── 全員揃ったのは去年の夏以降ってことですね。
ジンタナそうですね。
── ドゥーワップとかブラック・ミュージックのヴォーカル・グループの定石でもある3人のヴォーカル&コーラスっていうのはコンセプトというのはずっとあったんですか?
ジンタナそれをやりたいなと。
── 音楽単体はもちろんですけど、このバンドってコンセプトから生まれるおもしろい音っていうのがあると思うんですよ。ジャケットやアーティスト写真、それこそクレジットの名前にみんな“エメラルズ”が付いてるっていう、これも黒人のコーラス・グループのよくある形ですが。こういうのはみんなでメンバーでアイディア出し合ってって感じですか?
ジンタナそうですね。サークル感あったよね。
ヒトミトイあるある。もはや懐かしい感あったよね。。
ジンタナそうですね。高校のときみたいな。
ヒトミトイチェッカーズができあがる瞬間みたいとか話してたよね。
── そろそろお揃いの衣装作っちゃうみたいな。
ヒトミトイそうそう(笑)
── ストレートな音楽だけっていうのじゃなくて、作り込んだコンセプトみたいなものって〈PPP〉の各アーティストに共通している要素だと思うんですけど、なかでもそれが如実に出ているユニットですよね。ちなみにはじめの音源が去年のフリー音源の“ラスト・クリスマス”だと思うんですけど、あのカヴァーをやった理由は?
ジンタナこのバンドって、コンセプトがはっきりしてるから、このバンドにやって欲しいアイディアを周りも言いたくなるみたいで。
ヒトミトイすごい楽しくなるんだよね(笑)。
ジンタナまわりからものっけたくなるみたいで。んで、〈オッパーラ〉でライヴした直後に、空手(ラテン・クォーター)くんから「ドゥーワップ・バンドって言ったら、クリスマス・ソングでしょ」って言われて。
── パーティで良い感じになっちゃって、泥酔してからんできて(笑)。
ジンタナそうそう、「俺にはこのバンドの先の先まで見えてる!(笑)」みたいな。なんかプロデューサーみたいな感じで言ってくれて。で「面白いね!」と思って。クリスマス・ソングだったらどうしようかなってなったときに、選曲はけっこう悩んだんだけど。ドゥーワップ・バンドのクリスマス・ソングっていったら“ホワイト・クリスマス”をドゥーワップ調にアレンジするっていう感じじゃないですか。
── いわゆるスタンダードとかっすね。
ジンタナあとは賛美歌的なものとか。そうじゃないちょっと外したものないかなって。
── “ラスト・クリスマス”って、どう考えてもドゥーワップになってない年代の歌ですしね。
ヒトミトイなんとなくイメージがみんなあるから、やりたいことがいっぱいあって、クリスマスのときも選曲含めて、いろいろアイディアは出たよね。
ジンタナそう、全体的に、みんなでワイワイ作ってる感じはあって、踊りとかも女子陣で考えて。
ヒトミトイそれも振り付け日を決めて女子が集まって練習するっていう。サークルっぽい(笑)。
ジンタナ学祭っぽいんだよね(笑)。クリスタル君の言い方では、「小学校のときの、男女の仲のいい班」っぽいって言ってた。
── バックの音はカシーフさんとジンタナさんがふたりで作られてるって感じですよね。
ジンタナ今回のシングルだと“Honey”を僕が基本的に作って、“Runaway”はカシーフくんが作ってというか。コーラスとかは、カシーフくんも考えてくるのをベースに、女子陣がうまいから、各自アレンジして。
── 音質やミックスも相当変わったものですよね。当時の感覚もありつつ、でもドラムなんかはある程度前に出てて。
ジンタナPPPっぽさっていうなかでのドゥーワップの解釈がおもしろいのかなと思って。LUVRAW&BTBもそうですけど、ザップみたいな昔の音楽を題材に、独自に解釈してオリジナルの音楽をつくっていくっていうか。それをどういう風に解釈するのかって考えたときに、ライヴする場所もクラブ中心だったりするし、そういうところも含めて、現代の音楽にしていっているつもりです。
── ミックスと言えば、クリスタルさんがミキサーとしてメンバーに加わってますが。
ジンタナ1曲目の“Honey”をミックスしてもらったときに、クリスタルくんしかいないと思って。今後メンバーとしてミックスはまかせて、トラックとか作るのも一緒にやりたいと思って。このバンドの音楽性ってメロディ×音質で、はじめて完成すると思うので、すごく重要な要素だなと思ってて。この前、クリスタルくんと話してたときに、子供のときに合唱団にいたって言ってたから、その才能もこのバンドで将来発揮して貰おうと思って(笑)。
