FEATURE

REVIEW

SSSS

『SSSS』

VCMG

[label: MUTE/2012]

Amazon

ディペッシュ・モードの伝説のオリジナル・メンバーたちによる新たなテクノ・プロジェクト

twitter facebook

文:久保憲司

 ザ・ストーン・ローゼズの再結成で世の中は大変な事ですが、僕にとってはザ・ストーン・ローゼズの再結成よりも、デペッシュ・モードのオリジナル・メンバーだったヴィンス・クラークが同じくデペッシュ・モードのマーティン・ゴアと一緒にアルバムを作ったというほうが「えっ————」と叫ぶくらいうれしいことです。
 彼らが揃うのはデペッシュ・モードの傑作デビュー盤『スピーク&スペル』以来です。81年に作られた『スピーク&スペル』はエレクトリック・ミュージックの傑作です。それを作って、ヴィンス・クラークはあっさりとデペッシュ・モードを辞めてしまったのです。なにがあったのか、全然分からないのですが、それはそれは悲しいできごとでした。
 天才がいなくなったデペッシュ・モードは思春期の少女たちの悩みを癒してくれるバンドとして、アメリカなんかではU2と同じくらいビッグなバンドになったんですけど、デビュー当時のあのデペッシュは一瞬にしてなくなってしまったのです。
 天才がいなくなって、天才の代わりとして死ぬ様な思いをしながらデペッシュ・モードを引っ張ってきたのが、マーティン・ゴアです。
 そんなふたりが、また一緒にやるというのがいいじゃないですか、しかも気楽にシンセやドラム・マシーンをいじりながら、楽しくダンス・ミュージックを作っているのが、素晴らしい。
 若い人たちに彼らのエレクトリックなダンス・ミュージックがどう感じられるかわからないですけど、けっこういいアイデアもあるんじゃないですか、聞いてみてください。
 でも、やっぱこのアルバムを聴いて思って欲しいことは彼らへのリスペクトですね。このふたりがいなかったら、いまのダンス・ミュージックはなかったのですよ。ハッピー・マンデーズの「Wrote for luck」のヴィンス・クラークのリミックスがフロアーでヒットし、マッドチェスターの火がついたといっても過言じゃないんです。そして、デペッシュ・モードのヨーロッパの退廃の匂いをエレクトリックとインダストリアルでプンプンさせだしたマーティン・ゴアのプロダクションにデトロイト・テクノのデリック・メイもジェフ・ミルズもやられていたのです。
 ヴィンス・クラーク51歳、マーティン・ゴア50歳、オジイちゃんコンビかもしれないけど、まだこんなに楽しくエレクトリック・ミュージックを作っているんです。そこにもリスペクト。

RECENT REVIEW

REVIEW TOP

RECENT REVIEW

REVIEW TOP