オアシス、プライマル、マイブラなどを輩出したUKインディー・レーベルの巨星
ピーター・フック『ハシエンダ』、トニー・ウィルソンの『24アワー・パーティー・ピープル』と紹介させてもらってきましたが、もう1冊、スタイル・カウンシルの参謀だったカプチーノ・キッドことパオロ・ヒューイットの『クリエイション・レコーズ物語』。この3冊がいまのイギリスのミュージック・ビジネスを語るうえでとっても重要だと思います。
この本は出だしからびっくりこいた。アラン・マッギーがなぜ音楽業界を辞めようと考えているかということが語られているんですが、なんだと思います? オアシスのコンサートでとある人物がアランに「なんで私の席はあいつより悪いのよ」と文句を言ったことがきっかけですよ。これで、90年代のイギリスの音楽シーンを築いた王国を「全部捨てたる」と思うところがパンクです。「お前らみたいな奴らのために音楽を供給してきたんじゃない」ってわかるけど。
モータウンを作ったベリー・ゴーディの伝記本『モータウン、わが愛と夢』の出だしは、自分の築いてきた王国が買収される場面、その値段がいくらであるのか、それが自分の価値であるみたいな、緊迫した出だしではじまっていたのに、アラン・マッギーの物語は先に書いた通りである。
時代が変わったというか、パンクなのである。
ヒッピーからアメリカのロック王国を作ったビル・グレアムの伝記『ビル・グレアム ロックを創った男』の出だしは、ビルの死、ライヴ・エイド2の会場を探しに行くヘリコプター事故からでした。
『ローリング・ストーン風雲録? アメリカ最高のロック・マガジンと若者文化の軌跡』によるとヒッピーから『ローリング・ストーン』誌を作り、ロックのメディアをすべて変えたヤン・ウィナーは突然ゲイになるし。これは関係ないか。
でも、僕が思うのは既成概念を変えようとしたヒッピーのひとたちは自分の王国を作り、エスタブリッシュとしてそのシーンに君臨しようとした。それが彼らの理想から遠退こうとも。
アメリカとイギリスという違いもあるだろう。しかし、『モータウン、わが愛と夢』『ビル・グレアム ロックを創った男』『ローリング・ストーン風雲録? アメリカ最高のロック・マガジンと若者文化の軌跡 』と『ハシエンダ』、『24アワー・パーティー・ピープル』、『クリエイション・レコーズ物語』を読み比べて欲しい。そこには明確な違いがある。