ヒトミトイでも、クリスタルくんとジンタナとか、カシーフくんで、10年くらい前の時点でなにかやろうって言ってたんだよね。なかなか自分たちので忙しくて、ようやく実現したというのが、まさかのこのドゥーワップ・バンドで(笑)。
ジンタナそれぞれはなんとなく知り合いだったんだけど、その人間関係の真ん中にいたのが俺で、それで幹事というか。達郎みたいなのやりたいとかいろいろアイディアはあったんだけど、流れに流れてドゥーワップに(笑)。まぁ達郎も結構、オールディーズをベースにしてますけど。
ヒトミトイしかも、みんなすごい楽しんじゃってるからね。あと大事なのが作詞がデトロイト・ベイビーちゃんっていう子がやってるんだけど、作詞の内容がエメラルド・シティっていう架空の街での話なんですよ。このバンド、すごいコンセプチュアルだから、いろいろ思いついて、楽しんでやってくれてるみたいで。それぞれの曲は、バンドのメンバーの恋愛エピソードからなってて、だから作詞は取材からはじめて(笑)。それをエメラルド・シティっていうフィルターを通して膨らますっていう。
── そこまで作り込んでるですね。そのうち、エメラルド・シティ沿いのビーチの名前とか、地名とかも出てきそうですね(笑)。
ヒトミトイ地図を作りたいよねっていう話はしてるよね。
ジンタナそうそう。
── もしアルバム出したら、インナー・スリーヴに載ってそうですね(笑)。あとさっき出た音質っていう話で、いわゆるストレートにポップな音なのに、どこかサイケデリックな感覚ありますよね。
ジンタナウォール・オブ・サウンド(注)のPPP解釈ってか、このバンドとしての解釈は、アシッドだったりチルアウトかなと。包み込まれるような気持ちいい、生の声をつかった最高のチルアウトを目指したいです。
── それにしても、ジャケットもすごいですよね。強烈です。これもみなさんでアイディアを出して。
ジンタナそうそう、昔のジャケットとかもってきて「このニコやかさだよね」って。
ヒトミトイ「肩に顔つけちゃうリア充!」とか言いながら(笑)。
── このクリスタルさんの写真の切り貼りっぷりの適当感も、なんか雰囲気ですよね。
ジンタナデザイナーのファンタジスタ歌麻呂さんが、当時の“雑”感をうまく出してくれました。
── いまのお話を聞いてる感じでも、すぐに次のもアイディアがポンポン出てきそうですよね。
ジンタナたしかにね。
ヒトミトイ尽きない感はあるよね。
── そういえばなんでエメラルドだったんですか?
ジンタナなんか、昔のドゥーワップ・バンドの名前は、だいたい宝石か、車か、鳥から名前を付けてることが多いらしくて(笑)。スカイライナーズとか。それで脳くんに「イイ宝石ない?」って訊いたら、「エメラルドでしょ」って返ってきて。エメラルドって魔術的とか呪術的というかそういうときに使う宝石らしくって。そこもなんかアシッドで良いよね。
── さて、最後に3月10日、都内でははじめてのライヴですがどのような編成で?
ジンタナヴォーカルが前3人いて、僕がスチール・ギター、カシーフくんがギターやってクリスタルくんが音出しして、効果音とかも出してくれて。あと曲はカヴァーはなしで、オリジナルとインストっぽいのがあって。
── あとは見所は猛練習してる踊りと。
ヒトミトイそうそう、振り付けですね。お楽しみに(笑)。
JINTANA&EMERALDS”RUNAWAY”(7inch release short ver.)
こちらのPPPのページでダイジェストの視聴、7インチ取り扱い店舗など情報を随時お知らせ中!
→JINTANA & EMERALDS ~HONEY / RUNAWAY~ (PPPEP-008)
JINTANA & EMERALDS「Honey / Runaway」リリース・パーティ!
2012.03.10 SAT
PAN PACIFIC PLAYA presents A.D.U.L.T.
-JINTANA & EMERALDS「HONEY / RUNAWAY」Release Party-
@LIQUIDROOM
Live:JINTANA & EMERALDS、LOVE AND HATES、LUVRAW & BTB
DJ:CRYSTAL(TRAKS BOYS)、GROSS DRESSER(MAGNETIC LUV / OPPA-LA)、LATIN QUARTER、MOODMAN(house of liquid)、PUNPEE(PSG)
Food:虎子食堂
and Special Free Market open!!!
詳しい公演情報はコチラに