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KILIMANJARO

『KILIMANJARO』

THE TEARDROP EXPLODES

[label: MERCURY/1980]

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ジュリアン・コープ率いるサイケなポスト・パンク・バンド

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文:久保憲司

 マンチェスターのポスト・パンクのバンドたちはインダストリアルでファンキーな音楽を作り出しましたが、リヴァプールのポスト・パンクのバンドたちはなぜかサイケデリックとパンクを融合させていきます。
 ドラッグの好きなアホが多かったという理由なのか、なんなのか知りませんが、リヴァプールの世界一のポップ・バンドだったザ・ビートルズが世界一のサイケデリック・バンドになったということは、やっぱり世界一のドラッグ好きがいるエリアなのかもしれません。
 何百年前の書類だったか忘れたんですけど「イギリス中の犯罪者、精神異常者をリヴァプールに送る事に成功した」という政府の文書が出てきたそうです。
 ありえない話ですが、宗教的に揉めている人はアメリカに送り、犯罪者は帰ってきにくいオーストラリアに送ったなんて小話をするイギリス人ですから、本当の話なのかもしれません。獄門島かい。
 本当だったら、むちゃくちゃな話ですが、リヴァプールが根性あったり、イギリスのコメディアンはリヴァプール出身の人が多いのはこういう歴史と関係しているのかなと思って、ちょっと羨ましいです。大阪もそうなのかと思うと不安になりますが。
 ザ・ビートルズの記者会見なんて、全部ボケ、ツッコミをやってますから、凄いんですけど。
 こういうアホな人たちが多いから、ドラッグに走るんでしょうというのは、偏見なんですが、とにかく、リヴァプールのポスト・パンク・バンドはサイケなバンドが多いです。
 でも、全部いいバンドなんです。その中で一番なのはジュリアン・コープ率いるテアドロップ・エクスプローズです。名前からして凄いですよね。爆発した涙って。彼らのデビュー・アルバム『キリマンジャロ』はジュリアン・コープのサイケで美しいメロディをソウルフルなビートとファンキーな管楽器でアレンジしたサイケを越えたポップ・アルバムの傑作です。このアルバムは本当に凄いんです。
 このまま凄いバンドになるのかなと思っていたら、2枚目『ワイルダー』はバンドとジュリアン・コープが揉めたのかなんなのか分かりませんが、ジュリアンのメロディとバンドのアレンジが一切噛み合わない中途半端なアルバムとなってティアドロップ・エクスプローズの歴史は終わってしまいました。“タイニー・チルドレン”のようなパンク、ニュー・ウェイブ史に残る名バラードもあるんですが、本当に残念です。
 その頃の僕たちは自分がティアドロップ・エクスプローズのファンだということを誇示するために『キリマンジャロ』のジャケットに使われたシマウマの縞模様のバッジをつけていました。アルバムとほとんど関係ないようなアフリカの草原にシマウマのジャケットって、サイケでしょう。
 ソロになっても売れるのがいやなのか、ジャケットで亀の甲羅をきて写っていたりします。やっぱリバプールの人は頭がおかしいんでしょうか。でも、この亀のアルバム『フライド』は世界で一番美しいメロディをもったサイケ・アルバムかもしれません。
 こんなんじゃいけないと『セイント・ジュリアン』で売れようと思えば、すぐにビッグ・ヒットも作れるんですけど、またすぐに辞めてしまいます。
 いまはイギリスの巨石文化の大家でもあります。このへんの話はもっと頭がおかしくなるので、このへんで。
 そうそう、日本ロック、クラウト・ロックの大家でもあります。この辺については近々書きたいです。

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